投稿元:
レビューを見る
石光勝『生誕101年 「カミュ」に学ぶ本当の正義』新潮社、読了。カミュの探求を「正義」と捉え、その生涯と思索を、15本の「映画」で辿る異色のカミュ伝。仕掛けの多い構成ながら抜群に「読ませる」一冊だ。著者は若き日、カミュに傾倒したテレビマン。「テレビは現在の証人、映画は時代の証人」。
「不条理の男、チョリソー」「チョリソーはソーセージでしょ。ムルソー」から始まる冒頭の「カミュなんて知らない」から「ジャッカルの日」までーー。自由と中庸に正義を探求した行動の人・カミュの本質を本書は判りやすく伝える。
カミュは正義を思索と実践の往復関係のなかで探求した。絶対的価値を認めなかった態度は、サルトルとの論争の通り「手ぬるさ」がぬぐえない。しかし神を含めて「絶対」の定位が不可能な現在、修復的正義への探求の苦悩は現代の胸を打つ。
「輝かしく偉大なる時代の証人である有名なトリオ、サルトルとボーヴォワールとカミュのうち、後世に残るのに最もふさわしいのは最後の者かもしれない」。ピエール・ド・ボワデッフル『カミュとその運命』。
著者は終章でボワデッフルの言葉を引き「矛盾と懊悩のなかで、誰よりも真摯に、勇気をもって“近似”と“中庸”の“正義”を求め続けたカミュの、時代を超えた現在性を示唆する言葉です」と締めくくる。本書は今読まれるべき正義論。
投稿元:
レビューを見る
カミュの生涯を、当時の映画を時代背景理解のための手がかりにしつつ、その著作とともに辿っていくという、なかなか興味深い著作である。
今まで、カミュの評伝らしい評伝は読んだことがなかったので一気読み。
『転落』を読んでみたくなったし、「アルジェの戦い」も見たくなった。
投稿元:
レビューを見る
2015年に登録しているのに、全く憶えていない。本当に読んだのだろうか?
カミュは悩む人だったと思う。サルトルは政治に対しては明快だった。カミュは政治に対して明快には答えられなかった。内にアルジェの問題があった。アルジェに産まれたフランス人という立場に最後まで悩んだ。アルジェの独立を認めるのか支持するのか反対するのか?彼の死で結局彼がどう思っていたかは謎のままだ。