紙の本
琉球独立の現実味
2016/06/23 18:27
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投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もし、琉球が独立国として国際的にも承認されることがあれば、本書で論じられるように、米軍基地居座り問題は解決される可能性があることに同意したいと思う。問題は、琉球民族が日本からの独立を心から願っているかどうかだろう。基地問題を解決したい沖縄県民が多数占めているのには違いないが、日本から独立してまでそうしたい、というところまで腹をくくっている人がどれほどいるのか?著者は、同胞、とくに「骨腐れ琉球人」に向かって、独立の志を強く持て、と檄を飛ばす。そして、それが本書の主題である。なお、琉球独立の最大の目的は、琉球人が誇り高く「民族自決を謳う」こと、それ自体にあって、基地問題解決はその副産物に過ぎない、という点も、ちゃんと押さえておく必要がある。
琉球人の総意が「日本からの独立」ならば、旧宗主国の日本は、それを受け入れ、なおかつ、その独立運動をサポートしなければならない。帝国主義自体が時代遅れの統治コンセプトとなった現代に生きる我々にとって当然のことである。建前上、独立国の体裁をしている日本に対して、内政問題である琉球独立問題について、アメリカは口を挟むことはできない。もちろん裏で色々と陰謀を企てるのは予想できる。だから、日本人も不退転の決意が必要だ。
そして、琉球独立が達成されれば、日本の米国からの真の意味での独立が議論されるようになるだろう。(勿論アメリカと敵対するわけではなく、友好関係を改めて築くという意味である。)もしも真の日本の独立が達成されるならば、その暁には、世界平和の最大の障壁となっていた、世界の警察の名を騙るアメリカの覇権主義が終焉する可能性が生まれる。アメリカが平和国家になれば地球上に平和が訪れるのは間違いない。
各論については、多くの異論はあろう。独立の具体的方法論に関しては、まだ深い霧の中にある。しかし、本書によって、達成すべきゴールがどこなのかについては光が差した。今、そのゴールに向かって一歩進める時だ。
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最初から最後まで感情論のみで著者が自分の意見を(論証もないまま)押しつけるだけの本。琉球が八重山とか宮古を併合した史実は記載されるが、それは正当で、日本に併合されたのは理不尽だという「琉球」=「善」があくまで前提。大体、現状の沖縄県の財政状態で、独立が可能だと本当に信じているのか?米軍基地問題で沖縄に集中している事実は大問題だと言うのは納得できるが、日本と琉球の関係性から、いきなり独立に走ってしまう極端さは暴論に近い。アイデンティティだなんだと言う前に、現実の経済をどうすれば自立できるようになるのかが先では?独立するのは結構だが、その前に失業率対策や国からの補助金依存体質をどう改善するのか?感情論で政治を語るとこんなに危険な方向になるという典型的な一冊とも言える。
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柄谷行人さんの書評から読んでみました。
琉球独立という視点から見ていくといろんな矛盾や疑問点が読み解ける。そういった運動が必要なのだということが理解できた。
私はまったく知らず考えもしていなかった。もちろん違和感のようなものは感じていた。それがなんなのかこの本は教えてくれた。
最近の私の考えに当てはめて言えば私自身が反省することが必要なのだ。そして帰納的思考により世界を見て取る努力をしなければならない。それはカントの言う悟性的学者である。今まで信じてきた豊かさや幸福という価値観を変えなければならない。人間にはそういった反省が必要でありそれこそが真の豊かさ・幸福であると思う。
そして悟性的学者として帰納的思考により世界を見て取るならば人はそこに改善への配慮の姿勢をみるだろう。それこそが世界を真に改善する最高善であると思う。この本は琉球独立というものでそういった理念を示していてすごくいい本だと思います。
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琉球人である大学教授の松島泰勝氏が書き下ろした「琉球独立」を提唱する一冊。今年スコットランドがイギリスからの独立を求め住民投票を行ったことに自分も驚いたが、本書を読むとむしろ琉球が日本から独立しないことの方が不思議に思えてくる。もともと、琉球は独立した王国でした。なのに、薩摩藩に、アメリカに、そしてヤマトに領有され翻弄され、差別されそして大きな米軍基地が・・・。
私も今後、松島教授たちの作った「琉球民族独立総合研究学会」の動向を注視し琉球のこれからを見守りたい。
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石垣島に生まれ、長じて島しょ経済の専門家となった著者が、琉球人が「一般的な意味での1つの民族として定義される」必要十分な要件をその歴史において満たすことを論証し、「琉球の独立」をテーマとして理念、政治経済、国際関係など多角的な視点から述べた研究書。
琉球の独立という、日本にとっても琉球にとっても困難に思えるこのミッションはしかし、決して実現不可能なことではないと著者は言う。なぜなら、著者は日本国の大使館職員として働いていたパラオで、この小国の独立を目の当たりにしているのだ。パラオの人口は石垣島の半分以下。であるならば、「琉球が独立できないという道理はない」。
日本人は今まで、琉球が強いられてきた苦難に知らないふりを続けてきた。このふるまいは、そろそろ限界に来ている。
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沖縄が独立するなんて空想論だと思っていたが、この本を読んで考えが変わった。沖縄が元々は琉球という独立国だという事など知らないことが多すぎた。民族的にも違っていて、日本は多民族国家だということも国家がもっというべきだとも思った。とにもかくにも、沖縄にアメリカの軍事基地が集中していることだけは本土の人も本土に移転するべきだと考えるべきだろう。
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沖縄の独立論についてはまったく賛意を示せないが、居酒屋談義ではなく、「琉球民族独立総合研究学会」という学会の人がどういう議論をしているのか興味があって読んでみた。
筋としては、琉球処分まで琉球は王国として独立した地位にあり、諸外国も独立国として通商や条約締結を行っていた。琉球処分により日本国の一部となったが、それも住民の同意を得たものではなく植民地としての支配であり、また戦後のアメリカ世や大和世においても経済的、政治的に搾取されている構図は変わらないため、本来の姿である独立した形になるべき、というところ。まぁ実際に琉球王国だったわけだし、分からんでもない。が、やはり独立後にどうやって安全保障、経済政策を実施するのかは弱いと感じる。永世中立国というが、現に尖閣諸島は中国、台湾が領有権を主張しており、緩衝地帯だなんだと言っても、そもそもうちのもんだという前提で入ってくるわけで、そこに対しての対抗手段が難しい。経済は、ある種貧しくても幸せならいいじゃないか論に立っているので、それはそれでありとも言えるが、独立国で各国と貿易・条約を結ぶのは相当難儀だろう。すでに入ってきている外資を強制的に追い出すことも難しいよね。
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【琉球の独立は日本の独立だ】
琉球は「琉球処分」による日本への併合まで約600年もの間独立国だった。しかし1609年の薩摩藩による「琉球侵攻」以来、薩摩藩、日本、アメリカによって約400年間植民地化されてきた。
本書はこの琉球史を踏まえて琉球独立を唱え、沖縄ではなく琉球という呼称に終始する。「沖縄」とは明治政府によって押しつけられた呼称であり、日本への帰属を含意しているからだ。
著者の松島は、パラオ、フィジーなどの太平洋島嶼諸国やアフリカ諸国の独立と独立後の経緯や台湾の立ち位置、スコットランド、カタロニアなどの独立運動の調査を踏まえて、単なる「居酒屋論議」ではない実現性をもった琉球独立論を主張し、独立に向けての運動を展開してきている。
琉球が独立することで日本国民もアメリカの植民地であることに気づき、独立を志向することになるだろう、と松島は指摘する。胸に突き刺さる一言だ。(門倉/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)