紙の本
ファンタジーとして楽しんだ方がいいと思う
2015/03/30 06:18
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投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
上梓された時期と舞台が福島県を連想させる東北の小藩という事から「怪物」を「原発事故」とからめて評論するレビューも多いが、あまり深く考えずにファンタジーとして楽しんだ方がいいと思う。
トカゲのようでもあり蛇のようでもある山小屋程度の大きさのある怪物。大きな体なのに俊敏で回りの景色に溶け込むように保護色で体の色を変える。
口からは酸性の液体を吐き、大きなしっぽで人間をからめ捕り食べてしまう。
一晩で村を壊滅させた怪物の正体とは・・・
「怪物」の描写は恐ろしいが、怪物を退治した後に語られる藩同士の思惑とそれに振り回され、命までも脅かされる人々も大変恐ろしく感じた。
「怪物」は何なのか?
原発のような人間の欲が生み出した怪物なのか?
津波のような大自然の驚異なのか?
人間の業や「正しい」と思った行動が長い年月を経た時に恐ろしい結果を招く結果の姿なのか?
ファンタジーとして楽しみ、読後に「怪物」についての想像を考えてみるとよいと思う。
紙の本
うわばみ
2015/10/27 02:00
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリからスタートし、直木賞も獲って順風満帆。ただ、最近になって本来の路線から変わってきたのは、本人の意思か、編集者の方針か。当方としては、うわばみのような怪物が出てくる本著は正直、好きになれない。宮部氏の持ち味とは違う気がする。
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新聞に連載されたものの書籍化。
話としては面白いし、それぞれの登場人物も個性があるのだが、連載小説だからなのか、いつもならば必要以上に脇役の設定が細かく描かれているように感じる著者の作風を思うと少し物足りなく残念。
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元禄太平の世の半ば、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅状態となる。
隣り合う二藩の反目、お家騒動、奇異な風土病など様々な事情の交錯するこの土地に、
その"化け物"は現れた。
藩主側近・弾正と妹・朱音、朱音を慕う村人と用心棒・宗栄、
山里の少年・蓑吉、小姓・直弥、謎の絵師・圓秀……
山のふもとに生きる北の人びとは、
突如訪れた"災い"に何を思い、いかに立ち向かうのか。
そして化け物の正体とは一体何なのか――!?
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すぐ借りられたので、へぇと思っていたら、そうか。
ちょっと時代が難しかったです。
そっち方向だったのね。嫌いじゃないけど、準備して
いなかったので、入りにくかったです。残念!
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やはり「さすが!」と言いたい。
読み始めは登場人物と地形の把握で大変だったけど、中盤からはケモノの恐ろしさにおののいて、後半は戦うみんなを応援し、イッキ読みでした。
大勢の登場人物を個性を活かし余りなく十分に発揮できているのはホントにスゴイ。
最初に出てきた主人公と思われるさわやかな侍が、意外に頭の固い頼りないヤツだったのが、ちょっとおもしろかったですね。
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どう落ち着くのかと思いつつ読みましたが、そうきましたか・・・退治して終わるだけじゃないところが、宮部さんらしいですね。
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奇想天外、荒唐無稽。突拍子もないお話。でも何だか身につまされ、考えさせられる。
将軍綱吉の治世、東北の山深い小藩で巻き起こる怪物騒動。舞台となっている東北で起きたあの地震や、原発事故、それ以外にもテロなどの目を覆うような事件が多い昨今。怪物が色々なことの象徴のように思われる。自然災害の多いこの国で、支え合って素朴に逞しく、そして良識を持って生きる一方、怒り憎しみ恨み恐れという感情もまた持っているのが人間で。
宮部さんの似たような短編を読んだことがあるけれど、流石に長編は読み応えがある…といっても、面白くてあっという間に読み終えてしまったのだけれど。
いつも通り、子供の描写が上手いなあと感心。
でも、物語の鍵となる兄妹の、兄のみが何故ああいう感情に凝り固まってしまったのか、そのあたりの根拠が薄いように感じられ、イマイチ理解ができなかったのが、私には残念だった。
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今年は年間で約170冊ほどの本を読んだ。小説が主だが、ビジネス書などもその中に入っている。また、コミックも好きでむすこと二人で良く読んでいるので、読んだ総数で言えば優に200冊を超えていることになる。
子どもの頃から本好きだったが、年齢とともにその傾向が強まってきているような気がする。テレビをほとんど見ないため、一日少なくても数時間は本を読む時間にあてられることになるし、通勤や出張の移動時には必ず本を読んでいる。それが読書量を増やす秘訣なのかなとも思っている。
