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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
生命そのものに不思議を感じるがいったいどのようにして生まれたのか興味深い。きちんとした考察に基づき解説しているが謎は深い。
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「読売新聞」(2014年6月8日付朝刊)で、
池谷裕二先生が紹介しています。
(2014年6月8日)
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無生物しかなかったはずの太古の地球にどうやって生命が発生したのか、非常に不思議だと思っていました。現代の最新の生命科学を見ても、生物の一部である細胞を加工して別の細胞にすることはできても、完全な無生物から生物を生み出す技術については、手がかりすらないように思えるからです。
一般的には、太古の地球の海には有機物がたっぷりつまった「生命のスープ」だったことがあり、そこに雷が落ちたりというショックによって偶然生命の素が発生し、それが進化して今日のような状態になったという説明ですが、どうも腑に落ちませんでした。
しかし、この本では、現代の研究で明らかなになっている地球の過去のイベントから、どのような物理的・科学的プロセスを経て有機物が発生し、それがどのように徐々に生命の素に発達を遂げていったのかについての著者の仮説を、実に説得力ある論で明らかにしてくれており、非常に納得度が高く、おもしろかったです。
まだ定説ではなく、それどころかむしろ現時点では少数派の説だとのことですが、僕自身は、すくなくともこれ以上に説得力のある説は聞いたことがありません。
まるでミステリ小説を読んでいるようなおもしろさでした。お勧めです!
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刺激的な読書だった。まだ確立してるとはいえないようだが,かなり説得力ある化学進化のシナリオ。原始大気の様子が分かってきてミラーの実験の前提条件はもはや崩れてしまった。それなら原始地球でどのようにして生命の原料となる有機物が合成されたのか。そしてそれがいかにして高分子の形態に変化し得たのか。長年の研究を通して筆者が至った結論は次のようなものだ。
全球溶融状態から冷えていく地球には海洋ができ,そこに後期重爆撃(40-38億年前)の隕石衝突が起きる。海水と地殻と隕石は蒸発して還元性の蒸気流となり,そこで様々な有機分子が合成された。それらの大半は大気中や海洋で再び酸化され分解するが,一部が粘土質鉱物に吸着し海底に沈んでいく。堆積層の続成作用で圧密・昇温・脱水が進むと,蛋白質や核酸の片鱗である高分子が作られた。既に始まっていたプレートテクトニクスがその有機物をプレート端へ搬送し,そこで熱水と遭遇。代謝や遺伝子に先駆けてまず小胞が現れ,個体が成立,融合を繰り返して次第に自己複製機能も獲得していった。というもの。
生命の進化という秩序化は,原始地球が持っていた熱を宇宙へ捨て続け,エントロピーを吐き出すことで進んできた。その流れを踏まえて筆者が提唱する,生命以前の分子進化も含めた「地球軽元素進化」という考え方はとても魅力的だ。生命のみならず,分子も自然選択を経て生き残り形を変えつつ次代へバトンを渡してきたのだ。ひょっとしたら,地球深部でも重元素進化が起きていて,地球外生命ならぬ地表外生命が進化していても不思議じゃないのかも知れない。
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「生命誕生」という大テーマに挑んだ野心的な書籍。新書形式だが、その内容はかなり重厚である。
生命の誕生から、その進化の探求については、近年ではニック・レーンの2009年の著作『生命の跳躍 - 進化の10大発明』という非常に野心的な良書がある。著者もレーンも、生命の誕生のもとになる有機分子の発生メカニズムについて、雷による化学反応で有機分子が生まれるという有名なミラーの実験を否定している。レーンは、前掲書にて海底での熱水噴出孔説を採ったが、著者は「隕石衝突よる有機分子のビッグバン」および「分子進化の自然選択説」という独自の仮説を採る(熱水噴出孔説を著者は明確に否定している)。著者の説は、約40億年前に、隕石の大量の衝突があり、それが有機分子の大量の生成につながったというものだ。著者は実際に隕石衝突を模擬した実験で、アミノ酸の部品に相当する有機分子が多量にできることを示している。
