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西村賢太さんの「47歳にして初めての長編」である。期待にたがわず僕の大好物な内容。
西村賢太さんの私小説を読むと、どんなにダメでもどんなに孤独でも生きていける、だからもっとダメになってもいいのだ、という気になぜかなってしまう。
相変わらず、独特の言い回しが絶妙に配置された文章には魅せられてしまい、至極ゆっくり、味わうように読んでしまう。そしてこの小説の終わりを迎えたくないという気にさせられてしまう。
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個人的には少し食傷気味になっていたのと、初の長編ということで、あまり期待せずに購入。
ところがところが、面白いのなんの。一気に読んでしまった。
貫太にもこれほど暖かな時期があったとは。嬉しいと思いつつも、結局はこれも壊れて、いや貫太自身がまた壊してしまうんだろうな、と緊張しながら読み進めた。
終盤一気に来たなぁ。しかも、実は一気にではなく、随分前に崩壊していて、貫太自身が知らないだけだったとは…自業自得とはいえ、シリーズ全部読み、貫太に肩入れしている私には非常に堪えた…
この作品は、初めてこのシリーズ読む人には面白みが伝わりづらいかもしれない。何作か読んで、好きになれた人が読むとたまらないのではないだろうか。
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作者最初の長篇作品。
この人の作品の一番の魅力は、作品の終結部における主人公の周囲に向けたdisりっぷりの見事さにあると思うんだが、今回もそこが一番楽しめた。
ただ、そこへと至る過程の組み立てが、これまでの短編とこの長篇の間に違いがあるわけではないので、途中途中でややダレるところがあった(ブッキッシュな記述と田中秀光の古書と出会う場面は、さすがではあったけど)。私小説家だけに、短編の書き手なんだろうな。
ちなみに舞台は横浜です。「横浜だのハマっ子だのなんてのは、ありゃ中区の全域と、あとは西区と南区の一部でのみしか云々する資格のないことだろう?その地域以外はこの辺も含めて、ただの、どうしようもねえ片田舎じゃねえか。馬鹿か!」この主人公の言葉にすげえ笑った。
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社会人なぞとは呼べぬ極めて不様自堕落なその日暮らしから一念発起。大きく逸脱した人生レールに軌道を戻すべく新しい一歩を踏み出す貫太。癇癪をしぶとく抑え耐える。まぐろの缶詰、カレーパン3個、即席ラーメン、しめて340円の晩酌の肴と晩飯を楽しみに一週間を乗り切る。週6日きっちり働いて1回だけ小豪遊。向後も決して頓挫する憂いのない新生活に有頂天にもなる。職場のチームワークの構築を成す一員として認められバリバリ働いている。小さな波乱はあるが挫けた心は小説が強固な添え木となって支え決して乱れることはない。今回の貫太は自分の分身としてどっぷり感情移入できた。久しく射すこともなかった明るく温かい光に頗る気持ちよく読めた。
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西村賢太待望の新作。今回は初の長編ということで、かなり期待して読んだ。その期待を裏切らない出来。おすすめです。
今回は『苦役列車』直系の物語。主人公の貫多は再起を図るために横浜に移住する。そこで植木屋の仕事を見つけ、働き始めるのだが、女の子に恋をしたり酒を飲んだり小説を読んだり暴言を吐いて暴れたりといつもの貫多。もはや様式美になっている。
強いて難点を挙げるとすれば、いささか爆発力が足りなかった。酒を飲んで暴言を吐くのはいいけど大暴れとはいかず、勝手に鎮火してしまった感が強い。まあそれでも読んでいると眉をひそめたくなるような荒れ方。「十一人、大丈夫だっ・・・」とかかわいそうすぎる。そして田中英光との出会い。心に一条の光が射したんだろう。確かに田中英光の小説はかっこよくて、笑えて、ああ、俺もまだまだ大丈夫だ、と思わせる。いい機会だと思って思い切って田中英光全集を注文してしまった。レビューも改めて書きます。
『二度はゆけぬ町の地図』がお好きな方は気に入ると思う。今新しい長編がすばるに連載中とのことで、こちらも楽しみ。
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西村賢太氏、初の長編。だが、社会不適合者である作者の分身、貫多が社会で挫折するというストーリーは変わらず。長編になっても間延びすることなく、一気に読ませてくれる。安定の西村節。