私が読書好きなのは何も勉強家だということではなく、本を読むことで現実とはまったく違う世界に飛び込めることが好きだし、それがとても良い気分転換になっているからだ。
もちろん、必要な知識を得るために専門書を読むこともあるし、ビジネス書で様々な知識を得ることも多い。しかしそれは「必要に迫られて読む」のであって、「読書を楽しんでいる」ということでは無いような気がする。
通勤時や出張の移動中には区切りの良い短編集などを読んでいるが、気分転換のために読むのはやはり長編が良い。さらに自分の生活とは大きく異なる、独特の世界にどっぷりと浸れるような、例えば時代小説であったりSF小説であったりするとさらに良い。
子どもの頃から夢見がちなところがあったし空想癖もあったので、自分の知らない時代の物語を読むことは思い切り気分が変わるし、自分の精神が身体から切り離されて物語の中に入り込んでしまうような錯覚も覚えることがある。だからこそストレス解消や気分転換になるのではないかと思っている。
今年最後に読んだ物語は宮部みゆきさんの「荒神」という一冊。江戸時代の物語で設定がとても壮大だった。なおかつSF的な要素も兼ね備えていて、さすがに天才宮部みゆきさんの作品だけあるなと感心してしまった。
舞台は江戸元禄時代の山あいにある隣り合った藩。山の麓にある両方の藩はそれ以前の時代から諍いが絶えず、人狩りと呼ばれる行為が勃発しているなど常に緊張状態を強いられていた。そこに突然現れたのが信じられないような災いをもたらす怪物。二つの藩は藩境を中心として徐々に大きな恐怖に包まれていく。
時代のもたらす不条理さとそれに翻弄される人間模様を巧みに描きながら、災いをもたらす怪物を巡って物語は展開していく。二つの藩の位置関係や人間関係が割と複雑なので、巻頭に人名関連図と地図が用意されているぐらいだ。
読み始めて最初の頃は藩同士の関連が分かりにくかったり人的相関が分かりにくいように感じるが、読み進めて行くうちに徐々にそれが分かり始める。分かり始めてからがこの物語は面白さを一層増していき、最後まで一気に読み進めて行くことになる。
人智を超えた災いは、人智を超えた方法で解決して行くことになるが、その中でも人の心の哀しさや温かさなどが織り混ざっており、読後には清涼感をも覚えるような素敵な物語だった。
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元禄の世、東北の因縁深い隣り合う二藩。山間の村が一夜のうちに壊滅してしまう。なぜ、どうして、何が……。人の心の怖さ、暖かさ、愚かさ、優しさ 物語に溢れてくる多くの行為にそしてその気持ちに心が震える。朱音さま、今もそこにいらっしゃいますか。
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相変わらずぐいぐい読ませてくれます。成り上がりのよそ者、曽野弾正の妹、朱音。仲間由紀恵のイメージ。山に現れたもののけと人間たちとの戦い。ちょっとジブリワールド入ってたかな。
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宮部さんの時代物は初だったのですが、人間の情を炙り出す「宮部節」がバッチリ効いていました!
また、事前に怪物ものと聞いていたのですが、パニック小説ではありませんでした。「宮部さんの手腕に感服!」した1冊です。
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泣き童子収録のまぐる笛の長編版。
まぐる笛の方がかなり怖かったかな。特に補食シーン。
怪獣ものらしいが、映像ではこんなに恐ろしくは感じないだろう。
なぜ、こんなものが!という不気味さは文章でないと伝わらない。
それぞれ読者の頭の中でいやらしく恐ろしいものの想像で補填するからだ。
お山を挟み、敵対する二つの国の思惑や欲が怪物騒動と複雑に絡み凄惨な結末へと向かっていく。
キャラクターも抑え目で、著者には珍しく直截な恋愛シーンもある。
しかし、ヒロインが年増であっても非常に美人であることは最初に強調したほうがストーリー展開としては効果的だったのではないかと思う。
でも、読み出したら止まらない面白さは相変わらず。
最近の宮部みゆきの時代ものにしては切ないというより、かなり悲しい終わり方だった。
この人だけは大丈夫だと思ってたとあるキャラクターの壮絶な最期は驚いた。
なぜ、彼は残らないそれを最後の仕事に、唯一の仕事にしなくてはならなかったのか。
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宮部みゆきさんの、とくに時代物での言葉の紡ぎ方が大好きなので目にしてすぐに手に取りましたが、怪物の怖さも人間の怖さも中途半端で、やや物足りなさの残る読後感でした。
いつもの宮部作品は、最後には人間の怖さと優しさが、もっともっと際立ってくるような気がするんですが。
期待値が高すぎるのですかね。
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古くから確執のある陸奥の国の小藩の国境を襲った災厄。
一番恐ろしいものは自然の力よりも人心であることは「孤宿の人」でも禍々しく描かれていたが、それを極めて描いたのが本作。
積年の恨みや復讐心が実体化して化け物になるという構造は、プリキュアみたいなんだけれども…
実写化するならば黒澤明監督と円谷英二監督のタッグで見たいな。
生き残った者達によるエピローグが清々しかった。