紙の本
ほとんどの高校教科書に載っている名作
2015/09/19 21:38
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投稿者:zxa - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすがに全文は載っていないが「1社を除いてすべての高校教科書に載っている」と先生が言っていた。内容を理解するには私には少し難しかったがこれは読んでおくべき話だと思った。
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再読。
【あらすじ】
まず前半は「私」が先生と出会い、先生と仲良くしたいのに、距離詰めたら突き放される感を味わうという微妙な関係性について描かれます。
先生の過去について、今度話してくれるよう約束をとりつけて実家に帰省しますが、父親が病気のために実家から東京へ戻れないまま時が過ぎます。
いよいよ父親が危篤状態に陥った時に一通の分厚い手紙を受け取ります。先生からでした。
父親が気になりつつも手紙をパラパラめくってみると、それが先生の遺書であると気付いてしまいます。いてもたってもいられず、危篤状態の父親を放って東京への列車に乗り、列車内で手紙に目を通します。
ここまでが前半。
後半は、手紙(遺書)の内容です。
先生は両親を一度に亡くし、その財産を叔父に騙されてしまうような目にあってから人間不信に陥りました。
そんな時、下宿先で「お嬢さん」に出会い恋をします。人間不信の心もほぐれていくようでした。
それで、幼い頃から親友の「K」が家からの援助を打ち切られ困っているのを見かねて、親切心で彼に下宿を紹介します。
ひとつ屋根の下で、先生、K、お嬢さん、奥さん(お嬢さんの母)が暮らす形となりました。
Kは寺の子で、自分の信念を曲げず、生きるべき「道」をしっかりと持った、修行僧のような人生を送っていました。先生はKに憧れと尊敬の念を抱いていましたが、Kとお嬢さんが仲良くなるにつれ嫉妬をおぼえます。
嫉妬心をひた隠してKと接する先生でしたが、ある日、Kにお嬢さんへの恋心を打ち明けられます。
Kにとっての恋心は自分の生きる道に反するものとなります。
先生はKの打ち明け話に対し、自分もお嬢さんを好きとは言い出せず、「向上心のない者は馬鹿だ」つまり道に逸れたKを責める発言をします。
その上、お嬢さんをくださいと奥さんに頼み、お嬢さんとの婚約を済ませてしまいました。Kを出し抜いた形になります。
その直後、Kは自殺してしまいます。
お嬢さんと結婚した先生は、しかし、常にKへの罪悪感に苛まされながら人生を送ることになりました。
そして明治天皇の崩御に乃木大将が殉職したというニュースを聞き、自分も「明治の精神」に殉教するつもりで自殺します。
これで終わりです。
【感想】
読み終えた後はズシーンときました。謎に包まれた先生の言動が後半で解き明かされる仕組みで、謎が明かされても全然スッキリしないので、何回も読み直すという中毒性の高い作品。
以下、気付いた点など。
・前半と後半で語り手が違います。
前半は「私」こちらは何がどうなった、どう感じた、と比較的単純で明瞭です。共感もしやすく、さくさく読めました。
後半は「先生」こちらは遺書の冒頭から鬱屈マックスで、だいぶ精神こじらせてしまった面倒な人という印象。
恋をしてからの場面は活力が出てきて、そのギャップが微笑ましくもある。
Kが出てきてからは心の中がドロドロ。
でもこの鬱屈さって、すべての人の心にあるも��だと思われます。
まさに「こころ」を描いた作品。
・Kの自殺理由について。
Kは好きな女を親友に奪われ恋も友情も失くしたショックで死んだわけではないと思います。
先生が恋敵、そんなことはKにとってはどうでも良かったのでしょう。
道を極める先生にとって、自分の生き方に反して恋をしてしまったこと、それを馬鹿と指摘され、自分でも「ぼくは馬鹿だ」と痛感したこと。それが自殺理由でしょう。と私は思います。
「向上心のない奴は馬鹿だ」の次の場面くらいに、Kが先生に寝る時間を尋ねていますが、あれは伏線で、Kが自殺する計画を立てるためのものでしょう。
つまり、先生がお嬢さんを奪ってなくてもKは自殺したわけで、先生もたぶんそれに気付いている。
でも先生は、親友を欺く真似をしてしまった自分自身を許せなかった。
結局、Kも先生も「自分の生きる道」みたいな信念ばかり見ていて、そこから外れるのは死に値するということだったんでしょうか。それが明治の精神に殉ずること?
・「私」のその後について明記されていません。父親の死に際に大好きな先生の遺書を読まされた「私」のこころ…それは想像にお任せになっています。
「私」は明治天皇の崩御後、大正も生き続けます。時代の移り変わりをあえて余白にすることで意味を持たせたのかな、と思ったり。
・特筆すべきは、先生が妻(お嬢さん)にKの始終を語らなかったことです。愛は宗教のようなもの、と語る先生にとって、妻は聖域だったわけで。
でも、その妻を悲しませること(秘密を持つことで不信がらせ不安に陥れたり、未亡人にしてしまったり…)をしているわけですから、なんというか頭でっかち、考えすぎは良くない、面倒な男……といってしまえばそれまでなんですがね。そう割り切れないのが「こころ」。
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「然し、然し君、恋は罪悪ですよ」自分までもを疑う先生が、最後まで信じ、愛した人、そして信じていてほしかった人とは。考えさせられる一冊でした。
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祖父の形見として文庫本を持っている。私はこの作品を読んで、向上心を大事にしようと思った。「向上心」が良い意味と悪い意味、どちらとして描かれていたかは覚えていないが、とにかく印象に残った。胸が締め付けられるようなストーリーだが、もう1回読みたい。
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先生の手紙のうち、一部分だけを遠い昔教科書で読んだことがあった。
あるとき、この朗読CD付きの本を見かけ、なんとなく買って読んだ。
まず、内容とよりもその文章の美しさに心奪われる。文豪と呼ばれる人たちは、本当にその技量あって文豪なんだと、なんて引き込まれる文章なんだと、単純に感動した。
粗筋はご存知の通り。高校生の頃は、なんだこのぐだぐだはと思ったが、大人になり読み終わると、やるせなさや切ない気持ちが心に残った。
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中二の時はどうにもウネウネした内省的な描写に言いようもないじれったさや深みを感じた。
四十を越えて再読すると、何とも阿呆で哀しい人間のこころを実感する。愛や恋やら嫉妬だのからは大分達観したようなこころ持ちになれているので、今すぐ自分のこととして捉えることはできない。
二十代で読んでいればまた違った受け取り方をしたのかもしれない。