また、有機分子から生命への進化についても、他の学説とは異なる「生命の地下発生説」を採るのも特徴的だ。
「「生命はどこで誕生したのか?」との御質問が、生命機能を開始した最後の段階を指すとすれば、答えは「海底の地下の、熱水の通る厚い堆積層の中」だと言えます。それら“原始生命体"は、遅くとも34億年前には地下の厚い堆積層の中に「地下生物圏」を造って、次に海洋に出て適応放散する機会を待っていたでしょう」
というのが著者の答えだ。この説を受け入れることで「「生物有機分子がなぜ水溶性で粘土鉱物親和的か?」の謎は、歴史的事実の逆で、「水溶性で粘土鉱物親和的な有機分子だけがサバイバルして生命の素になり得た」」と言うことができるとする。自分はそれが謎であることも知らなかったが、そう言われるとそんな気がする。とにかく著者がそう信じていることによる力強さを感じる。
著者の学説が魅力的に思えるのは、生物の発生と進化を、熱力学と自然選択という基本原則によって説明を試みている点にある。著者によると「分子も生物も、そして固体地球も、すべからく進化は熱力学第二法則に従った現象だ」と言う。そして「進化の物理的必然性はエントロピーの減少をともなう地球の熱放出であり、分子進化の諸反応を整理する"軸"は全地球史だ」と言う。著者の説が正解かどうかは自分には判断する知識はない。著者本人もまだまだ未知領域が拡がっている、と認識している。ただ、生物誕生の必然性を提供してくれる魅力的なフレームワークであると思う。有機分子の発生に隕石の衝突が出てきて、代謝機能やRNA/DNAの出現に際してプレートテクトニクスが出てくるその説は非常にダイナミックだ。
著者は当初、生命の起源というテーマに当たって「ミラーの実験、リボザイム、RNAワールド、タンパク質ワールド、古細菌、生物三界説、セントラル・ドグマ・・・・・・などなどなど、生命の起源をめぐる膨大な知識に溺れていて、研究の手掛かりがつかめなかった」と言っている。そこから思考を巡らせて辿りついたのが、本書で何度か登場する「地球軽元素進化系統樹」である。この図の理解がこの本の理解のポイントではあるだろう(小さくてよく読めない��だけれど...)。
著者の仮説がこの後、主流のパラダイムになるのかどうか、はっきりいうとわからない。あと何年かした後に、その検証とアップデートをぜひお願いしたい。そもそも今でもどのように学会で扱われて評価されているのかもわからないのだが。
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「生命誕生」読了。
地球誕生から生命発生にいたるアミノ酸やタンパク質の前駆体ができるまでの課程について、物理的にあり得る経過を考えながらわかりやすくまとめている。
まず、地球が放熱しエントロピーが減少することによるプレートテクトロニクス機能した。そして、海ができた後の隕石の後期重爆撃が海洋・大気の化学反応を発生させて有機分子ができた。その後、海洋中の粘土物質とともに有機分子が海底に沈殿し、圧密・昇温効果で脱水重合することで有機分子が高分子化した。海底にできた高分子がプレートテクトロニクスにより移動し、小胞を形成することのできた高分子は熱水鉱床のエネルギーを利用して生き延び、その後、小胞が融合して内部のタンパク質が代謝機能を持つようになり、RNA/DNAを形成して種を作ったという仮説である。
説明の課程は論理的で説得力があり、いくつもの地質学的な証拠や実験による検証などが示されており、明確でないところは明確でないとはっきりさせていて科学者としての態度には好感が持てる。特に水さえあれば、あるいは海さえあれば生命が発生するという安易な考え方はしておらず、生命発生に対してのアプリオリな考え方を廃しすべて物理法則に則っているはずだという考え方にはぶれがない。
新書としてはレベルの高い内容だと思うが、著者は74歳になり物質科学を研究してきた者として広く生命誕生の研究の最前線を知ってほしいという意気込みと、この本をきっかけに若き研究者が興味を持ってくれるように新書にした気持ちがよくわかる一冊だと感じた。しかし、生命についてここまで具体的に唯物論的な説明がされてくると哲学や宗教はいったい何なのか考え込んでしまう。
