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やっぱり好きだなあ、と思う。少し胸がキリキリ痛むくらいが、ちょうどいい。ことばにならないようなキリキリすることを、やさしく、ことばにしてくれる。
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川上弘美さんの作品は不思議な魅力。
少ない文字数で淡々と描いているからさらっと引っかかり無く読み進めていると、なぜだか突然鼻がツンとしたりする。泣き出すまではいかないんだけど、心地よい寂しさを感じて涙ぐみたくなる感じ。
歳の離れた親戚のハルとの恋のはじまりを描いた「金と銀」、45歳の真琴と11歳下の恋人涼、真琴の息子である真幸の3人が醸し出す雰囲気が気だるい「天頂より少し下って」の2編が好き。どちらもとてもファンタジーだ。でも気持ちの運びがリアルでドキリとさせる。真琴は自由奔放で、寂しい女だね。
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久しぶりの川上弘美。とても彼女らしい短編が並んでいて、世界に浸れた。
なんと言えばいいのか…彼女の描く女たちが披瀝する感性の海は…どこかうなずけるようで、しかしどこかが人並みの世界観からは、ずれている。
波形のずれが微妙にひっかかって耳に残る、チューニングミスのような…風合いが何とも言えず、いい。
「金と銀」は「センセイの鞄」を思い起こさせてくれた。お尻がむずむずするようなもどかしさと、浅く張ったぬるま湯に仰向けになって半ばゆらゆら浮かんでいるような居心地の良さ…抜け出したくなくなるようなけだるい眠気の中にいる感覚は、川上弘美の文章からしか得られないと、私は思う。
そうして、いつも読後は妙に切ないのである。
こんな本が、一冊だけ書棚に並んでいることは、大変よいと思う。
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生きるってことは何かと厄介で、矛盾だらけで、面倒で、一筋縄ではいかないもの。この短編集に出てくる人たちにも悩みがあり、もがき苦しみながら日々の暮らしをいとなんでいるはず。なのに、著者独特の、綿雲のようにふんわりとした、やわらかい文体のせいで、読んでいて深刻になるどころか、ほっこり和んだ気分になってしまいます。突き詰めれば人は誰しも、得体のしれない不安を抱え、寄りすがるものさえ持たず、言い知れぬ孤独感と、何となく折り合いをつけながら生きているのではないでしょうか?でも、川上弘美さんの文章には、まぁいっかぁ・・・なんて思わせてくれる不思議な魅力がありますよネッ。
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短編集です
タイトルにもなった、『天頂より少し下って』はもっと先を読みたい一篇でした
女性の複雑に動く心と現実との板挟み感に
自分もきっと同じように揺れるだろうなと思える空気感のあるお話
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著者の作品を読むといつも、気温が3℃ぐらいひんやり下がるような気持ちになる。現実には起こらなさそうな、でも読んでいて全く不思議な感じがせず、妙に現実感のある話。
子供が産まれたせいか、「夜のドライブ」が一番印象的だった。いつか、娘の運転で遠出するような機会があるかな、と想像した。
(2014.8)
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14/08/10読了
恋愛短編小説七篇。とのことだが、全部恋愛モチーフだったのかな? 半数は違ったかと思うけれど、私の読み方なのか。。
金と銀(はとこの治樹との話)、壁を登る(母綾子さんが連れてくる妙なもの、そして異母弟との生活)、夜のドライブ(母とのドライブ)がよかった。
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表題作を読み始めたとき、そのタイトルの意味するところがじんわりと、
まるで少し微温みはじめたプールの水のように、体の輪郭線をこえて沁み込んでくる気がしました。
恋愛の初期にある有頂天は終わって、過去が背中を押しもし、後ろ髪を引きもする。
絶頂ではないけれど、かと言って底辺でもない場所。
これからまた上に行くのか、それとも下に行くのか。
それはきっと、私次第だ。
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川上さんの紡ぐ言葉は、恋愛は、なんでこんなに魅力的なのか。飛び抜けて奇抜な設定や、お洒落に着飾っている感じはしないのに。
なんてことない動作や言葉がなんとなく甘くて特別なシーンのように記憶に残るし、恋も、人も、少しだらしなくってもなぜか誠実で、ぱりっと清潔なかんじ。ここに収録された短編では、人と人との距離感もとても好きかも。くっつきすぎない、冷たすぎない、言葉や身体の距離。
女の子同士のべたべたしない気軽な関係も好きだし、(「一実ちゃんのこと」「エイコちゃんのしっぽ」)母と子どもの、距離をとりつつあったかい感じも好き。(「夜のドライブ」「天頂より少し下って」)いちばん好きなのは「金と銀」で、気持ちの変化に気づいても一気に距離を詰めることのないふたり。
