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タイトルどおり「境界とはなにか」についての現象学。
前半第1部は人、後半は環境における境界についてと大きく分けているのだけど、思ったほどその違いに対して構えて読む必要はないかと思う。たのしめたのは前半第1部「見つめられることの現象学」と「痛むこと、癒されること」の章。
「見つめられることの現象学」はベラスケス『宮廷の侍女たち』などを題材に「見るもの」と「見られるもの」の関係について。とくに見られることと存在すること、見られることがなぜ能動的なのか、それらの視線と主観・客観の問題についての論文。『宮廷の侍女たち』とデカルトの関係についてもすこしあってたのしめる。
「痛むこと、癒されること」
身体には原因のない(いわゆる)心因性の疼痛の「痛み」の原因について。この痛みは、世界との関わり方と変化への拒否の問題であり、その局所的な痛みは「個人全体の存在への危機の表明」で、結果「世界から引きこもらせ」て「人生を停滞させる」ための痛み、というあたりがなかなかいい感じに思えた。
そもそも痛みになぜ「原因」というものが必要なのか、その原因は「内面」にあるのかどうか、とかちょとだけ触れているあたりの「前提」についていろいろ考えが広がっていくので読んでいてとにかくおもしろい。