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毎年、楽しみにしている直木賞と芥川賞。直木賞を受賞した作家達によるエッセイだが受賞をした背景にはいろいろあるのだと知る。直木賞を受賞時に読んだ作品の作家達のエッセイを読むといろいろな事を思い出す。結構、奥の深い一冊である。
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これは良かった! さほど期待もせず何の気なしに読み出したのだが、最初の山本文緒さんでガツンときて、重松清さん、藤田宜永さんと読み進めるうちにどんどん胸が熱くなり、もう夢中で読んでしまった。
考えてみれば、なんだかんだ言っても直木賞である。目標とするにせよ、そうでないにせよ、小説家にとって大きな意味を持つ賞であり、その受賞後に注目を浴びる中発表されるエッセイなわけだから、力や心がこもっていないはずがない。旬の勢いや長年の苦労、晴れがましい高揚や、しみじみした感慨、照れ、人それぞれにもういろんなものが詰まっていて、読みごたえたっぷりだ。
正直に言って、さして面白くないのもあるのだけれど、心うたれて何回も読み返したものがいくつもある。重松さんの「早稲田文学」をめぐる回想は、青春小説を読んだような味わいがある。奥田英朗さんは、ちょっとひねくれたポーズがほほえましく、最後の感謝の言葉が効いている(「(ここは仏頂面で)」と括弧書きがついているのだ)。男性作家では他に、藤田宜永さんや京極夏彦さん(エッセイではなくインタビューだったが)、山本一力さんなどが心に残った。
しかし今回胸に迫る思いで読んだのは、なんといっても女性作家のものだった。山本文緒さんは渾身の一篇。半生の歩みを振り返り、思いのこもった一文で忘れられない。松井今朝子さんの歌舞伎を中心とする演劇との関わりを初めて知り、なるほどと腑に落ちた。封建的なものへの抵抗が常に芯にあるという言葉にも納得。
山本さんは子供の頃にあまり本を読まなかったそうだが、それは例外的で、当たり前だろうがずっと本の虫だったという人が多い。私はこの、本を愛し、本があったから生きてこられたと語る人たちの言葉を、泣きたくなる思いで読んだ。だって、それはまるで自分のことのように思えたから。
桜庭一樹さん、三浦しをんさん、木内昇さん、辻村深月さん。こういう方たちをつかまえて「自分と同じ」なぞと言うことの不遜はひとまず棚に上げよう。私にとっても、本を読むことは人生と切り離せないものであり、本の向こうの世界があったから現実を生きてこられたと思う。才能と努力によって、本を生み出す側となったこの方たちも、心の中にはずっと、夢中で本にかじりついていた子供がいるのだ。その子供のことなら私も知っている。
それにしても、短い文章でもそれぞれの個性というのはくっきりと出るものだなあと思う。その人ならではの語り口がある。私は三浦しをんさんのエッセイが大好きなのだが、ここでも畏まらずにいつもの調子で書かれていて、たいそう面白かった。珍しいことに執筆方法について明かされていて、これはしをんちゃんファンは必読では。
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平成12年、第124回下半期〜平成25年、第150回下半期までの直木賞受賞者による、一人を除いて、当時の受賞エッセイが一挙に掲載されている、素晴らしい一冊です。うち一人である奥田さんは当時のエッセイを恥じ(読みたかった!!)、掲載不可とし10年後である現在改めて執筆したものでした。
好きな作家さんを始め、ほとんどの直木賞受賞作品を読んでいたので、かなり楽しんで読ませてもらいました。
自伝に近しい、エッセイであることから、作家さんの内面にものすごく近づけるような、けれどもやはりそこは着飾っていたり、逆に卑下したりしてたりもするわけで。
読んでいてとくに熱いものがこみあげたのは、やはり大好きな江國香織さんの、やはり江國ワールド満載なインタビュー。角田光代さんのタイ旅行での危機についての絡めた感じ、好き。東野圭吾さんの率直なエッセイ。森絵都さんの半分死んでいて半分生きている父へ捧げた言葉たち。井上荒野さんの書けなかった日々からのやはりお父様のこと。そして戦後最年少受賞の朝井リョウさん、年齢が近いからかすごく共感した。
どの作家さんも、もらって嬉しいというのがすごく伝わった。やはり直木賞は特別、それはきっと今後も続くと信じています。
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直木賞作家のエッセイ、インタビュー。とにかく濃い!
