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理想がかなうことは稀。運命には逆らえない。
それを受け入れ、それでも足掻くことで、
人は生きる望みをつないでいくことができる、
と教えられました。
それと、本のタイトルというのはとても大事だなと。
「菅原道真西遷物語」などというタイトルであれば、
決して手にとることはなかったと思います。
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当時の太宰府には興味がありますし、左遷後の道真というのは新鮮なテーマと思いました。でも、道真像に隔たりが大きく、児童文学を読んでいるようでした。彼女が選ぶテーマには惹かれますが、リアルさに欠けます。例えば、ユーモア歴史小説というジャンルを掘り下げる方向もあるのではと。
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東風吹かば……なんて、やることを見つけた道真の大宰府ライフ。
歴史にifはないけれど、スキマを埋めることはできる。それが歴史小説。「うたたね殿」と渾名されるやる気のやい大宰府の役人、ついでに入り婿である龍野保積と、親代わりの叔父と兄を追って大宰府にやってきた才色兼備の恬子(もとい、小野小町)、この二人の視点が章ごとに入れ替わり物語が進む。文章は読みやすく、また登場人物も日本史の有名どころが出てくるのでとっつきやすく、これはヒット。大宰府に流された当初はショックでひきこもっていたけど、自分の才能を活かせる道を見つけてイキイキし始める道真。ぼんやりやる気なく生きていたけど、自分のできることをしようと思い始める保積。これからの道を見つけようと歩きだす恬子。その他のキャラクターもいい。
自分の力を出せないって、とても辛いこと。高杉晋作の辞世の句(下の句は野村望東尼が付けたとも)「面白きこともなき世を面白く 住みなすものは心なりけり」もそうだけど、自分の力を出して生きていける場所っていうのが必要だよね、それだから人生面白くなるんだよね。
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政争に敗れて大宰府に流された菅原道真を、迎える大宰府の役人側から見た軽めの(を装った)古代歴史小説です。やっぱり瞳子さんは古代中世が本領ですよね。隠れ(?)テーマは地域格差みたいな感じで、都とそれ以外の都市の絶対的な格差を、都の人間は実は全然分かっていない。という、今も昔も変わらない苛立ちを含む。
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学問の神様・菅原道真、名前は有名だけれど、文学作品で語られる事はあまりないような気がする。
そんな道真に血肉を与えたような作品でした。
博多津のにぎわいが、作品が平安時代の設定と知っていても、半島に近いせいの異国情緒が、奈良以前も彷彿とさせて…
歴史小説好きにはたまらない。
さりげなく小野の小町さんも登場したり(206ページにしてやっと気づく)、道真が雷神と結び付けられるエピソードもあり。
歴史の行間を興味深く埋めてくれる。
まだちょっと荒削りな感もあるのですが、戦国幕末江戸時代に関しては書き手も多いこの頃、平安以前は手薄な分野になってしまった。
個人的に期待したい作家です。
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夢破れた天上人の敗者復活戦。道真の復讐と
いっても、驚くほどの事ではない。けれど、史料に照らし時代を蘇えらせるのが、うまい。寒早十首の話が印象深い。
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鬱蒼と木々が生い茂る森の中を歩くのが好きだ。
樹木、野の花、小鳥、小川、湧き水、風、木漏れ日…
どこまでも変わらない景色。
でも、好き。
特に何か面白い事が起こるわけではない。
でも、どこまでも歩ける。
稀に
腰を降ろすのには丁度良い石の上に
誰かが座っている事がある。
彼らと触れ合う事はないけれど
幸運にも眼が合えば、
その口元は静かに開き、語りかけてくれる時もある。
森を歩いていると
時々そんな光る人と出会う。
澤田瞳子さんという方の
『若沖』という本が面白そうなので読んでみたいなぁと、思った。
すでに予約がいっぱいだったので
初読となる著者の本を適当に一冊借りて、
読んだこの本の中に<光る人>はいた。
なんかもう胸がいっぱい…
『若沖』はきっといい本だろうな、と確信した。
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菅原道真の太宰府での生活を想像して書かれた小説。道真が失意の底から元気を取り戻していく様子がおかしかった。
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澤田瞳子さん、はじめましての作家さん。
ふだん歴史小説はあまり読まないのですが、
和歌好きなのと、
この『泣くな道真』という響きが良くて読んでみました。
一番印象に残ったのは、道真公と僧侶、泰成の場面。
行き倒れの老人の枕元に掛けられた如来画…。
それを見て、仏様の画の本来置かれるべき場所を知る。
そして、”何とかという貴族”が詠んだ詩として、
道真作の「寒早十首」を批判され、自分の都での生き方を悔いる。
”日本史上、最も有名な左遷された男”
言われてみればそうですね。
右大臣にまで出世しながら左遷され、
憤死の後、怨霊にまでされ、
果ては神様だもの。
でも、その大宰府での日々が
悲嘆にくれるばかりでもなかったとしたら…?