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現代新書からほぼ同時に出ていた「生命のからくり」と合わせて読んだが、どっちもかなり面白かった。こちらは特に「有機分子ビッグバン」から、粘土コロイド上でのアミノ酸や核酸塩基が重合というシナリオに迫力があり、目から鱗の感じを受けた。核酸様の分子ができた後の過程は「生命のからくり」の方が、生物を知っている人の話という印象。ただ、逆に言えば、そういうこれまでの生物学の常識の枠に収まらないのがこの本の魅力と言えるかも。
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有機物の生成と、代謝システムの獲得まで。化学式が理解できれば、説の妥当性が判断できるのかもしれない。
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無機・有機化学、地球物理が示唆している事実を積み重ね、大胆で新たな生命史像が提示されている。RNAワールド仮説をはじめとする生物学の「定説」を覆すことに成功している。これまで読んだ生物系の本とはアプローチが異なり、非常に面白かった。未解明の部分を明確化したことの意義も大きい。参考文献が丁寧についているのも新書とは思えないクオリティだ。
・古代の磁性鉱物の向き。地球磁場の化石という見方。大陸移動説の確立。
・生命の発生は地球の熱の放出に伴うエントロピーの減少という物理の一般法則の結果。だからこそ他の天体にもありうる。
・バクテリアには生物進化の初期だけにある「細胞内共生」という進化の別の機構があり、遺伝子分析の方法ではその先がたどれない。
・遺伝子は量子力学の支配する「分子」でなければならない:シュレディンガー
・「生物有機分子がなぜ水溶性で粘土鉱物親和的か」の謎は歴史的事実の逆で、「水溶性で粘土鉱物親和的な有機分子だけがサバイバルして生命の素になり得た」。
・有機分子が地球上に生成しても、海水では多量の水に希釈されて、反応に必要な濃度にならず、重合して高分子になることはできない。
・「太古の海は生命の母」の呪縛に縛られて、いかにも原始的な熱水環境で古細菌が見つかったことで、熱水噴出孔こそ生命発現の場かもしれないと期待してしまった。
・アミノ酸など生物有機分子は、還元的な海洋堆積物の続成作用による高圧・高温の脱水環境で、自然に重合して高分子になる。
・いくら仮定を増やしても、宇宙起源説では、生命が発生するほどの種類と量の生物有機分子がどうやって蓄積したのか、説明できない。
・まず小胞群が代謝機能を獲得して、続いて自己複製機能を獲得した。しかし、この逆のRNAのような遺伝情報を担う巨大分子が先にでき、後に代謝機構を獲得したするシナリオには、説明不可能な問題や矛盾がある。
・地球軽元素は、みずから生物となるまで、分子のときは結合、高分子のときは複合化、そして小胞となってからは融合など、いずれも結合や合体や融合することで、それぞれの環境をサバイバルし、同時に軽元素のエントロピーを下げて、地球冷却の要請に応えてきた。
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生物は一つの単細胞から多様な種に進化していったとするのが生物学の常識だが、では最初の生物はどのように誕生したかに対しては歯切れが悪い。太古の海は有機物のスープであったとか地球外から隕石で運ばれてきたからとか、である。
本書は分子がどのようにして有機物となり、重合化して核酸などの生物のもととなったかについての仮説を提示している。これを地球の成り立ちから説明しており、きわめて蓋然性が高い説だと思う。
地球の歴史を見ると生命が誕生するのは必然的であったとも言えるし、地球が生物が誕生するようなシナリオを描いてきたのはミラクルな偶然であるとも言えるかもしれない。
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我々が地球の子であることが証明されている。有機分子のビッグバンが起こったことにより、地球で生命が誕生したと説明している。
有機分子のビングバンとは概ね次のようなことらしい。
40〜38億年前に隕石の海洋衝突による”還元的”な衝撃後蒸発気流の中でアンモニアが大量に生成される。そして、”後期重爆撃”の時代には、一度隕石が衝突した付近の海域に再び隕石が衝突し、アンモニアやカルボン酸、あるいは炭酸水素アンモニウム、アミンやアミノ酸などが原料となってより複雑な有機分子が生成された。
