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2020年5月再読
日本の労働慣行がどうして今のようなかたちで成立したのかということについて、本当に分かりやすく解説してくれている。
私がこれまで読んだ本の中では、その部分については、 one of the best の本。
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ホワイトカラーは考えることが1つの重要な仕事であり、職場にいる時間だけ仕事をしているわけではない。自宅や通勤中でも仕事のことを思いめぐらすことは、珍しいことではない。つまり労働時間と非労働時間の境界が、知的労働者にとっては曖昧。
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結論は「中高年ジョブ型正社員で途中からノンエリートという選択肢を」という事のようだが、ノンエリートって高度なスキルを必要としない言わば誰でも出来る仕事なので、仮にコスト500万で同等としても、企業は中高年のオッサンよりも若い派遣の女性を選択する。「ノンエリートは派遣の仕事」でドンドンクビになる。結局、派遣法がザルで常用代替しまくりだから、そこの厳格運用を徹底しないとダメ。昨今議論されている、限定正社員(これがジョブ型でしょ?)が受け皿になって、中高年からのチェンジってのが出来るのか否か。また「あなたはこれから、ノンエリートで給与の3~4割減です」って提示に素直に納得できるのか?という疑問もある。
あと労働市場の年齢差別は、いろいろ理想論を言ってもダメ。履歴書の生年月日記載を禁止する法律を作らないとなくならないだろう。
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労働問題を戦後からの流れで追って整理せてくれる本。60年代までの、ジョブ型を目指す流れと、70年代以降のジャパン型終身雇用の礼賛。うーん、根が深い。
結局のところ、外部の労働市場がない以上そんなに変わりようがない。系列をもう少し緩くした企業連合を志向するか、でなければcroud soursingに委ねるか?
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日本の雇用、働き方が欧米とかくも違うことをはじめて知った。恥ずかしい限り。職を極めるのではなく、会社に養って貰うような価値観を自分ももっていたことを気付かされた。外資は冷たい、といった印象も浅はかだった。著者の主眼はジョブ型への社会の転換にあるのだが、期せずして価値観の変換まで促された。
・終身雇用慣行というのは、企業の側にとって、あくまで「首を切れない」という制度ではなくて、むしろ「首を切らないようにする」制度で、従業員の側にとっては、絶対に「首を切られない」制度ではなくて、あくまで「首を切られないようにする」制度
・年金の支給開始年齢と退職年齢とは密接な関係がある。
・今日に至るまで高齢者雇用政策は年金政策の従属変数
・教育システムが「入社」のためのものに純化すればするほど、職業教育訓練の社会的評価は下落する
・日本以外では、管理職は若いうちから管理職、非管理職は中高年になっても非管理職というのが普通。
・3つのミドル。年齢、管理職、階級。
・日本型雇用システムは、スキルの乏しい若者にとって有利である反面、長年働いてきた中高年にとって大変厳しい仕組み。
・欧米の成果給はその基本に職務(ジョブ)が明確に存在する。
・職務無限定がデフォルトの日本のメンバーシップ型正社員に、彼は企画業務、彼は非企画業務などという職務区分は存在しない。みななにがしか企画し、ルーチン業務をする。
・ホワイトカラーは「考えること」がひとつの重要な仕事:経団連
・年功賃金は生活給(教育や介護、老後の備え)
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たしか、新聞の書評でみかけて読んでみたいと思い、近所の本屋にあるかとみ見にいったら、ちくま新書の並びの中でこのタイトルは抜けていて(どなたかが購入されたのか)、それでちょっと待って図書館で借りて読む。
さいごのほうに、わずかばかり「中高年女性の居場所」という小見出しがたてられている。この小見出し部分に女性の話は尽きていて、この本でずーっと出てくる「若者と中高年」というのは、基本的に若いあんちゃんたちとおっさんたちの話なんやなーと、思う。
