投稿元:
レビューを見る
読書は書物が移動して読者にたどりつくプロセスと、その書物を読者が理解するプロセスによって成立しているが、読む場所はこのたどりつくプロセスの末端、書物と読者がつながる重要な地点。
人文科学の研究領域では最新の研究成果のみが重要なのではなく、むしろ過去に明らかになった事例の蓄積こそが重要であり、古い論文の利用価値が高い。それをカバーするためには莫大な過去の論文の電子化が必要。
投稿元:
レビューを見る
2014 8/18パワー・ブラウジング。
出ると耳にしたときから読みたいと思っていた、和田先生の本。やっと読めた。
読書の歴史を如何に研究するか、そのさわりを色んな角度から紹介していく。
読書を「読者が書物を理解するプロセス」と、「書物が読者にたどりつくまでのプロセス」分けて考える、従来は専ら前者の理解のプロセスに注目するものが多かったが、本書は後者に分量を多く割いているのが面白いところ。
○2章は理解のプロセスを如何に研究するかの話
○3章・読書の場所の歴史学
・読書の場・・・たどりつくプロセスの末端であり理解のプロセスに影響するもの
・鉄道
・監獄、軍隊・・・
・利用の不自由な場での読書の歴史を追う意義
・図書館
・読書を制限し、方向づける場としての図書館
・「図書館史を評価したいのは、それが読書の歴史、すなわち読者への書物の流れがいかに形成され、あるいは制限されてきたかを教えてくれるからである。あるいは、こうした読者への書物の流れという観点から、これまでの図書館史研究の成果を今一度とらえなおし、整理していくことも可能だろう」(p.72)
・「図書館が集めていない、保存していない空白が蔵書に必ず生じること、そしてその空白への意識的なまなざしを作り出していくこともまた、図書館の重要な役割として考えておく必要があろう」(p.74)
・移民地の読書
○4章・書物と読者をつなぐもの
・書物の仲介者・・・米国⇔日本の書物の行き交いを仲介した人物らの話
・角田柳作、チャールズ・E・タトル
○5章・書物と読者をつなぐもの
・書物の販売・流通史
・委託制度(返品可能な制度)の成立にかかる話のあたりは授業でフォローしきれていなかったので取り入れたい
・さらに引用元には小田光雄さんとかも
・『キングの時代』より:出版統制によって効率的な流通システムができあがった戦時統制下は出版の好況期だった
・教科書の話
○6章・書物の流れをさえぎる
・検閲の話
・検閲だけが書物の流れをさえぎるものではない
・検閲されて読者にたどりつけなかった書物は、その後いずれかの時点でたどりつけたのか?
・戦前・戦中(内務省)、戦後(GHQ)の検閲と検閲された本がどこにいったか
・教科書検定
○7章・書物の来歴
・書物の移動・来歴
・その調べ方
・書物そのものから・・・蔵書印等
・寄贈情報等、機関の資料や個人の記録・回想録
・失われる書物・・・マンガの所蔵/明治大学関係に触れている
○8章・電子メディアと読書
・CiNiiを使って近代文学研究(「赤い鳥」関係)の論文を集めようとして、電子化されているものに絞り込んだ結果、まともな論文を読まなかった学生の挿話
・おお、これこの先、日本の人社系論文が電子化されていないことの問題に触れる際に引用しよう
・インタフェースの問題への指摘・・・「電子化されている/されていない」で絞込ができることが、それが重要なことというメッセージにな��ている
○9章・読書と教育
・国語科教育と読書
・アーカイブズ教育
・メディア・リテラシー
○10章・文学研究と読書
○おわりに
投稿元:
レビューを見る
読書を、書物が時空間を移動して読者に「たどりつくプロセス」と、読者がそれを読み、「理解するプロセス」に分けて考える。それぞれのプロセスをさらに細分化し、書物と読者とを結ぶ「あいだ」にいかなる人や組織の活動が存在するのか、またその読書には、どんな不自由さが生じているのかを捉える。
投稿元:
レビューを見る
所在: 展示架
請求番号: 019/W12
資料ID: 11401631
選書担当: H. A.
普段から読書をしている人もしていない人も、「読書する」ということがどのようなことであるのかと問う人は少ないのではないか。本書は、「読書」という行為について考える、数少ない本のうちの一つである。本書では、読書という行為を、「本の内容を理解するプロセス」と「その本が読者の元までにたどりつくプロセス」という二つの視点から分析する。また、その二つの視点から読書の歴史を紐解くことによって、私たちが普段行っている「読書」という行為を、見つめ直す機会を与える。