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「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」の提出資料で話題になった、冨山氏の書籍。あのおもしろ資料の前提となるGとLのお話。
簡単に言ってしまえば、日本経済を支えるのは労働集約的でスケールしない内需型産業なんだから、その産業特性に合わせた施策を打っていきましょう。というごくごくスタンダードかつ穏当な内容で、それ自体では目新しくはない。
では本書の特徴的なところは何かといえば、やはりG(Global)とL(Local)という補助線を引いたこと。この補助線を引いてあげることで、グローバル戦う産業と地域密着の産業との議論の切り分けができ、見通しがぐっと良くなる。このあたりの整理はさすが。
……はずなのだが、このGとLという補助線こそが本書最大のくせものでもある。
このGとL、一見とてもわかりやすいのだが、実際よく読んでみると幾つかの概念がごっちゃになってるのが見て取れる。知識集約的でスケールする産業と労働集約的でスケールしない産業という産業特性での区分で議論を進めているかと思えば、地方の経済と都市部の経済という地理的区分で議論していたり。確かにそれぞれの概念は相互に重なり合い密接に関係しているものの、必ずしも同一ではないし、それらの問題が同根であるとするには議論があまりに不足している。それにも関わらず、複数の概念が入り乱れとっちらかって、それらがまるっとGとLという用語でくくられている。
だから、GとLの議論をしていることは一貫しているが、その内実からは一貫性が失われている。初めは産業特性の議論だったのに、後半にいくに従ってどんどん地理的な議論、地方をどうするかという議論に横滑りしていく。そうかと思えば、また産業特性の議論に逆戻りする。GとLできれいに整理されているように見えて、実はかなり混乱している。
その混乱の結果として、提示される処方箋も、個々の企業の戦略から、地域単位の対応、国家レベルの施策までが混在する形となり、それらは相互に相容れない帰結さえも生みうる。個々の企業にとって望ましい戦略が経済全体にとって望ましいとは限らないしその逆もまた然り。
おそらく、著者自身あまり整理ができていない。もしかすると有識者会議の前に出すのを急いだという事情があるのかもしれない。初歩的な誤字や誤りが散見されるあたりも、十分な時間をかけて書かれたものでないことをうかがわせる。
さらに、より大きな問題として、こうしたとっちらかりが読み手にも多大な影響を与えてしまう。定義としてはとっちらかって曖昧であるにも関わらず、一見して明快でキャッチーな二分法であるがゆえ、読み手は各自が各自なりのGとLとを読み取ってしまう。これよって、読み手の数だけ「ぼくのかんがえたさいきょうののGとL」が出現し、議論のとっちらかりが助長される。本来、見通しが良くなるはずの補助線が、かえって混乱を助長している。
そんなわけで、本書に問題の整理や適切な処方箋を期待することはできない。とはいえ、だからと言って本書がまったく無意味というわけでもない。本書の限界を理解したうえでなら、議論を誘発し出発点とする役割を果たすことはで��る。審議会のおもしろ資料だって、そのためのものだとすれば納得感ある(本気で提言してたらまじやばい)。こうした議論を喚起する機能にこそ、本書の意義であると思う。
でも、何度も言うけど大型特殊二種免許だけは絶対におかしいからね!