まあ、それはそうとして、構造的な視点が必要だ、という著者の話は、なかなかおもしろかった。"日本型の雇用のあり方"はおっさんたちばかりが既得権で得をして、若いもんは損をしてるという…という類いの話は不毛であると。
この損得問題は、著者に言わせればこういうことだ。
▼…日本型雇用システムとは、スキルの乏しい若者にとって有利である半面、長年働いてきた中高年にとって大変厳しい仕組みです。不況になるたびに中高年をターゲットにしたリストラが繰り返され、いったん離職した中高年の再就職はきわめて困難です。しかしながら、その中高年いじめをもたらしているのは、年齢に基づいて昇進昇格するために中高年ほど人件費がかさんでいってしまう年功序列型処遇制度であり、その中にとどまっている限り、中高年ほど得をしているように見えてしまうのです。(p.171)
著者は、「若者(正確には「若い中高年」)にしても中高年にしても、運悪くこぼれ落ちた者が著しく不利益を蒙ってしまうような構造自体に着目し、その人々の再挑戦がやりやすくなるためには何をどのようにしていったらいいのか、という構造的な観点が不可欠です」(p.17)と述べる。
序章の14〜19ページが、この本のダイジェストになっていて、とりあえずここを読めば著者の主張のキモは「わかる」のだけど、いったいどういう時代に何がどうなって、今こうなってるのか、というのは、やはり全体を読んだほうがおもしろい。
たとえば、経営側が「職務給」(職務に応じた賃金)を唱道し、政府も職務給の導入を方針としていたが、1960年代後半に、事態はまったく逆の方向に=「職能給」に変わっていったというところ。その転換を明確に宣言したのが『能力主義管理 その理論と実践』という報告書で、著者はこれを「「能力」を体力、適性、知識、経験、性格、意欲からなるものとして、極めて属人的に考えている点において、明確にそれまでの職務中心主義を捨てたと見てよいでしょう」(p.47)と指摘する。
「仕事」に注目していた職務給から、「人」に焦点をあてた「職能給」への転換。
▼職務遂行能力はあくまでも潜在能力の評価であって、実際に従事している職務とは切り離されているので、企業が労働者をどんな職務につける場合でも障害にはなりません。逆にいえば、賃金制度が職能給という形に落ち着いたことで、職務の限定なき雇用契約という在り方が確立したともいえます。(pp.47-48)
そして、能力なのだ、知的熟練なのだ、労働力の価値が高いのだと言うようになって、問題意識が消えていった、と��う話がまた興味深いものだった。
経営側や政府が「職務給」を言うのに対し、働く側は「それでは生活できない」と反論してきた。年功賃金は、(おっさん一人の稼ぎで妻子を養える、という意味での)生計をたてられる賃金=生活給の色合いが濃いものだったはずだ。ところが、1970年代以降、日本型雇用ブラボーの時代がやってきて、それが、"生計費をまかなう生活給"という年功賃金の原点を隠していくことになった。
▼1970年代以降に労働経済学で主流となっていった知的熟練論では、そもそも中高年が高賃金となっているのは生計費をまかなうためなどという外在的理由ではなく、労働力そのものが高度化し、高い価値のものになっているからだと、正当か理由が入れ替わってしまっていたのです。(中略)しかし、好況期にはそのロジックを信じている振りをしている企業であっても、いざ不況期になれば、「変化や異常に対処する知的熟練という面倒な技能を身につけ」たはずの中高年労働者が真っ先にリストラの矛先になるのが現実でした。(中略)企業からそれだけの値打ちがないと放擲されてしまった中高年労働者は、本人の能力が低かったからそういう目に遭うのだという形で問題が個人化されてしまい、生計費がかかる中高年労働者の共通の問題としてそれを訴える道筋が奪われてしまうという結果になってしまうのです。(pp.232-233)
著者のみるところ、それはアカデミズム、ひいては政策にも影響を与えた。
▼こうした流れは、アカデミズムにも大きな影響を与えました。現役労働者の生活保障はすべて企業内で解決されるべき「労働問題」であるとされてしまったことが、それまで存在していた広義の「社会政策」という問題意識自体を希薄にしたのです。(中略)近年、社会政策分野で福祉と労働のリンケージが問題になりつつあるのは、この状況を反映しています。(p.238)
