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紙の本
信念が無ければ、ハンセン病制圧に人生はかけられない。
2020/04/17 20:51
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投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
令和という元号に、人々は自然災害の無い安寧を期待したことだろう。しかし、早々に、新型コロナウィルスが発生した。一九一八年(大正七)も、世界はスペイン風邪によって六億人が罹患し、二千万とも四千万ともいわれる人々が命を落としたという。振り返れば、人類は目に見えないウィルスとの戦いを繰り返してきたが、その過程で迷信、宗教、差別、偏見を生み出した。今回の新型コロナウィルスが世界を席巻する最中も、スペイン風邪と変わらぬ風評被害が発生したことは記憶に新しい。科学が発達したとはいえ、人間の本質には、なんら変化がない。
本書は、ハンセン病制圧の戦いの記録である。ハンセン病はかつて、不治の病、業の病として、罹患者は離島などに隔離された。撲滅より、隔離隠蔽したのが現実だった。今も、謝罪と賠償請求の裁判報道を目にするが、どこか遠い記憶の彼方のこととして見ていた。しかし、本書の54ページにあるように、「無理解、無関心は人を差別する歴史の一端」に加担していた事と認識させられた。加えて、本書を手にするまで、笹川良一がハンセン病制圧に強い使命感をもって取り組んでいたとは、まったく、知らなかった。当事者意識が、根本的に異なる事を知った瞬間だった。
日本人は阪神淡路大震災、中越地震、東日本大震災、熊本大分地震などを経験した。192ページに記されるように、この一連の災害で、行政サービスでは対応できない社会構造になったことを日本人は認識したはずだった。かつての社稷(共同体)を復活させればよいのだが、まだ、気づいている風は無い。しかし、その共同体意識を早くから世界に広げたのが笹川良一である。その特筆されるべきものが、ハンセン病制圧であった。
222ページの「かつての日本人がもっていた気概」を読みながら思い起こしたのは、杉山龍丸である。戦後、インドの要請に応じ、私財を投じて一万本の植林をした。砂漠を緑に変え、インドの人々の食糧自給を支援した。インドのラス・ビハリ・ボースを玄洋社の頭山満、内田良平らが庇護したが、ボースの逃走用の車を用意したのが杉山茂丸だった。その杉山茂丸の孫が杉山龍丸だ。インドでは「グリーン・ファーザー」と呼ばれる。今も、ミャンマーで和平交渉に奔走する井本勝幸、カンボジアで地雷撤去活動を進める大谷賢二、アフガニスタンで銃弾に倒れた中村哲も気概をもった日本人だが、全員が福岡県人であるのは玄洋社の影響なのだろうか。
全八章を読み通し、笹川良一、そして著者の崇高な使命に考えさせられる事々は多い。とても、同じことは自身にはできない。さすれば、気概をもった日本人として笹川良一と著者に拍手を贈りたい。
しかし、一つだけ私にできる事があるとすれば、笹川良一がハンセン病制圧に全身全霊をかけたこと、今も著者が継承していること。それを、日本と世界に伝える事だ。
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