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香納諒一という人が書こうとしているのは、いつも常に人間であるように思う。初期作品の登場人物はストーリーは荒っぽいながらも、舞台設定と男対男の駆け引きの中で忘れ難く魅力的な人物を作り出すところがこの作家の最大の魅力であった。
最近はというと、少しばかりキャラクターたちから個性という部分が少し色落ちしているように思われる。本書は『贄の夜会』のシリーズということで、またサイコ・スリラーかなと思ったので、その意味では当てが外れた。刑事のシリーズというと二作目三作目は必ずしも一作目を引きずらないというものが多いように思われるが、この作者のKSPシリーズなどは、完全にキャラも分署も街も個性に溢れた魅力的なシリーズであるから、人情系はどちら、サイコ系はどちらと住み分けしてゆくのかな、と勝手な予想が先走った。
その意味ではこちらの作品はシリーズでなくてもいいのかな、というほど警察側の個性が目立たない。その分、事件の殺伐さの中に世界が囚われてしまったイメージで、ぼくはこの一冊を読み続けることになった。
ネットカフェで寝泊りする孤独な少女が、見知らぬ男の部屋で孤独に死んだ。彼女は消えた弟の生存を信じて行方を追っていたらしい節がある。シンプルなメインストーリーはそれだけである。しかしそこにいくつもの雑音のような事件が同時に生まれ、事件をわかりにくくする。まるで刑事たちを牽制するかのように、違った種類の悪党たちが、彼らを血も涙も無き犯罪で呼び寄せる。まるで、ブラックホールのような吸引力を持った欲望と絶望にまみれてゆく都市居住者たちの、業に彩られたモザイク模様みたいに。
ネットカフェ難民を救おうというNPO法人、欲にまみれた企業家たち、金の匂いがすれば暴力を厭わない悪鬼のような若者たち、金の匂いを追い求めるプロフェッショナルたち。そんな呪いのトーテムポールのような欲望の森を、一人の少女が歩いてゆく。その眼には消えた弟の後ろ姿が。
主軸の物語を、牽制する物語が消してしまっているあたりがどうももったいない。もしかしたら一刑事と少女をもっと強く結びつける運命の糸の描写で一貫させたほうが、悲しみはより悲しく、世界にぽっかり空いた穴の大きさもどす黒さも明確に心に伝わってたかもしれない。最近テクニックで書くようになったベテラン作家には、敢えて無骨なキャラクター造形への回帰を望みたい。そこがこの作家のキモである、と信じているぼくとしては、多分ずっと永遠に。
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全体的には悲しい話。そんな結末だったとは。
辻原はボランティアに勤しむくらいだから
優しいんだろうな。悪い人ではないんだけれど、
そんないい人さがウソっぽく胡散臭く感じられて・・・
そんな風に見るなんて、私もひねくれてるなぁ。
岩崎母、息子を愛してるというより自分の
思うとおりにさせたいという感じ。
いつまでも子供扱いなんだね。
子離れが出来ていない母って、何だか痛々しいなぁ。
私も気を付けよっと。
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16歳の少女はなぜ他人の家で死んだのか?。人と人との関係が希薄になった無縁社会がテーマの骨太ミステリは読み応えたっぷり。ただ、事件の真相に迫る刑事が、理詰めではなくひらめきに頼っている点には違和感を覚えました。
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16歳の少女が男の部屋で殺されていた。男はそも娘が誰だか知らないという。彼女と殺人者探しがはじまる。
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「無縁社会」をテーマにした推理ものです。
それなりに面白くはあるけれど、最初の段階で、大方読めてしまう。
それでもどこに着地点を持って来るのかを楽しみにして読み進めたけれど、まあ、可もなく不可もなし、って感じでした。ザンネン。
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無縁社会という最近の言葉。旅人というずっと前からある言葉をタイトルにかけ合せた。前半の読み応えに比べ、後半の展開がもたついたので☆は3つ。
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「贄の夜会」の大河内刑事が再登場。とは言うものの、ほとんど前作に触れることはなく、充分、単独で読める。むしろ、続編として期待して読むと肩透かしを喰らうかも。
今作は前作のようなサイコ感やハードボイルド感はほとんどないが、ネットカフェ難民の実態を絡め、骨太な社会派ミステリとして興味深く読めた。事件の初端は至って地味だけれど、スルスルとページを捲らせる文章力はさすが。最後の二転三転も、本当の真相を知りたくて、捲る手が止まらなかった。ハードボイルド感たっぷりの警察小説も良いけど、こういうのも好き。
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【家族や地域の絆を失った無縁社会に警鐘を鳴らす問題作】養護施設から逃げ出した十六歳の少女・舞子は、なぜ死なねばならなかったのか? 若者たちが抱える孤独と痛みを描く警察小説の白眉。
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16歳の少女はなぜ死んだのか?