「中高年女性の居場所」で述べられている、「女性正社員は会社にとってどんな存在だったか」のところを読んで、母たちの世代で裁判を起こした人などはこういう女性観と闘ってきたのやなーと思った。とくに、女子の結婚退職制などを正当化してきた企業の主張が、あらためて読むとスゴイ。そこのところを、著者がコンパクトにまとめている。
▼…男女差別的労務管理を疑うことなき前提とし、にもかかわらず「男女同一賃金の原則に徹し」!「成績査定により生ずる差を除けば、年齢を問わず男女同一の賃金を支給してきた」ために、長期金属の女子職員の方が男子職員よりも高給となってしまうという「不合理」が生じてしまうことのないよう、結婚退職制を導入したというわけです。男女差別的労務管理と男女同一年功同一賃金を組み合わせると、こういう論理的帰結に至るという典型例とも言えます。(pp.217-218)
本題としては、著者は欧米風の「ジョブ型労働社会」、つまりは、職務に応じた賃金というタイプの評価や処遇をやっていくほうがよいんじゃないかと主張している。それが「中高年問題」への処方箋だろうと。本文を読んでいると、なんとなーく分かったような、そうかなあという気にもなる。だが、これとても、どうかすると、かつて均等法導入後に広がったコース別人事のように、「ジョブ型」と「��れまでどおり年功型」がどこかの線で切り分けられて、「はずれた人コース」と「あたりの人コース」みたいにならんともかぎらんのちゃうかと思ったりもした。
そして、中高年女性は、この本を読んでいても、どこか「飛び地」感があって、「ジョブ型」になったとして、どうかなーと考えた。とりあえず、この著者の本はもう一冊くらい読んでみたい。
(8/27了)
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やはり社会保障の問題がとてつもなく大きいと、田舎で暮らしていて感じる。親の貧しさで子供の未来が狭くなってしまうのは悲しい。この人の本、他も読んでみよう。
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ジョブ型とメンバーシップ型に雇用観を整理。
日本はメンバーシップ型。
なので上級管理職は育てやすい。
しかし専門技能になりにくい。
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雇用システムと社会保障システムが表裏一体であることがよくわかった。
六十五才継続雇用、成果主義などの流れの中で、社会保障システムをしっかり再構築する必要があると感じた。
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労働・雇用のシリーズインプット。紙の本に到達しました。
主張は同じなので早く読めるようになった。
状況の評価、ということになるのだろうな。。
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欧米組織は契約型、日本組織は所属型とはよくいわれてきた議論であるが、著者は、ジョブ型とメンバーシップ型という視点から、日本企業のサラリーマンの働き方や職務、労働時間、処遇のあり方など、何故矛盾や齟齬が起こるのかを説く。歴史的な観点から企業内での教育訓練がなぜ普及したか、採用や定年制、年齢差別など、裁判の判例や政府の右往左往する政策方針についても言及している。
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立論は明確です。ジョブ型雇用への移行、社会保障と企業雇用の住み分けなど、示唆に富む考え方が盛り込まれています。一方、そのような社会を構築しているヨーロッパにおける課題にも触れられていれば、もっと理解が進むかと思います。
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序章 若者と中高年、どっちが損か?の不毛
・若者雇用問題がなかった日本
・「雇用問題は中高年」だった日本
・「中高年雇用」問題の有為転変
・表層の損得論を捨ててシステム改革を論じよう
第1章 中高年問題の文脈
1 欧米の文脈、日本の文脈
・1997年神戸雇用会議-欧米は若者、日本は高齢者に主な関心
・欧米の文脈-早期引退促進政策はもうとれない!
