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こわい話はこちらで最後になります。最後に9つとびきりのこわい話をお教えしましょう。 泣いても笑ってもまさにこれが本当に最後。さあ、そこのトビラを開けてこころゆくまでお楽しみください。
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だれがアケル!?トビラシリーズ最終巻。「トビラをあけたら最後、もう、あともどりできない……」という謳い文句のこのシリーズもこれで終了だと思うとなかなか寂しい。 こちらの巻でお気に入りの話は「マサルのゆうれい修行」、「二十六足のわらじ」。
「マサルのゆうれい修行」はこのシリーズの中で一番笑えてユニークな話。幽霊が怖いことでクラスメイトからいじめられていたマサル。ある日交差点に立っていると、信号無視をしたトラックにはねられ、あっけなく死んでしまった。血まみれの体から抜け出たマサルは、自分が幽霊になったことを実感した。しばらく自分の死体を眺めていたマサルだが、やがて、いじめられていた頃の記憶がよみがえり、胸に怒りがメラメラと湧き上がる。幽霊の真似をしてマサルを怖がらせ、大笑いしていたクラスメイト3人を怖がらせてやる為に、化けて出ようとするのだがどうにもうまくいかない。そこで、幽霊の先輩である先祖に相談すると、人間を怖がらせるコツを学ぶための『ゆうれい学校』を紹介されるが……。いじめっ子たちを驚かせるため、幽霊になったあと『ゆうれい学校』に通うという設定がまず面白い。いじめられていたのならもっと壮絶な復讐を想像していたのだが、胸焼けのするような展開にならなくてひとまず安心。学校がある場所が宇宙だからなのか、日本や海外の歴代の有名な幽霊や妖怪や、化け物がまじりあって、怖がらせるための講義を行っていた。生前は怖かった幽霊たちも、自分がいざ幽霊になってみると気さくで話しやすいというのも面白い。中でも四谷出身のお岩先生が出た時は思わずにっこり。(でもお岩さんを取り上げるときは然るべき方法を盗らないといけないらしいが、この作者は大丈夫か?と少し心配になった)悔しかった現世の恨みの晴らし方をつきっきりで教えてくれるという図がやけに微笑ましい。ゆうれい学校で様々なことを学び、すっかり驚かせるコツを学んだマサルは、満を持して地球に舞い戻りいよいよいじめっ子を驚かせるという段になって、衝撃の新事実が発覚。まさかの展開に驚いた。そんな事ってある!?という感じ。でもこの展開のおかげで、不思議と前向きな結末を迎えられてよかったと思う。
「二十六足のわらじ」は少し悲しい怖い話。父親の仕事の都合で花森町という田舎の町に越してきたヒロミは新しい小学校で、上履きとして藁で編んだ草鞋を渡された。赤い布が編み込んである可愛らしいそれを、すっかり気に入ったヒロミは登校した後、靴から履き替えることを楽しみにしていた。ある日、両親と買い物に出かけたヒロミであったが、思っていたより買い物に時間をとられ、町へ帰る山にたどり着いた時には夕暮れ時になっており、おまけに雨も降ってきてしまった。安全運転で車を走らせていると、最後の峠に差し掛かったところで、外から大勢に子どもの声が聞こえてきた。何事かと気にかけていると、やがてその声は大��くなり、悲鳴やうめき声まで聞こえ始めてしまった。 雨が降りしきる峠で、たくさんの足音と、悲鳴とうめき声が次第に大きくなって追いかけてくる様を想像すると非常に恐ろしい限り。振り切ろうと峠を猛スピードで駆け抜けていくヒロミ一家が、スリップして事故にあわないかとひやひやした。結果として、事故にあわず無事に帰宅できたのだが、その翌日学校に登校すると不思議な事が起きている。なんと、26人全員分の草鞋がなくなっていたのだ。前日にヒロミが体験した恐怖体験との関連性をしばらく見いだせなかった不思議な出来事。しかし、町に昔から住む老婆にその昔、あの峠の下で何があったかを教えてもらって、その草鞋と今回の体験関係性が分かり、納得すると同時に物悲しくなってしまった。 ヒロミが越してきて草鞋が26足になったことによって触発された恐怖体験であったが、その事によってかつての人々が救われたのならばその事によってかつての人々が救われたのならばよかったと思う。