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猫&音楽という好きなもの同士の取り合わせ、ローズピンクの綺麗な表紙、挿絵には猫、猫、猫と、手軽に手に取りそうな様子を見せつつ、実際にはすごく難しく哲学書のよう。博物学的な列挙が続くため、一本中に通るテーマが最初は掴みにくい。
最後まで読み通してから再度最初から読み返すと理解が進むように思った。
猫について述べつつ、猫を比喩として異文化間の理解について、自身の文化背景や経験がいかに影響するか、理解できない異文化をいかに評価するか、その評価を猫の音楽と表しているように思う。
民族や文化背景を超えた共通な文化や芸術の評価は可能だろうか?自分の文化背景と照らしたとき、理解できないその文化、芸術は価値の無い・低いモノと評価されがちではないだろうか?
おそらく耳、音楽だけでなく、全ての文化は、それに親しむ修練や経験なしには正当に理解し評価できない。現代美術や建築、日本美術に対してと同様に。
猫を擬人化し猫の音楽を笑うことにより、自分たちだけが真の芸術を解し所有すると見なす。しかしそうすることによって、逆に自分たちが理解できない異なる文化、芸術があることに気づき排そうとしている。
他者への排斥だけではなく、自身が望ましくないと考える行動、考えをタブー視して排斥しようとしていることが、それ自体、そのようなタブー行動、感情が自身に内在することを示している。