欲を言えばユーモア小説として、
もっと道真公にはじけてほしかった気もしますが、
楽しく読めました。
著者の他の作品も読んでみたくなりました。
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確かに情けない道真ではあるけど、このタイトルはどうかなあ。骨董書画の目利きとか結構お役立ちだし。
更に、小野小町が太宰府に居た、それも道真が左遷されて来たときに、ってのはちょっとやり過ぎかと。
とは言うものの、庶民の現実を突きつけられて、自分の来し方を振り返って真摯に悩む場面は良かったな。
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道真、へんくつじじいでかわいい。こういうのもありかも。
東風吹かば…の歌が好きなので大宰府行ってみたいなぁ。
そして小町か!ってとこに気づいてなかったのが悔しい。
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「美しいもの」の役目とは。
置かれた場所で生き続ける。不条理でしんどくても。汚泥を啜って地を這い回ってでも。
夏の雷雨は轟いて、その後晴れる。
天満様にお参りしたくなった。行きたいところが増えるなあ。
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伯父と甥の立ち位置が変わる(伯父を守ろうとしていた葛根自身の変化でもある)ところが凄いと思った。ボーッと立っているだけと思われた門衛が、意外な働きをしていたり、「人は見かけによらない」が沢山あった。
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菅原道真大宰府権帥へ左遷の時から物語は始まる
主人公は下流貴族の穂積
うたたね殿の異名がある怠け者だが、息子がソコ
ソコ頑張ってるので顔をつぶさないように特命の
任務をこなす
左遷元右大臣道真のお相手の筈が、無断外出する
道真の不在を隠ぺいするハメに
楽しくコメディ風に大宰府を過すうちに、小野小
町まで事件を起こし、最後はまさかの隠ぺい工作
を菅原道真みずから行う
楽しく読める割りには、しっかりと時代背景が書
きこまれている
デビュー作も論文を読み続け、気にかかる単語を
軸に物語を史料に基づいて書くというから永井路
子クラスのとんでもない作家さんのようだ
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初めての作家。文庫書き下ろしではあるが、ラノベに近い時代小説が多い中で、しっかり時代考証をしていて好感を持った。ただ、キャラは現代によせている。そのせいか、十分エンタメ小説になっていた。買ったのは、ナツイチのブックバンドが欲しかったタメ。
菅原道真が左遷された太宰府での赴任先半年の日々がテーマ。 「半沢直樹」ではないけど、まるで社会人小説のように「左遷からどう立ち直るか」がテーマ。
思うに、奈良・平安時代は、まだまだ小説化されていない時代・人物・地域の宝庫だろう。さすれば、10世紀初頭失意のうちに太宰府で歿(なくな)ったと云われる道真を、実はそうではなく、その才能を活かして、密かに政敵の藤原時平に倍返しまでは行かずとも意趣返しをしていた、と作り替える本書は、充分に「スカッと」する平安時代版「半沢直樹」だろう。
江戸時代の東京はたかだか400-150年前の舞台に過ぎない。千年の都・京都も長いかもしれないが、実は福岡は更に1700年前から都だった。ということは、あまり知られていない。実は博多津の発掘が次々となされて、更には周辺地域の遺跡がどんどん掘られて、当然莫大な量の遺物が出てきて、最近になってやっと分かりかけてきていることが多い。澤田瞳子はよく読み込んでいると思う。博多津や太宰府東北の水城の景観などをよく説明している。私の興味はあくまでも弥生時代ではあるが、発掘成果を小説に反映させるという視点では、面白い。
小野恬子(てんこ)という名前が出てきた時点で、あの有名歌人と思い出さないのは、私の不徳の致すところ。彼女の出没地域は全国に及んでいて、岡山県総社市には墓まである。生涯は不明である。太宰府にいたとしても、全然不思議じゃなかった。
あと一作は、読んでみたい。