当然ながらみーんな本が大好き。本好きが高じた結果の作家という生業。キャー。
特に好きなのは、辻村さんの若かりし日の体験。綾辻先生かと想像しながら読んでキュンキュンして、実は京極先生でまたキュンキュンし直す。直木賞受賞で綾辻先生からのおめでとうメール、京極先生が「おめでとう」と握手でまた更にキュンキュン。キャー。
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2001~2013の間に直木賞を取った作家のエッセイ集。
年月が年月だけに、かなり分厚いので読み応えが。
何故小説を書き始めたのか、きっかけは何か。
どんな人にもドラマがあるけれど、小説家にまるまでを
ダイジェストに本人達が送ってくれている状態。
これから、今から、いまも小説家を目指している人には
向かう道筋を想像しやすいのではないでしょうか?
読んでいて、山本一力さんの受賞後の人々の温かさに
ぐっと詰まってしまいました。
こんな風に囲まれて、こんな風に囲む人生を歩みたいです。
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ここに収録されているエッセイはどなたのも、著者の本気度がたぶんMAXに近いものが多くて、一気に読むには息切れするほどの濃密さでした。
私の当初のお目当ては山本文緒「愛憎のイナズマ」と、終盤に入っている朝井リョウ「ルーレットの目」でしたが、中盤に入っていた森絵都「父に捧ぐ」と松井今朝子「「受付の人」が引っ込んでから」のところで、文章を書く人が本気で自分語りをしたらこんなすごいことになるんだと、比喩じゃなく鳥肌がたちました。
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直木賞作家の伝記的エッセイ集。
すごいの一言。
人ってこんなにも違うんだ。そんな当たり前なことがこんなにも面白い。
好きな作家さんも一度も作品を読んだことのない作家さんも関係なく、どの文章も興味深かった。
全く違う人が違うモチベーションで違うものを目指して紡いでいく物語。
同じになるわけがない。
改めて言うのも馬鹿かと思うような当たり前なことだけど、もう不思議で仕方ない。
なんて面白いんだろう。人の心って。人間て。
小説もエッセイも好き嫌いはあるけれど、それは良し悪しとは違う。
良いから好きで良くないから好きじゃないわけではない。
今の私が求めているものかどうか、今の私に受け入れられるものかどうかということなんだろうと思う。
それはただ単に「今」だけの話なんだ。きっと。
簡単に合う合わないと決めてしまうことがどんなにつまらないことか。
だって物語を読むことはその向こうにいる人と出会うことで、その行為を通して自分を知ることでもあり。
私はいつも誰かを通して自分のことを知ってきたんだなぁ。
他の人に憧れることでなんとか生きてこれたんだなぁ。
そしてその機会を最も多く与えてくれたのが物語だったんだなぁ。
自分とは違うことを考えて生きている人がいることを喜びたい。
違う世界を見せてくれる人がいることに感謝したい。
混沌を愛したい。その中で生きることが苦しくても。
そう思った。
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他人と親しくはなりたいが
どうすればその仲は深まってゆくのだろう。
毎日顔を合わす、毎日言葉を交わす、
スキンシップもとって、冗談も言い合う…
が、
どれほど言葉を交し合ったとしても
無難、を選んで差出し合ってたんじゃ
永遠に分かり合えるワケがない。
>こんな生き方をし、
こんな人(本)に影響され、
こんな風にものを考えるようになっていったんだ。
それを、表現したくなったんだ。
そうなんだ。
いいテーマだなぁ、と思った。
直木賞を受賞しての心情、エッセイ。
こんな大きな賞を頂いた作家の方々には、
これまでどんな軌跡があったのか。
いろんな人がいて、
いろんな人生を送ってきたんだなぁ。
楽しく語ってくれた人も、しみじみ語ってくれた人も、
見知らぬ人も見知った人も、たくさんいらっしゃったが、
皆の根底に共通する
どうしても表現したかった、書かずにはいられなかった、
(そして本が好き。)
その熱い気持ちがじんわり心地よく浸透し、
受け取るだけの側なので、
わかり合ったワケではないが、
彼らの事を良く知れた気がして、なんかすごく嬉しかった。
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【二十一世紀直木賞の歩みをしめす一冊】ほろりあり、笑いあり、しみじみと沁みてくるものあり――二十一世紀の直木賞受賞作家は、キャリアの結節点で何を書き、語ったのか。
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自分の好きな作家だけに思い入れが強いのか、井上荒野さんと山本文緒さんのエッセイが染みたなぁ。
ああ、良かったね苦労した甲斐があったね。
ファンとして何よりだよなんて思いつつ読む。
逆に今更直木賞ってどうなのよって作家さんもちらほら。
例えば江國香織さんなんて受賞した時は既に恋愛小説の名手として絶大な人気を誇っていた。
北村薫さんなんて大御所の域に達してると思ってた。
まだ取ってなかったのかと言うのが正直なところ。
そんな人のインタビューなりエッセイなりはやはり余裕が感じられるな、気のせいでなければ。
好印象だったのは朝井リョウと辻村深月のエッセイ。
何と言ってもフレッシュ!
