紙の本
不可解だが現実
2024/02/18 13:02
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めてしばらくは状況がつかめず、誰が「おかしい」のか、誰が「普通」なのか、その規範を含めて、わけがわからなかった。しばらく読んで何となく状況が見えてきた。
原発事故から3年たった時点で書かれたこの本は、その後のコロナ禍でも浮き彫りになった、この社会の同調圧力や社会のゆがみを映し出す寓話だが、どこか未来の現実を見せているようなおそろしい世界だった。
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吉村萬壱ファン必見
2023/10/25 21:28
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投稿者:狂ったチワワ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの通り
違和感はあるが、さっと読める作品
彼の世界観ならそうなるなという作品
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これが近未来?
2015/08/31 22:23
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投稿者:コイケ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「自粛ムード」に支配された一時期の日本をデフォルメ化したような物語。というより、自主規制や「空気を読む」ことが美徳とされる日本の近未来を描いたディストピア小説と呼ぶべき? じわじわと恐ろしさが伝わってくる作品でした。
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怒りの警鐘
2015/02/14 12:13
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投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
恐ろしい小説だと思った。
一種のディストピア小説として、
ジョージ・オーウェルの『1984』とか『動物農場』が連想された。
あるいは何かSFでこれに似た雰囲気の小説があったような気がする。
しかしもちろんそれらとは違った
まさに今の日本の我々のための本である。
物語は一種寓話風でもあり、
眼前の問題を越えた普遍的なテーマが哲学的に掘り下げられるともいえる。
しかし、舞台が架空の町に設定され多少の加工を施してはあるものの、
一読何が素材であるかはリアルな記憶とともにはっきり感得される。
そしてそこから作者の呻くような深い黒い怒りが滲み出てくるのだ。
描かれているのはふつうの日常生活であるように見える。
しかし最初から何かがおかしい。
何かが微妙にずれて、歪んでいる。
語りの時間と語られる出来事との時差はあるものの、
語り手は小学生の女の子として見たものを書いているから、
文章はわかりやすい。
しかしそれはどこか淀んでいて、何かしら不気味なものが漂っている。
これがまず恐ろしい。
それでも、あるいはそれゆえにだろうか、
どんどん引きこまれる不思議な感覚があって先へ先へと読まされる。
そこで感じるのは、歪んでいるのは現実なのか、
それともこれを語る子供なのか、という疑問である。
謎は徐々に解き明かされ、
最終的には奇妙なタイトルの意味も明らかになり、
歪みが現実世界のそれであると同時に、
子供がそれを歪ませて語らざるを得なかった事情もすべてはっきりする。
すべてを剥ぎとったあとの最後の一行に向けて、強烈な終わり方である。
恐ろしい。
昨年末、毎日新聞恒例の「今年の三冊」で佐藤優氏が本書を挙げ、
短い言葉で巧みにまとめていた。
「大災害の後、絆を強調して形成される新しいファシズムと
それに適合できない人の姿を、独自の言語で描いている。」
技術的には成長小説を裏返しにした設定が見事だと思った。
記念碑的な衝撃作だと思うが、
その誕生を喜ぶより、ここに描かれた絶望が辛い。
これが今後我々が目にする現実から少しでも遠い話であることを祈るばかりである。
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凄い小説
2015/10/07 00:12
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
twitter文学賞で本作を知りました(2014年度第3位だったと思います)。
「根拠のない恐れと同調圧力」に対する痛烈な批判が込められている小説で、小学生の語り口が非常に静かな怖さを演出しています。架空の町海塚の背景といい、メッセージ性の強さといい、文学でしか描けない世界だなと感じました(映像化するにはあまりにも静かにショッキングな内容だと思います)。
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うっすらわかりかけてはいたものの何が病であるのか、考えながら読みすすめる。海塚は明らかに病。この病は序盤で考えていた病状よりもずっと深いし歪んでいるし、強い。確かにこんな町、どこにもないし、全部がそうとも言える。考えるふりだけするのもまた病。ラスト付近、この著者の短編「不浄道」をふと思い出す。(長らく知人から返ってきておらず、連絡がつかないので私の記憶のみ)「ほらここも」「こっちも」みたいなリズムで、時折私も海塚的なイデオロギーに乗っかるふりぐらいはしようかなあと思ったりする。ごくたまに。でもやっぱり、無理だよって思う。どいつもこいつも、ってこころの中で舌打ちする自分がいる。