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7つの短編集。『夜のドライブ』は情景がスッと浮かんでくるシチュエーション。いつか私も連れて行ってあげたい。
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最初の二篇を読んで、
少し間を置いて、読み終えました
ちょっと入りにくかったというか
感情がついていけなかった
というのが正直な気持ち
でも、昨日、今日と読んでいると
少し変わっている人たちの
素直すぎる感情が
スルスルと心の中に入ってきて
あっという間に読み終えてしまった
こういうのを川上マジックというのかな
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最後の、タイトルにある短編が一番好きかな。
真琴の恋愛観が、45歳なのに、22くらいの女学生ぽいのが好印象。
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つい、そのなんらかの関係の結びの言葉を待ってしまう。けれど、どんな人も結果ではなくて過程を生きているものなんですよね。
そんなことを思うお話たち。
恋をするのはおそろしい。でも素敵でもある。
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ちょっと風変わりな人たちの恋愛を描いた短編集。風変りで、どこか淡々としていてでもクールな雰囲気が、川上弘美さんらしい気がしました。読みやすかったです。
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ひさびさの川上弘美だけど、
肌に馴染むこの心地良さの正体は何だろう。
散りばめられたユーモアと切なさが溶け込んだ文体。
彼女にしか書けないオリジナリティ溢れるストーリー。
淫らで艶やかなものを品性を損なわずに読者に伝える筆力。
一発のインパクトは少なめだけど
何度となく読み返すうちに
じわじわ沁みてくる中毒性。
川上弘美が描く
恋愛がもたらす輝きと孤独感、
その先にある暗闇は、
読む者を幼い子供に戻し、世界をまっさらに塗り変えていく。
風呂が短くおでん屋が好きな
なげやり派でクローン人間の一実(かずみ)。
自分のアイデンティティに悩む一実は「何かすごいことをやってやる」という口癖を実行すべく、
クローン牛を飼育所から逃がすが…
『一実ちゃんのこと』、
詩を書くことが趣味の17歳の少女、ハナのエキセントリックな恋の行方を描いた切なさいっぱいの話。
ノラ猫に餌を与えにくる猫当番、いつも煙草を逆さまにくわえた憧れの人、飄々とした喫茶店のマスター、侠気(おとこぎ)溢れるハナの母など登場人物がみな魅力的で引き込まれた
『ユモレスク』、
5歳の暎子(えいこ)と16歳の治樹(はるき)が初めて出会ったのは斎場だった…。
二人がお互いの思いに気付くまでの20年を
密やかな官能で描いた
『金と銀』、
尾てい骨からしっぽの生えた不思議なエイコちゃんと
主人公まどかの女の友情物語
『エイコちゃんのしっぽ』、
ノラ猫を拾ってくるかのように
ワケありの人を次から次へと家に住まわせるシングルマザーの綾子さんと一人娘のまゆの不思議な日常を描いた
『壁を登る』、
同居を望む娘と頑なに拒む年老いた母の
一夜のドライブを詩情豊かに描いた
『夜のドライブ』、
靴屋で出会った年下の恋人、涼(りょう)との甘やかで切ない日々を
45歳のシングルマザー、真琴(まこと)の妄想と共に描いた味わい深い表題作
『天頂より少し下って』
などなど、
恋や孤独感に悩む(自覚してない人も含む)女性たちを描いた七つの短編が収められています。
川上弘美の小説には
見た目は普通だけど考え方がズレてたり、行動が突飛だったり
どこか変わった人たちがよく出てくる。
この短編でも
姉のお尻の細胞から生まれたクローン人間の一実ちゃん、
恋人のいる男の気を惹くため
淫靡で淫らな詩をせっせと書きためる女子高生詩人、
尾てい骨から短い尻尾の生えたエイコちゃん、
食べ物を他人とシェアできない男、
デパートの食品売り場で1日過ごすおじいさん、
ロープも何も使わずに家の外壁をどんどん登ってゆく、「壁登り」が趣味の男など
みんな変なんだけど、これが一様に憎めない(笑)
愛らしさを持ってるんです。
他にも、恋に落ちた女性の
埒もないグルグル思考の描写がなんとも愛しいし(笑)、
(でもコレは恋に落ちたら男女問わずですよね)
ラブホテル帰りのいつも��違うシャンプーの匂いに
不思議な寂しさを感じる主人公の描写も上手いなぁ~と唸ったし、
恋を始める時の
あの違和感と不安感と安心感が混じりあった感覚を
その夏初めてのプールにつかる時の水の感触に例えたり、
思わず膝を打つ比喩の巧みさにも脱帽です。
何度恋を重ねても
最初にその恋愛に飛び込んでゆくときのためらいだけは解消されない。
人は誰も恋の予感に身悶え打ち震えながら
届きそうで届かない不確かなものに手を伸ばし続ける。
そんな恋のためらいやもどかしさを
ぎゅっと凝縮したような作品です。
サクッと読めて
世界観に浸りたい人にオススメします。