ストーリーは著者の代表作「苦役列車」の続編。中卒、コネなし、職なしの貫多もようやく造園会社で職を得、さらにはかわいい女性事務員も入社し、やる気満々。同時に、読者なら誰もが予想する貫多の破滅へ向けての助走の始まりでもある。そんな定番のオチを繰り返すが、読者を飽きさせない作者の筆力はやっぱり見事だ。
そして、「この田舎者!」、「乞食野郎!」と罵る貫多はやっぱり貫多だ。
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苦役列車に続く貫多の物語。
これは筆者そのものの人生の物語なのだろう。
なにか事件を起こすたびに、ひやひやしてしまう。だめだよ。だめだよ。そんなことをしたら、また元どうりになってしまうよ。といくら教えてあげても、どうしても駄目なほうにいってしまうんだよなー。
貫多が女の子の事と同じくらい本を読むことに夢中になっているので、是非この小説を読んでみたいと思う。
本を買うお金がないんだったら、図書館で借りればいいのに。でも貫多の生活圏には図書館はなかったのかな。
それにしても、「ヤマイダレ」やっぱり活字ないんですね。
読めない漢字、使ったことのない単語がたくさん出てくるけど、どんどん読めます。
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いままでの西村作品のなかで最高に好き!
若き日の貫太のようすがよくわかる一冊。
ドロドロした心の描写とローンウルフを気取った振る舞い。
そのギャップが滑稽ながら、人間らしくて好き。
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北町貫多シリーズの長編。19歳から20歳になるということに焦りを感じ、それまでの家賃未納、貯金せずに風俗や酒に使い込んでしまう生活を改め、なんとか身を落ち着けようと心機一転桜木町に転居転職してからの生活(田中英光との出会いや仕事)、片思いの毎度おなじみの失敗の顛末が綴られている。
やはり西村賢太は短編が好き。
これはなんというかいい意味での腐った青春長編だったな。相変わらずの女への罵倒が心地よかった。
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伊集院静は憧れる。六大学の硬式野球部出身で、広告代理店にも勤め、夏目雅子の旦那でもあり、無頼な生き様をする直木賞作家。決してなれないから憧れる存在だ。
西村賢太は芥川賞作家だが、まったく憧れも畏怖の念もない存在だ。氏の分身、北町貫多のふるまい、言動を嗤い、当時の自分が嗅いだ昭和の終わりの匂いを懐かしむ。でもなあ、貫多みたいに悪態は吐けないよなあ、と人並みにつまらぬ分別を持ち合わせたばかりに、憧れの伊集院静氏とは別種の生き物に成り下がった己を嘆く。
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北町貫多シリーズ。
矮小な自分に見栄を張る厭らしい心理を事細かに表現。
自分のことを見ているようで恥じ入りたくなる反面、他の人もそうなんだとの安心感も得る。
造園業に従事していたことは本作で初めて知った。
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初長編だがまったく飽かない。というのも、おそらく彼の物語/文体は永続的に聴けるリフレインだから。
至高の紋切り型。評価は3だけど(おそらくほとんどが3)、再読したくなる3である。そこが難しい。
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一笑に付した苦役列車、もうこの人の本は読まないと思っていたのだがインパクトある表紙につられて…でも内容は似たり寄ったりで投げ出したくなる衝動は相変わらず。
転機は貫多が古本屋を巡り出すあたりでそこから田中英光登場でグッと親近感が湧いた。そして悪ぶるボクの姿になんとなくコールフィールド少年が重なり合ってなるほど私小説とはこんなものなのかと妙に納得してみたり。
下品な描写は好きではないが一途な片恋の純情はオリンポスの果実にも似て…これはこれで良作なのかも知れないね、西村さん見直した
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あーまたやっちゃった、またぶち壊した…って感じ。でもなんかすごくわかるんだよね。ぶち壊すとこまでやらないだけで、貫多的な自分が確実にいるんだよなあ。
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今回は横浜にて新規巻き直しを誓った貫多が、造園会社に勤めを得るも結局は干され、クビにされる内容。
田中英光との出会いのくだりはほぼ事実描写かと推察される。