紙の本
14世紀に著され、ヨーロッパの文学・美術に多大な影響を与えたダンテの名著です!
2020/02/29 15:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、14世紀にイタリアの詩人ダンテによって著された叙事詩集です。「神曲」という名前ぐらいは誰もが耳にしたことはあるかと思いますが、その内容までは知らない方がほとんどではないでしょうか。実は、この叙事詩集は100の詩から構成されており、当時のヨーロッパ文学や美術に大きな影響を与えたと言われています。また、キルスト教の代行文学とも呼ばれ、世界中の人々に読まれてきました。同書は、「天国編」、「地獄篇」、「煉獄篇」の3冊からなり、同書「煉獄篇」は、ダンテが地獄を離れ到達したのは、地上での七つの大罪を贖う場(煉獄)で、彼はここで身を浄め、自らを高めていくという詩が収録されてます。
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『地獄篇』は難しいなりにおもしろくも読めたのだけれど、この『煉獄篇』にかんしてはどうも最後まで馴染めなかった。その理由として、そもそも「煉獄」というもののわかりにくさが挙げられると思う。「地獄」や「天国」は学術的にはともかく、一般的な概念としては小学生でも知っているし、キリスト教ではなく仏教の世界にもあるなど、日本にとっては非常に馴染み深い。しかし、煉獄についてはどうか。まず、名称じたいがあまり人口に膾炙していないし、その内容もよくわからない。われわれの根っこにある智識の量にそもそも差があるため、当然理解についても差が出てしまうのである。もちろん、いちおう作中ではちゃんと解説というか言及があって、それを読めばある程度わかる構成にはなっているが、べつに「煉獄」という概念はダンテがオリジナルに創り出したわけでもない。当時キリスト教信者のあいだであたりまえのように共有されていた事柄を、そこまで懇切叮嚀に説明する必要もダンテには本来ないわけであって、その点からも読者にとってはこの『煉獄篇』の理解をいっそう難しいものにしてしまう。だから、『地獄篇』と同様に、つぎつぎと死者が登場してはその罪状などを告白してゆくのだが、なぜ地獄ではなく煉獄なのであろうという疑問はつねに頭のなかに浮かび続ける。誰しもがまったくの清廉潔白のまま命を落とすということはないわけであり、またいっぽうで、どんなに罪深い犯罪者であっても、多少は反省をする。天国や地獄のわかりやすさと比べて、いったいどこまでが煉獄であってどこまでが煉獄ではないのか。こういった点は、すくなくともたんに『煉獄篇』を読むだけではじゅうぶんに摑めなかった。作品としてレヴェルが高いことはたしかであろうが、このように理解が及ばない部分が多くあり、作品を満足に堪能できなかったことは残念であった。
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烏兎の庭 第六部 5.27.18
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