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冨山さん、同感です。企業はグローバル(Gモード)と、ローカル(Lモード)を明確に分けるべき。グローバルに出て行くと、中国や韓国と競争して、トップ3しか生き残れない。スマホや半導体は典型的なGモード事業。ローカルで利益がでていれば、グローバルに出て行かないほうがいいし、無理にGに打って出ても、成功したためしはない。競争環境が違いすぎるのです。
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グローバル競争のGの世界とローカルだけの競争で密度の経済性が働きやすいLの世界は全く違う経済特性に動かされ、それぞれに処方箋が異なるという切り口から論旨を展開。
GからLへのトリクルダウン(富の波及効果のようなもの)は極めて限定的であるため、1社あたりの企業規模が大きく目立ちやすいGだけではなく、企業数、従業員数、GDP等においてマジョリティーを占め、中小企業を中心としたLを回復させることが日本経済には必要という主張はシンプルかつ力強く、一貫性もあるので納得感が高い。著者の述べるように、Lの回復のためには労働生産性の低いL企業には退出していただくための制度設計が重要かつ最も困難が伴う点に合意。
全体を通してある程度の経済的知識を前提としていて、かつ文章表現に上から目線を感じてしまったのが残念。
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経済圏をグローバルとローカルの二つに分けて、それぞれは、全く異なる経済生態系である、という発想は非常に分かり易く、現在の経済環境がうまく説明できる。それぞれの経済圏の特性が異なる以上、それぞれ独立に評価し経済振興策を打つべしという説明は納得できる。
特に、ローカル経済圏への対策は、従来経済政策として考えられている内容とは、ほぼ逆の政策が必要になるという指摘は重要である。
ローカル経済圏の中小企業対策に対して、貴重な示唆を得ることが出来た。
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机上でものごとを考える経済学者の処方箋では、日本も日本人も幸せになれない。
東京大学法学部を卒業し、司法試験にも受かりながら、アメリカのコンサルティング会社の就職した後、若くして会社を立ち上げ、産業再生現場で辣腕を振るった筆者だからの発想が綴られた著作である。
アベノミクスで経済が活性化し、人手が足らなくなったというのは、従来の経済学の思考だ。
高齢化し疲弊する地方での人手不足は、アベノミクスとの関連はない。
グローバル企業、ローカル企業と両者の立て直しに知見を有する筆者の処方箋、読めば読むほど納得だ。
産業再生時に知り合った優秀な経済官僚との会話から双発された考え方。
30歳前半の息子に読ますため、Amazonでコンビニに送ってやりました(笑)。
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http://www.amazon.co.jp/review/R2YHD2VUOXX24R/ref=cm_cr_rdp_perm
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経済がグローバル=G/ローカル=Lに分かれていて、L向けの経済対策が足りないというのは鋭い指摘ですが、タイトルの蘇る具体策が見えないのと地方消滅論に賛意を示す方向性には違和感。
それにしても、水野和夫さんといい地方政治の位置づけがまったく見えないのは、それだけ無力なのか不要なのかとがっかりしてしまいます。
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白木さんに勧められた本2。
グローバルとローカルの違う原理で動いている社会について、一元的な経済政策では難しいと理解出来た。
新聞等でも日本の経常収支において円安による輸出が鈍化しているとあり、所得収支が増加しているとあった。
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グローバルとローカルを分ける考えに賛成。
政策も2つに分けて行う方が良いと思う。
ローカルの代謝は必要だと思うが、他人から見ると何でこんな会社をやっているのかと思う会社も、それぞれの考えや思いがあって続けているのだろうし、何でこんな不便な場所に住んでいるんだろうと思える人も同じだろうから、合理的に考える以外の方法で、上手く代謝させる方法はどんなやり方があるのか考えている。
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日本の経済圏はGとLという2つのことなる枠組みで捉えられる。
Gは大企業が中心。GDPは30%〜40%。知識集約型。高賃金な人材。モノ・情報であり持ち運び可能。生産拠点の立地選択不要。貿易収支の稼ぎ頭であり、トップレベルの競争力の実現・維持が必要。製薬・IT,電機。
Lは中堅・中小。60〜70%。コト(イベント)・サービスを中心。不完全競争。その場で消費。労働力不足が変化。経済収支は赤字のため、生産性向上が重要。交通・飲食・福祉サービス。
Gはビジネスのオリンピックをめざし、世界トップを目指すべき。人的・物的資本効率性の上昇をめざし、ROEで10%程度を保つ。Lは新陳代謝の同時促進、安定雇用と賃金の上昇をめざすべき。GがもうかってもLには関係がないのでトリクルダウンはおこならない。穏やかな退出による集約化が重要である。そのさい必要なのは賢い規制緩和スマートレギュレーションである。退出のきーは地方金融のデットガバナンスで集約化をすすめ、労働生産性を高めるべき。Lの世界では子供や老人が多くなるので何らかの使命感・矜持が必要。矜持をもち、使命感をもって安定した収入に自分なりの幸福感があればLの世界のゴールになる。
GとLの選択を自由にできる社会をこれからは追求すべき。
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斜め読み。
県大会一位を目指すか、世界チャンピオンを目指すか。
別にどっちでもいいけど、闘うフィールドを分けたらいいというのは、確かに納得。
地方経済圏は集約化がポイント。
生産性低く、質が悪くても生き残れる現状。
集約し、生産性を上げる。
キーワードはコンパクトシティ化。
工場誘致ではなく、生活圏の集約化。
高齢化社会で、車を使えない人たちが徒歩で暮らせる社会。←これイイね!
