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ヨルダンの地図が欲しかった。
最近は中東の報道が多いからか、図書館もイスラム関係の本の特設コーナーを設けている。
児童向けの本なので生々しい描写は避けられているが、子どもが家族を失って戦地で厳しい生活を余儀無くされているのはやはり悲しい。
国境を越えることがどんなに危険なことでも、そこを飛び抜けないと命の危険が迫っている。家族を失ったことも悲しいけれど、貧泊した生活のなかでも大切な友達を作れたこと、僅かなおもちゃを宝箱に入れて隠すこと、命をかけてでも戦地に薬を求めに行く勇気など、戦地にいる小さな子どもの感情の揺れが実体験を元に描かれていて、現実を思うと胸が苦しい。
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正直残念。
紛争地帯が舞台。病気の祖母のために前線を超えて敵地に向かう少女の話。
ます、内戦の様子がわかりにくい。もう少し背景についての説明(あとがきにはあったが、子どもは読まない)が欲しい。
話の多くは、彼女の冒険なのだから、地図があるとわかりやすい。
内戦地帯を舞台にしているが、政治手な話や、人との関わり、心の葛藤よりも「冒険」が主に描かれているので、ストーリーとしては、軽い印象を受ける。
そのため、この重い状況は本当に必要だったのか疑問である。
翻訳の文体が軽い。小学校中学年向きの印象を受ける。
表紙の画家はやはり日本人。かわいいですが、この本の描く緊迫した雰囲気には合っていないと感じます。
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あちこち世界中で起こっている内戦,親しいはずのお隣さんと憎み合うことの不条理.子供達,女性,弱い者たちが傷ついていく.10歳の少女が,おばあちゃんのために戦地を横切って薬をもらいにいく勇気に,感動した.
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ベイルートの町は、西と東に分断され、その境界線では日々戦闘が行われていた。10歳の少女アイーシャは、祖母の薬を手に入れるため、境界線を走り抜ける。作者自身がベイルートに住んでいた時の思い出をもとにした物語。
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児童書なのでものの数十分で読んでしまった。エリザベス・レアードの小説の中でも短くて軽いもの。でも内戦下のベイルートの様子が目に浮かぶ彼女らしい小説だった。小学生になったら子供に読ませたい。
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本作は、レバノンで生活経験のあるイギリス人作家の児童書だ。子供向け本専門店の書棚で手に取り、前書きを読み、購入を決めた。
そこには、今にも戦闘が起きそうなピリピリとした気配の中、皆が急いで逃げ去った後の屋台からこぼれ落ちたオレンジが、陽を浴びて金色に光りながら転がっていた情景が書かれていた。
本作は、戦場となった市井で子供たちが追い込まれていく様子が書かれている。幼い子供たちには、その状況が当たり前になってしまい、理解できないかもしれないが、平和な国で暮らしているおっさんの目には、かなり厳しく追い込まれているとわかる。この読み手のおっさんに何ができるということはないが、本を読み、状況を想像し、強く記憶することはできる。旗を振り、行動することはできないが、平和を構成する一人として存在することはできる。
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まえがきに、著者のエリザベス・レアードは、1970年代頃にベイルートで暮らしていたとあります。物語の主人公で10歳の女の子アイーシャが走り抜けた荒れ果てた風景は、著者が見てきた様子だそうです。そんな町も戦争が起きる前は、『地中海に面し、レバノンは「中東のスイス」と呼ばれ、首都ベイルートも「中東のパリ」と呼ばれるほど美しい町でした。』(訳者あとがきより)とあります。15年も続いた内戦も終わり、平和が戻ったようでしたが、イスラム軍が侵攻したり、港の大爆発と、災難もありますね。つい昨日も銃撃戦があったとか?本当の平和はまだなのでしょうか?
幼いアイーシャや、物語の中の賢く優しい大人達が願った平和が続いて欲しいと願います。
物語の中で描かれた、廃墟となった町の通りの風景と対照的にみずみずしいオレンジが平和を求める人達の心を表しているかのようです。
原著の出版されたイギリスでは、2007年にイギリスの学校で生徒たちの投票で選ばれる、ハル児童文学賞を受賞したそうです。
(訳者あとがきより)
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1975年に始まったレバノン内戦の時代の話だということが、あとがきを読んでわかりました。
グリーンラインの意味するもの、何が敵で何が味方かもわからず、背景知識がないと読みにくいと思います。
平和に暮らす日本の子どもたちは、小さな女の子にさえ銃が向けられるという場面を現実のこととして受け止めることは難しいかもしれません。私も信じられない気持ちですが、真実なのでしょう。
「憎しみ」の気持ちが世界からなくなるとは思えませんが、ライラ先生のように「大人になっても人をにくんじゃだめ」だということを、子どもたちに言い続けなければ、と思います。
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1975年に始まったレバノン内戦の時期のベイルートが舞台。家を爆撃されて母を亡くし、おばあちゃんと弟ふたりと命からがら逃げ延びた10歳のアイーシャ。ところが持病を持つおばあちゃんが薬を切らしてひどく具合が悪くなってしまった。このままでは死んでしまうかも。自分ひとりで小さい弟ふたりのめんどうなんか見られるわけがない。
アイーシャは決意して、おばあちゃんが昔通っていた病院の先生をさがしに行くことにする。でもそのためには、対立している東西ベイルートのあいだの危険な緩衝地帯を突破して、町の反対側まで行かなくてはならない……。
さまざまな紛争や難民の物語を読んでいて感じるのだけど、子どもにとって戦争はいつもとつぜん降ってくるもので、誰と誰がなぜ戦っているのかをきちんと解明することなんてできはしないんだなと。それでも白い旗に樹のマークが描かれているから敵のいるところ、緑の旗だから味方……という区別はわかる。でもその敵の地帯にも心やさしい少年がいて、泣いているアイーシャにオレンジをひとつくれるし、さがしあてたライラ先生は、おばあちゃんに無償で薬をくれ、最後に「大人になっても人をにくんじゃだめよ」と声をかけてくれる。
人と人を絶対的に敵味方に分ける戦争。でもひとりひとり出会うと、中にいるのは、当たり前だけど人間で、そこに悲劇がある。
レバノンは、今、戦争まっただなかのイスラエルの隣国。パレスチナ難民も大量に流入しているという。
繁内理恵『戦争と児童文学』の紹介本。
・「アイーシャの旅がどんなに恐ろしくても、回想で語られるということによって、安心をベースにして子どもは物語のなかに入っていける」
――大人もです(^_^;;
・人間がひとつの帰属、集団のアイデンティティをめぐって憎しみを募らせる姿には、皮肉にも民族を越えた共通性がある。
――今もそうだものね。あれだけ「民族浄化」の被害を受けたユダヤ人が今度はパレスチナ人に同じことをしている。
本としては、やはり大まかでいいので地図がほしかったかなというのと(ただ、作成しようと思うとどこまで厳密に/あるいは大ざっぱに という難しさはあったと思う)、表紙のアイーシャがヨーロッパ系の白人のように描かれているのがふしぎだった。(『シリアからきたバレリーナ』とかもそうだった)