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連作短編7編
中年の終わりから老年にさしかかった国芳。猫が顔出すミステリー。江戸っ子の国芳の姿を生き生き描いて楽しく、ちょっぴり哀しい。
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連作短編集。さくさく読めて面白かった。歌川国芳の周りで起こる殺人事件や賽銭泥棒、幽霊騒ぎなどなど。やっぱり国芳は魅力的!
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江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人であり、画想の豊かさ、斬新なデザイン力、奇想天外なアイデア、確実なデッサン力を持ち、浮世絵の枠にとどまらない広範な魅力を持つ作品を多数生み出した歌川国芳。
大の猫好きとしても知られた国芳が、個性豊かな弟子達とともに、身の回りに起きた「猫」にまつわる事件を解決する全7話からなる連作短編集です。
作者は、時代小説を多数手掛けているため、大変読みやすく、浮世絵に詳しくない方でも、時代小説として軽く読めるものとなっていると思います。
タイトルが猫づくしとなっていることもあり、国芳の猫に対する愛情が随所に描かれています。
「猫がいなくなった時の寂しさは、愛猫家でなければわかりはしない。猫といっしょに自分の膝までなくなってしまったような心持ちがするのだ。猫がいなくなると、猫に置いていかれた気持ちになるのだ。」
との言葉に溢れる猫愛を感じました。
また、葛飾北斎とその娘のお栄(応為)、月岡芳年、歌川広重、初代三遊亭円朝などなど、登場人物がとにかく豪華!!
私は、応為がものすごく好きなのですが、本作ではめちゃくちゃトリッキーなキャラクターで登場し、また、それも一つの考察として楽しいものとなっています。
同じ絵師でも、北斎は、見る者の気持ちより、自分の描きたいものを優先させ、国芳は、見る者に喜ばれる絵を描きたい、見る者を笑わせたい、驚かせたいと、常に見る者を意識して絵を描いたという、北斎と国芳の違いについての考察も興味深いです。
江戸っ子気質でお上を恐れぬ威勢の良さで知られた国芳ですが、老境に入り、老いへの戸惑いから死神を描きたいという思いに、しだいに囚われるようになります。
国芳は、歌舞伎役者の団十郎の幽霊に、絵師の仕事はいつまでも残るものだが、役者の仕事は、客が帰ったら消えてしまう寂しいものだと言われます。
しかし、国芳は、絵師も役者と同じく寂しいものだと感じます。
絵も文も時代の上に立っていて、時代が動けば、絵や文も置き去りにされ、やがては忘れられる。
自分のやっている仕事に虚しさを感じた国芳ですが、だからと言って、仕事の手をぬくつもりなどはさらさらなく、いま、ともにこの時代を生きる人たちに面白がってもらえる絵をこれからも描き続けたいと、より決意を固めます。
そして、“自分のため”に描くつもりだった死神の絵への執着を、「そんなもの描く必要はねえ」と切り捨てるのでした。
「わっちは町絵師なんだ。面白がらせて、満足させて、おあしをいただくのが稼業なんだ。」
という言葉には、国芳の“見る人を喜ばせたい!”という確固たる信念が表れ、その信念は、色褪せることなく、時代を越え、現在でもたくさんの人々を魅了し続けています。
根強い国芳人気の理由がわかる一冊です。
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自分が面白いと思うことを描くのである。しかも、その絵のことをすっかり忘れていて、新鮮な目で見れば、面白いに決まっている。
(P.58)
わっちは町絵師なんだ。面白がらせて、満足させて、おあしいただくのが稼業なんだ。
(P.282)
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国芳について、浮世絵の作者という以上の事は知らなかったし絵を見る時に、どんな人が書いたんだろう?と思った事もなかったけれど実際どうだったのかはわからないけど、猫好きなおっちゃんで確かにこういう人がこんな絵を書きそうという感じで、今後浮世絵を見た時により面白く見られそうだ。兄弟弟子の国貞との関係も面白い。何より、猫好き
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北斎を爺い呼ばわりして悪口雑言のクセに死後4年経っても立ち直れない、北斎の娘・お栄が絡む「高い塔の女」が切ない。『東都三ツ股の図』の井戸掘り櫓、確かにスカイツリーみたいだ。「(北斎の次は)広重か国芳か」と言われた時代に、高所恐怖症の国芳を「ものを見る目が平べったい」と看破した北斎、さすが。