また、熱力学第二法則に基づき、「生命の発生と生物進化は、地球のエントロピーの減少に応じた、地球軽元素の秩序化(組織化・複雑化)である」としてる視点も面白い。
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大変意欲的な作品で、生命誕生だけにとどまらず、そもそも生命誕生の歴史とは地球誕生の歴史であることを痛感させられた。
「生命体はエントロピー平均化の法則に反している?」という謎、「ユーリ・ミラーの実験はほんとうに正しいのか?」という謎、「海が生命誕生の基ではなく、地球内部の圧力と熱による?」など、その仮説だけではなく実験によっても実証している。
無機物質しかなかった原始地球において、高度な「有機物質結合体である我々がどのように生まれたのか?翌々考えてみると、窒素や酸素、水素、炭素をただ並べても何も起きないのに、高度に組成すると生命体になるのだ。これは地球の大きな営みが隠されている。
骨太で大変読み応えがあるが、多少は化学の前提知識は必要であろうとは思う。
とてもおすすめな本だ。
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気軽に読み始めたら未知の世界過ぎて面食らった。自分は化学に弱いことを痛感させられたが、非常に興味深い読物だった。特にホモキラルだのラセミだののあたり、物理界の対称性の話題はお馴染みだが、化学にも左右の概念があったとは。ぜひ覚えておきたい。
まず、筆者は「生命は海で生まれた」という常識を徹底的に否定する。理由の一つとして、水中では加水分解が進むためむしろ分子進化には適さないことが上げられる。
筆者の説は独自のもので、広く受け入れられた学説とは言い難いようだ。まだまだ推論を重ねただけという部分もある一方、一部は非常に説得力を感じる。
●「生物はエントロピー増大化法則に反している」
よもやこのパラドックスを説明する論説があったとは。曰く、地球はその誕生以後熱を放出し続けている→全体としてのエントロピーは増大している→地球自体は冷える→地球のエントロピー低下→地球内は秩序化する。つまり地球規模で考えれば生物とは、地球誕生時の軽元素が秩序化した結果である、と。
もっともこれは「そう考えれば説明できる」というだけで、証明されているわけではないし証明できる事柄でもないだろう。どちらかというと概念的な問題に思える。
●初期の生命は細胞内共生による進化があったため、親から子への遺伝子を辿るだけでは、「最初の生命」には辿り着けない。
●”有機分子ビッグ・バン説”
前提:”還元的”環境であればアミノ酸など生物有機分子は発生しやすいが、原始大気は”酸化的”だった。
筆者説:隕石の後期重爆撃によって生じた蒸気流は一時的に”還元的”になる。この瞬間に生物有機分子が大量生成された。
●生物有機分子の地下深部進化仮説
高分子化は海洋堆積物の地下深部での続成作用による。
●プレートテクトニクスの結果、生命誕生。
”膜で囲まれた小胞”つまり「個体」の成立→”小胞融合”つまりエントロピー「代謝」→分裂による自己複製つまり「遺伝」
これで「個体」「代謝」「遺伝」という生物条件を満たした、すなわち「生命誕生」である。
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宇宙の誕生、太陽系の誕生、地球の誕生、生命の誕生。なぜ、こんな世界が存在しているのかは永遠の謎。生命の誕生と進化は、地球内部の熱の放出に伴うエントロピーの低下という物理の一般法則による必然である、という発想に納得してしまう。いろんな説があるが、確率的に信憑性が高そう。
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はぁ、やっと読み終わった。生命が誕生するまでの流れを地球で起きたイベントとリンクさせて解き明かそうとする著者の考えを書いてますが、とにかく読みにくい。一番最後に全体をまとめた章があって、それで繋がりましたが、それまで各論が続くので……。
あと、現在主流の理論とは違う新説だということを強調したいのか、主流説に対する攻撃が多すぎて。皮肉っぽい言い方の箇所もあるのがどうにも好きになれません。
また、新説とは言っても今は著者のような考えのほうが主流と思うので、そこまで20世紀の説を攻撃しなくてもと思いましたです。