家族や地域の絆を失った無縁社会で若者たちが抱える孤独と痛みを描く警察小説
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3月-1。3.5点。
贄の夜会の刑事、再び。ていうかシリーズだったのか。
メンバーが同じだけで、関連は無い。
ネットカフェ難民の少女が、ある男の部屋で変死。
男は部屋を貸しただけという。
寂しい話。最後に話が二転三転、結構面白い。
重いテーマの話。
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捜査一課シリーズ2作目。
16歳の少女が遺体で発見された。
彼女が発見されたのは、ネットで知り合ったさほど親しくもない男の部屋だった。
部屋主は少女から逃げるように部屋を出て、着替えを取りに戻る以外は部屋に近づいてもいなかったという。
大河内刑事たちは、施設を逃げ出してからの少女の足取りを追う。
「ネット難民」。
この言葉を初めて聞いたのはどれくらい前だろう。
帰る場所もなく、頼れる人もいない。
億をこえる人間が日本には住んでいるのに、舞子はひとりぼっちだった。
だからこそ、細い糸のようにか細く頼りないものにでもすがりつこうとした。
弱さと強さ。
孤独な魂は強く生きようとしていた・・・。
ただ、寄る辺ない少女は優しくあたたかいものを身近に感じていたかった。
人は誰でも自分が大切だ。
傷つけられまいと、自分自身を守ろうとする。
やがて自分よりも大切な存在が出来ることもある。
そんな存在に出会えることはきっと幸せなことなのだろう。
どこまでいっても、自分だけが大事で、自分を傷つける者は許せなくて、悪いのはいつも自分ではない他の誰か。
自分の思い通りにならなければ満足しない。
周囲のすべてが、自分が思い描くように動かなければ気がすまない。
なんて可哀想な人なんだろう。
本当の幸せに気づくこともなく、一生を終えていくなんて哀れだ。
たった16年で終わってしまった少女の人生。
彼女は何のために生まれ、何のために生きてきたのか。
唯一の光だった者は無情にも命を落とし、少女自身も理不尽に命を奪われていた。
痛いほどに哀しい人たちが織りなす物語。
社会に切り捨てられた人たちの物語である。
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死後4〜5日経過した少女の死体がアパートの一室から発見されます
死体は後頭部に出血がありコートを着たまま倒れていた事から
部屋まで逃げてきてこと切れてしまったと考えられる
大家への聞き込みで少女はこの部屋の住人ではない事が分かる。
被害者の財布には7万円の現金、ネットカフェの会員証が5枚に
ラブホ・ファッションホテルのサービスカードが何枚も
そして、NPO団体の「ネットカフェで暮らす人々を支援する会」の
辻原の名刺と、身元を確認できるものを所持していなかった。
警視庁捜査一課強行班七係のデカ長の大河内とベテラン刑事の
渡辺はこの部屋の住人、萩本への聞き込みに向かう
萩本はSNSで少女と知り合い3週間も居座られていた
その間、萩本はネットカフェで寝泊まりをしていたという
時を同じく少女の身元が判明する。
片桐舞子、16歳。静岡の養護施設を逃げ出し
1年近く行方知れずになっていた。
養護施設の責任者、須賀典子から舞子が養護施設に来た理由や
逃げ出したと思われる理由が語られる
舞子は母親の弟、叔父に当たる男、藤堂を探すために
上京したと思われるが、その藤堂も不信な行動をとって
行方不明になっていた。藤堂の行方不明と舞子の死は
何かしら繋がりがあるとみて捜査は動いていきます。
藤堂の行方を追えば、舞子が静岡に居た頃に
付き合っていた男性とその仲間達が絡んでき
事件は複雑な模様となっていく。
長年の刑事生活で培われた信念と感が
大河内と相棒の渡辺の間でブレる事がなく確実に
真相に近づいている感じがひしひしと伝わってきます。
NPO法人の辻原との間で交わされていた会話で
舞子が妊娠していた事も分かってきます。
16歳の彼女がお腹の子をどうしようとしていたのか
免許も保険証もなく銀行口座を持たない16歳の少女が
ネットカフェや男性の家を泊まり歩く生活は
友達の家を泊まり歩く感覚に近いのだろうか
若者の貧困問題、ネットカフェ難民と
負のスパイラルに陥った人達がいきつく先と
社会の闇を垣間見る作品になっています
自分が地域とどれだけ関わっているか?と
聞かれれば、全く関わっていないしお隣さんとさえ
顔を合わさない生活をしている
私も無縁社会の住人なんだな〜。
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捜査一課強行班七係 小林班
最後まで一気に読めた。
刑事が必死に事件を追う様子がリアルで読み応えあり。