作家になりたいというその思いがよーく伝わってきて。
個人的にはキャリアを積んできた作家よりもある程度の所で直木賞取らせてやる方が良いよなと思う。
この二人は若いけれどキャリア的にはベストかなとも。
勝手な事をつらつらと言ってしまったけれど、やはり直木賞。
それぞれの作家の感激が伝わってきて、ジーンとなる。
素敵な作品をいつもいつも届けてくれてありがとう、そんな気持ち。
この本の企画自体あざとい気がしなくもないけれど、それでも許せちゃうかな。
これからも直木賞、楽しみにしてます。
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ここ10年ほどの受賞者による、20枚ほどの受賞エッセイをまとめたもの(一部インタビュー)。誰もが舞い上がったような感じで、おもしろいものもあれば「こいつにはやらない方がいいんじゃないか」と思うものもある。木内昇という女性作家のものがおもしろかった。
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涙あり、笑いあり、しみじみと沁みてくるものあり。21世紀に誕生した直木賞作家たちが、幼少期の思い出、読書体験、創作にかける情熱などを明かした受賞エッセイ、およびインタビューを収録。『オール讀物』掲載を加筆修正。
直木賞作家の伝記的エッセイ集。
そんなわけで濃いのなんの。
面白いけど読み疲れた。
時間もかかったし・・・。
再読…してしまった。どうりで読んだような文章ばっかりだった。
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そういえばこういう本もあったな、と年末年始の読書タイムにと図書館で借りた一冊。
作家それぞれの文章の癖や味わいがあって面白かったですね。
生い立ちや作家を志したきっかけなどを書いて欲しいというお題のせいか、やはりそういう内容がメインでしたが面白いのは、はっきりと作家になりたいと思って目指してきた人はわりと幼い頃から自覚を持っていたのだなということ、違うものを目指していて作家になるつもりではなかったのにうっかり?なってしまった人も数人。
そして幼い頃からものすごく本を読み込んで育ちあがってきた人と全然本を読む生活とは縁のなかった人とくっきり分かれています。
この一冊を読んで思うのは、作家になるというのはもちろん才能も素養も必要だと思うのですが、何となく運めいたものというか人との出逢いとか関わり方とか仕事の仕方とか社会との向き合い方(自分のスタンス)みたいなものが大事なのではないか、ということです。
物書きの人って、昔よく言われていたイメージでは人嫌いで社会と関わるのが苦手でおうち大好きで偏屈で頑固で…というのが多かったように思いますが、そういうイメージとはむしろ真逆の人たちなのではないかと、本書を読むと思われました。
作家になりたい人、というか物書きしたい人には「こんな風に自分は作家になった」と教えてもらえる面白い一冊なのではないかな、と感じました。
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これはお買い得でした(^^)! 徹底的な ウソ偽りのない作家の本音集なのです! ここまで自分を晒すとは・・・
文春の編集者は裏で作家さんを脅していませんか?(^^
これから本を読むとき「フムフムあの人がこういうのを書くのね」とか
この本を参考にして 次に読む本選ぶ・・・という手とかあり(^^;
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第124回直木賞受賞者 山本文緒さんから
第150回の朝井まかてさんと姫野カオルコさんまで。
総勢36名の直木賞受賞作家たちの
現在に至るまでの人生を振り返ったエッセイ集です。
内容紹介では受賞直後に「オール讀物」に掲載された
ロングエッセイやインタビューとなっています。
36作のエッセイやインタビュー記事は
正直なところ、小説を読むよりも面白かったなあ。
作家たちが自分の生い立ちを書かれているので、
興味深く読めます。
こんな子供時代、青春を送られたから
あの小説が書けるんだなあ、とか。
作品は読んでないけれど、
作家さんの意外な一面を知ることができたり・・・。
特に興味深かったのは、山本一力さん。
自分の母親の面影を
受賞作「あかね空」に書かれたそうで、
これはまだ未読なので、ぜひ読んでみたいと思いました。
そして、天童荒太さん。
あの過激ともいえるハードな作風は
彼の少年時代のリアルな体験が活きているのね、と納得しました。
万華鏡に読む印象が変わる短編集のようで、
たっぷりと読み応えある内容でした。
何回でも読んで
収録されている作家さんたちを身近に感じたくなる一冊です。