主人公恭子があまり頭のできがよくないというのが全体的に風通しを良くしているというか押し付けがましさを排除できている要因なのだろうか。
「馬鹿だと思いました」とかいう率直な言葉にさえ艶を感じるのは吉村萬壱作品ならではだと感じた。
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読み進むに連れ、次第に違和感と不気味さが澱のように積もっていく。積もった澱は読む文字を粘りつかせ、その世界を気味の悪いものへと彩っていく。そして現れるディストピア。すばらしい。今年読んだ小説のベスト。
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究極的には客観的に物事を考える事は不可能だから、本質的には皆の脳の囚人となる。化学工場の企業城下町での公害問題に物言えず、同調圧力により病んでいく姿を描いており、社会派であり哲学的でもあるが、やや表面的で人間の内面の葛藤描写が弱いかな。囚われの身の過去回想独白形式だとどうしてもこうなってしまうのかもしれないが。これなら公害ドキュメンタリーとか哲学書を読んだ方が有益かな?って気はする。
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静かで、怖い長編小説。視点人物は小学生(だが、語り手は?)。24の短い断章からなる。震災以降の日本の雰囲気をみごとにデフォルメして描出している。
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隣近所の目を気にする神経質な母親と二人、海塚という町に住んでいる小学五年生の恭子。恭子の目を通して描かれる世界。特に面白いという作品ではないが、物語に引きずり込まれていく。陰鬱な作品だが、その陰鬱さにどこか惹かれるものがある。
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最後の一行でガツンとくる。とはいえ、現実の世界はボラード病よりもずっと歪んだ病に罹っているとしか思えない。どうすりゃいいのだろう(呆然)
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「震災」、「放射線」、「被曝」という言葉は一字も出てこない小説です。でも今の日本をオーウエル『1984』の世界的に見据えているディストピア作品。
『美味しんぼ』の鼻血描写を袋叩きにしたマスコミ、政治家、経済人ら――「健全な」日本人――が震撼しているであろう作品世界。
(作品紹介)
デビュー以来、奇想天外な発想と破壊的なモチーフを用いて、人間の根源的な悪をえぐるように書いてきた吉村萬壱が満を持して放つ長篇。
B県海塚という町に住んでいる小学五年生の恭子。母親と二人で古い平屋に暮らすが、母親は神経質で隣近所の目を異常に気にする。学校では担任に、市に対する忠誠や市民の結束について徹底的にたたきこまれる。ある日亡くなった級友の通夜で、海塚市がかつて災害に見舞われた土地であると語られる――。
生れ育った町が忘れられず、人々は長い避難生活から海塚に戻ってきました。心を一つに強く結び合い、「海塚讃歌」を声を合わせて歌い、新鮮で安全な地元の魚を食べ、ずっと健康に暮らすことができる故郷―。
密かにはびこるファシズム、打ち砕かれるヒューマニズム。批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。
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「フィクションの世界は虚構なんだから毒にも薬にもならない、役に立たないものだ」と思っている人たちに突きつけてやりたくなる小説。
ヘタなルポやノンフィクション本やデモよりも人の心をえぐってくる、恐ろしい作品でした。
明らかに東日本大震災以降の日本社会を意識して書かれていますが、日々のニュースを見ていて意識の底にひっかかる違和感が、見事に小説として形になっていました。
「結び合い」、なんて気持ち悪い言葉なんでしょう。
震災以降、人々の「繋がろう」という取り組みがフィーチャーされることが多いですが、極端な次元まで行くと、本作の海塚市みたいになるんだろうな。
海塚の人たちも、この気持ち悪い世界に乗っかるしかなかったのでしょう。
「とんでもないものを読んでしまったな」というのが正直な感想です。
でも、より多くの人に、このとんでもなく気持ち悪い小説に出会って欲しい。
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ディストピアものに終始漂うきな臭さが、平易かつ淡々と描かれた子どもの視点でよりいっそう強調されている。このじわりじわりとした不穏な空気がたまらなく、イイwww
ラストの一言が印象的。
どこにも放〇能とか書いてないけど、311以降の、そしてつい最近憲法解釈の変更が行われた今の日本で物議を醸しそうな作品だ。
同じ子ども視点でファシズムを描いた、23分間の奇跡、ピカピカのぎろちょんなどを思い出した。あと、短い話なら茶色の朝。
23分間の奇蹟は中学の時くらいに世にも奇妙な物語でみて静かな衝撃だったなあ。教育と洗脳は紙一重。
私自身、メインストリームに自分が乗っかるのに抵抗を覚えるタイプだ。しかし、集団心理に流されまい、洗脳されまいとして、別の思い込みにハマってしまいがち。ゆるゆると、中庸でありたい。
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不気味な小説だった。海塚市に住む人々の話。最初は主人公の少女が異様なのかと思ったが、読んでいくと全ての登場人物が異様に見えてくる。なぜこうなった?なぜいなくなった?なぜおかしくなった?疑問符だらけなのだが、真実は見えそうで見えないまま。なのにどこかにあるようなリアル感。何とも独特な世界観だった。