・日本の文脈-中高年失業が焦点に
・日米欧共通の文脈-長く生き、長く働く
2 ジョブ型を目指した時代の中高年対策
・1960年代の日本はジョブ型労働社会を目指していた
・職業能力と職種を中心とする近代的労働市場の形成
・職種別中高年雇用率制度の完成
・企業単位高年齢者雇用率制度へ
・年齢差別禁止法への試み
3 年齢に基づく雇用システム
・年齢に基づく雇用システムの形成
・年齢に基づく雇用システムの法的強制
・年齢に基づく雇用システムの再編強化
・職務給を唱道していた経営側
・職能給に舵を切り替えた経営側
・労働側の逡巡と横断賃率論
・あべこべの日本的レイオフ制度
4 中高年受難時代の雇用維持政策
・石油危機による雇用維持政策への転換
・産業構造転換への内部労働市場型対応
・現場で進む中高年リストラ
・合理化の指針
・整理解雇法理の確立
・年齢基準の容認
第2章 日本型雇用と高齢者政策
1 日本型雇用法理の確立
・生産性向上運動と配置転換の確立
・配置転換(職種変更)法理の確立
・配置転換(勤務地変更)法理の確立
・出向・転籍の出現と拡大
・出向・転籍の法理
・配置転換に順応する労働者
2 日本型雇用システム評価の逆転
・「近代化」論の時代
・OECD対日労働報告書
・内部労働市場論の流行
・日本型雇用のアキレス腱
・日本人論の文脈
3 60歳定年延長の時代
・定年制の歴史
・定年延長政策の始動
・賃金制度改革とその判例的遺蹟
・60歳定年の法制化
4 65歳継続雇用の時代
・なぜ継続雇用なのか
・継続雇用努力義務の法制化
・継続雇用政策と年齢差別禁止政策の絡み合い
・継続雇用制度の例外つき義務化
・継続雇用制度の例外なき義務化
・解雇と定年の複雑な関係
第3章 年齢差別禁止政策
1 「中高年問題」の復活と年齢差別禁止政策の登場
・90年代リストラの標的は再び中高年
・中高年雇用政策の復活
・年齢差別問題の提起
・経企庁の年齢差別禁止研究会
・労働省研究会の逡巡
・求人年齢制限緩和の働きかけ
・中高年と職業訓練校
2 年齢差別禁止政策の進展
・2001年雇用対策法改正による努力義務
・年齢にかかわりなく働ける社会の模索
・総合規制改革会議の要求
・2004年改正による年齢制限の理由明示義務
・民主党の年齢差別禁止法案
3 若者(若い中高年)雇用問題としての年齢差別
・年長フリーター問題の政策課題化
・「再チャレンジ」という問題設定
・政治主導による年齢制限禁止
・2007年雇用対策法改正による年齢制限禁止
4 「年齢の壁」を超えて
・経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会
・70歳現役社会の実現に向けて
・継続雇用政策の陰で
・40歳定年制論
・諸外国の年齢差別法制
・人権擁護法案における年齢の欠落
第4章 管理職、成果主義、残業代
1 日本型システムの中の管理職
・「ミドル」という言葉
・そもそも「管理職」とは?
・社内身分としての管理職
・機能と身分の間
・ジョブ型労働法制との矛盾-労働時間法制
・労働組合法制と管理職
2 中高年を狙い撃ちした成果主義
・「知的熟練」の幻想
・日本型雇用システム改革論の復活
・成果主義の登場と迷走
・人事査定の判例法理
3 中高年残業代対策としてのホワイトカラー・エグゼンプション
・労働時間規制と残業代規制
・日本的「管理職」との妥協
・ホワイトカラーの労働時間問題と企画業務型裁量労働制
・ホワイトカラー・エグゼンプションをめぐる空騒ぎ
第5章 ジョブ型労働社会へ
1 中高年救済策としての「ジョブ型正社員」
・「追い出し部屋」の論理
・職務の定めのない雇用契約
・「ジョブ型正社員」は解雇自由の陰謀か?
・「ジョブ型正社員」とは実は中高年救済策である
・途中からノンエリートという第三の道
・継続雇用の矛盾を解消するジョブ型正社員
2 中高年女性の居場所
・OL型女性労働モデルの確立
・社内結婚
・女子結婚退職制
・男女別定年制
・男女雇用機会均等法とコース別雇用管理
・基幹的パートタイマーから「ジョブ型正社員」へ
3 中高年問題と社会保障
・教育費と住宅費は年功賃金でまかなう社会
・問題意識の消滅
・児童手当の迷走
・福祉と労働の幸福な分業体制
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年功制に基づいていたずらに世代間対立を煽る論調があるけれど、実はそのような若者の雇用問題をピックアップすることで、年功制における中高年の問題が後景に退いてしまった。
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日本型の雇用システムでは本来社会保障など公的な枠組みの中で行われるべき支援がを企業が肩代わりしているという指摘が面白い。それが熟練度に関係なく年功序列で給料が上がりつつける一方で、不景気になると真っ先に中高年がリストラの対象になることの説明としてしっくり来る。少しずつ雇用慣例も変わりつつあると感じるが、企業と社会政策が両輪となって移行しないと上手くいかなそう。