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ランサローテ島 みんなのレビュー
- ミシェル・ウエルベック (著), 野崎 歓 (訳)
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:河出書房新社
- 発売日:2014/05/22
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紙の本
「アンチモダン」ですか……
2016/01/31 16:14
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あられ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本は半分が分厚い紙に印刷されたカラー写真(映像分野でも活躍する著者自身がこの島で撮影した写真多数)、半分が小説。巻末におかれた「訳者解説」によると、本作の原著の初版本(2000年)は、「写真集と小説の二冊をあわせて箱に収めたぜいたくな造り」だったそうです。
小説のストーリーはシンプルで、1999年の年末、パリに暮らす主人公(中年男性)が、旅行会社で紹介されたランテローサ島を休暇の行き先と決めるくだりから始まります。このほんの数ページ、いや、数行で、旅行会社の女性社員を「娘」と呼び、小馬鹿にしている調子に、胸焼けがします。
物語の終盤で、主要な登場人物(4人しかいません)のひとりが「○○人というのは……辱められては喜んでいるような連中なのです」と述べるくだりがありますが、こんな小説を時間を割いて読んでいる私も、相当なマゾヒストだと思いました。
「訳者解説」で、フランスの文芸批評にある「アンチモダン」という概念が紹介されていますが、それ自体がもう古めかしいマッチョイズムで、見るも無残だというのが個人的な感想です。あくまでも、20世紀末に書かれた20世紀の小説です。それも、「セクト」(カルト)を扱おうとしていながら、深刻な暴力性からは目を背け、「肉の快楽」の追求に対して、何というか、まるで新しいもの、すばらしき新世界であるかのようなまなざしを投げかけている、そんな俺ってかっこいい、という小説です。行くところに行けばただのヒッピーではないかと思いました(しかも30年遅れの)。
ミシェル・ウエルベックは本作で新興宗教のラエリアン・ムーブメントに危険な接近を見せていますが、そのことも訳者解説で説明されています。また、ウエルベックは、後の話題作『服従』でもイスラム教への嫌悪感をみなぎらせていますが、本作で早くもそれがうるさいほど語られています。ウエルベック自身が「私は完全な無神論者だ」と述べていると訳者解説にありますが、その「無神論」は非常に薄っぺらく、(少なくとも本作においては)「既存宗教・組織宗教を否定することこそ、人間の礼賛である」と考えているように私には読めました。
造本は美しく、写真はおもしろかったです。写真だけで、荒野が好きな人には「観光ガイドブック」になります。また、小説はばかげた世界観を露呈するくだらないものだと思いましたが、文章(野崎歓さんによる訳文)には力がありました。そして、読後感は「これぞフランス的」。嫌いではありません。こういうものを、くだらないものとして、これからも消費させていただきたいです。
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