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・同質的な集団は、必ず意思決定能力が低下する。その場の「空気」でものが決まるから。ムラの空気の調和を保つためには、絶対に勝てないとわかっていても戦いを始めてしまう。
・社外取締役の導入義務化は、事実上どの国も実施している。
・多くのグローバル企業は、内輪で意思決定を行う「ムラ社会型」の経営から休息に脱却しつつある
・女性役員と合わせ、多くの企業がダイバーシティを持ったコーポレートガバナンスが必要不可欠であると気づき始めている。
・ダイバーシティが欠けると、本質的に大事な意思決定を間違えたり、先送りしてしまったりすることがある。自頭が悪い、知識がある、知識がないという事で意思決定を間違える企業はほとんどない。
・経営者が個人連帯保証を入れている場合は、自己破産する事が債務免除の条件になってしまう信用保証協会融資が入ってる企業の再生処理は、取り組みそのものを半ば諦めなければならなかった。
・産業別・規模別の労働生産性比較
中央値で見ると、商業・サービス業のほうが製造業よりも労働生産性がやや低い。また、労働生産性の格差は、大規模事業者よりも小規模事業者の方が、また製造業よりも商業・サービス業の方が、顕著に大きい
・財務省「平成23年度法人企業統計年報」
1.労働生産性=付加価値額/従業員数
2.付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益
3.従業員数=役員数+従業員数
4.倍率=上位10%の労働生産性/下位10%の労働生産性
・世界各国と比較したわが国の生産性の状況
わが国は、生産性が高い部門の経済全体に占める割合は低く、生産性が低い部門の割合は高い
通商白書2013
・資金調達における保証利用動向
抽象企業庁「財政制度等審議会財政投融資分科会参考資料」
・人口減少問題研究会
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どこもかしこも、グローバル、グローバルと言ってるけど、日本の産業の7割は非グローバル、つまりローカル密着型の産業であると。日本経済の成長戦略を描くにも、グローバルとローカルを一緒くたに考えてはうまくいくはずがないというのには、確かに目から鱗でした。
私の仕事は、グローバルに属します。でも、売る相手が海外ユーザーだとしても、その先の用途・ユーザーがローカルなのかグローバルなのか、ということも念頭に置いて仕事をすべきだなと本書を読んで感じました。
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グローバルとローカルそれぞれに最適な戦略がある。一部のグローバルエリートを除き、ローカルに身をおく人が多数を占める中で、ローカル経済のこれからの処方箋を提案している。キーとなるのは、集約と労働生産性向上。この先地方へ戻る私は、地方の将来について漠然とした不安を抱え続けているが、地方のこれからについてひとつの方向性を示してくれている。
これから供給不足が常態となるであろう日本は、リスクをとってチャレンジするには良い環境になるかもしれない。
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オリンピックチャンピオン目指して頑張るGの世界、足を引っ張らずに稼いでもらう仕組みを。8割のローカル密着中小企業の世界、穏やかな退出を可能にして、集約化を進め、労働生産性を上げ、公益意識を持って運営されるようにすべし。
『里山資本主義』を読んで残った違和感をすっきりと解消してくれた感じです。これでようやく明るい未来が見えてきたような。