「病人だらけ」は幼馴染で義母のおやすが良い味を出してます。「湖雲堂」の蘭方医・千代もなかなか。しかし、春画の文って不思議な色気がありますな。うひゃ〜なんかくすぐったい。
ミステリとして白眉なのが「からんころん」。
二人が何度も師匠の家へ行き違っているうちに、前の家の近所で白骨が発見される。二人に聞こえる下駄の音。猫の死。師匠の推理と甘酸っぱい少年たちの思い出がギュッと詰まった、珠玉の小品…だけど、敢えて芳年と圓朝を出す必要はないと思うが(圓朝が国芳の弟子で、芳年と同い年の仲良しだったとは〜)。
広重vs国芳の「江ノ島比べ」も捨て難い。
「相州江之嶋岩屋之図」と「相州江之嶋之図(コレ、チョコレートケーキに見えるw)」を並べて飾る旦那は趣味悪いが、二人の知恵比べは和やか。最後にチラッと出て来る「浅草田甫酉の町詣」、これは名所江戸百景中でも秀品だと思う。うん。
最後は「団十郎の幽霊」。きゃあ、8代目〜!
そして冒頭から登場し、段々嫌な下っ引きに成長した松吉が、いい岡っ引きになりそうで良かった。
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江戸っ子国芳の気風の良さが気持ちいい。
国芳の作品の根底にある性格が生き生きと描かれていて、国芳の絵をより深く見られそう。
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江戸時代も末期の画家・歌川国芳。
初老の日々を描きつつ、猫好きの画家が猫にまつわる謎を解く連作です。
日本橋で家族と5人の弟子、8匹の猫たちと暮らす歌川国芳。
根っからの江戸っ子で、火事となれば見物に駆けつける。
天保の改革で贅沢が禁止になり、美人画などが発禁になったことに憤慨し、絵に風刺を紛れ込ませて庶民の喝采を浴びる反骨精神の持ち主だった。
「猫飼好五十三疋」という、東海道五十三次に見立てた猫の絵を発表しているほどの猫好き。
行方知れずの猫を心配したり、元気がない猫を評判の良い人間の医者に連れて行ったり。
北斎の後は国芳か広重かと言われていたそうで、広重とは同年。
広重と絵で張り合うのかと思ったら、事件に巻き込まれて推理合戦になり、その後に広重の挑戦を受けて猫好きの証明をすることになったりと、微笑ましいですね。
葛飾北斎の娘・応為が北斎亡き後に寄るべのない身になって、ふらりと訪ねてくるというほろ苦い話も、どこかユーモラス。
応為が好きなのでこれが事実としたならちょっと哀しいけど、ひょうひょうとした描き方や北斎を尊敬する画家同士の共感、何気なく行末を考えてあげる心のあたたかさに、読後感はよいものでした。
晩年はペリーが来航した頃とまでは思わず、今の大河ドラマと同じ頃なのねとびっくり。
身近で起きる奇妙な出来事、これがいろいろあるんです!(笑)
それぞれを太っ腹に受け止め、驚きつつも淡々とさばいていく様子が、ざっくばらんな性格と年齢らしい余裕を感じさせて、よかったです☆
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http://denki.txt-nifty.com/mitamond/2017/05/post-9694.html
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はんなり面白かった。さっぱりしていて好き。装丁が素敵だったから借りてみたけど古めかしくなく読みやすかった。猫、というよりかは国芳って感じだった。春画の言葉の下りはへぇぇそんな感じなんだ…という具合。程よく男女の機微とかも書かれてて、でも嫌らしくなくて良い。町の名前や所の様子が書かれてる作品はその土地の感じやその時吹いてるだろう風とかそういう自分の中にある思い出と紐付いたりして良いなと思う。
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読みやすく面白かったのですが、色事や女性の描写がクドいと思ったら…いつも読まない雑誌の連載小説でした。国芳と猫の話が読みたければ良い本かと。
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絵師のことはよく知らなかったけど作品は見たことあった。史実はわからないけど国芳さんはこんな風に猫好きだったのかなあと興味は持てました。