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アイドルでマッド・サイエンティスト
2015/01/27 19:21
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投稿者:やきとり - この投稿者のレビュー一覧を見る
「地球移動作戦」の前日譚。熱力学の法則を破る夢の永久機関<ピアノドライブ>の開発者である結城ぴあのの半生を描いたSF作品。主人公の結城ぴあのは独学で天文学・物理学を取得した天才で夢は宇宙へ行くこと。その夢をかなえる為の手段の1つとしてアイドルになったという変わり者で、本作の語り部の貴尾根すばる(「男の娘」を自称する工学部生)とは秋葉原のパーツ屋で出会う。
物語の前半はひあのがアイドルになっていく過程と<ピアノドライブ>の理論構築が交互が描かれていく。アイドルパートではバーチャルアイドルvsリアルアイドルやFREEと著作権、ボカロやAR(拡張現実)など現在と地続きの技術の未来系の話が語られ、ドライブパートではタキオンや次元論などを駆使して新たな物理法則を構築するというハードSF寄りの話が語られます。どちらもすごく面白いのですが、私的にはドライブパートでひあのがタキオン時空の物理法則を構築し、我々がいるタージオン時空の法則に当てはめていく様は最近のSF物にはないエキサイティングな場面で読んでいて楽しかったです。そして後半、話は1つに収斂され<ピアノドライブ>作成とその実用化の話になるのですがここでも現行の規制や制約の枠を突破していく話が面白く最後の方で用意されている<ピアノドライブ>での救出劇は現行物理法則を無視した最大の見せ場になっています。
「地球移動作戦」を読んだ方はひあのの行く末はご存知かとは思いますが、あの時代に活躍するACOM(人工意識コンパニオン)やメガプロデューサーがこの時代に誕生していたことなど前作を読んでいるのであれば本作も十分堪能できます。また本作が楽しめたのであればぜひ「地球移動作戦」も読んでいただきたい。
しかしマッド・サイエンティストでアイドルというこの相容れない設定を見事に結びつけ「結城ぴあの」という稀代のキャラクターを生
み出した作者には素直に拍手を送りたい。
※野尻抱介の「南極点のピアピア動画」や「ふわふわの泉」が好きなら買いです。
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タイトルをみて、地球移動作戦に出てきた、ピアノドライブの話しだろうと、発明者は女の子だったはずなので、この天才少女が主人公だろうと思って読んだら。やっぱりその通りでした。さすが山本弘先生。
相変わらず、細かい過去の事件などが詳しく紹介されるのだが、未来の事件ももっと作ってもいいんじゃないかと思う。2013年以降の数十年に事件などが異様に少ないように見える。
こういう開発秘話的なお話は非常に読んでて楽しい。
AIやARなどが日常生活に溶け込もうとしている過渡期の様子が興味深い。ただ、視点が少しおたく文化方面よりすぎるのが気になる。
主人公自体は、名被害者・一条(仮名)の事件簿の一条に近い感じ。最近の山本弘先生の作品でよく見る気がする。
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相変わらずのオタクよりの話ではあるが、作者お得意のトンでも本のマッドな話とありそうな実際の物理天文のオタク的な知識を組み合わせて、いかにもありそうな話として成立させて、読ませる作品として成立している。これはなかなかよかった。
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アイドルなのに超理系頭脳を持った結城ぴあのが主人公の近未来SF。古き良きSFを体現しているかのような良作で、物語に登場する数々のガジェットには思わずニヤリとさせられます。
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20141104読了
友人に薦められプレゼントされた本。
壮大な宇宙論に圧倒されながら半ば内容を理解できず読み進めた。
漠然と最期にぴあのは死んじゃうのかなぁと思っていたため、こういう結末も少しセンチメンタルで良かった。
ただ、私は秋穂との友情話な方がほろりとした。
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主人公に美少女アイドルを据えてハードSFをやるのは良いアイディアだなぁとなんとなく読み進めていくうちに「ピアノ・ドライブ」って何か聞いたことあるなぁと思い返してみて、『地球移動作戦』の前日譚ということにようやく気付きました。熱力学の第二法則を破る発電機やピアノ・ドライブの原理の説明などは、流石はと学会会長と感心する出来です。近未来を想定して描かれた発明品がいくつも登場しますが、資本主義の行き詰まりを打開するためには、科学や技術の大きな進展が不可欠ではないかとあらためて考えてしまいました。
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今年最高の本決定です。ぴあのはアイドルグループの一員で変り種担当。しかし、彼女は物理学の天才少女。アイドルでいるのは宇宙それもカイパーベルトを超えて太陽系外に行く為の技術を開発し自らが飛び立つことを目的としていた。まず手始めにブラウン運動を利用した第2種永久機関を作り世間を驚かせ、遂にはタキオン粒子の理論を構築し、これが宇宙空間におけるダークエネルギーであることを突き止めるとともに、それを利用した飛行機関「ぴあのドライブ」を開発してしまう。本には難解な物理用語が頻出し、理論を説明している文は私には全く理解できない。しかし、それはこの本の面白さをコケオドシ的に増すだけなのだ。様々なスポンサーから大金を調達した彼女たちグループは、6人が火星に2ヶ月半滞在出来る宇宙船を完成させた。しかしここでぴあのは反乱を企てる。6人が2ヵ月半なら、1人なら450日生きられる。これに単身乗り組み100日加速100日減速し船内時間450日でオリオン座大星雲までの往復宇宙旅行に出かけるのだ。しかしほぼ光速であるため、帰り着いたときには地球では3千年が経ってしまう計算だ。地球からオリオン座を見るとき、その方向には今もぴあのが1人で旅を続けているのである。
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大学二年のとき。
『アイの物語』の、ある3行の会話に救われました。
大学四年のとき。
『詩羽のいる街』の、あの街の人々に救われました。
社会人二年目のおわり。
『プロジェクトぴあの』に、ぼくは救われたとは感じていません。
ただすくわれてまた沈むのは、もうお仕舞いです。
縁日の金魚じゃあるまいし。
https://www.youtube.com/watch?v=WRAT8o8cSVs
WRAT8o8cSVs
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マイミク氏の大絶賛を受けて読んでみた。絶賛するはずだやわ。こりゃすげえ大傑作だ。
天才マッドサイエンティストがアイドル?んで、そいつが宇宙に飛び立つ?
いかにもヲタが好みそうなベタ設定。
語り手は女装(しかも気合十分)趣味の男子。女装が好きなだけで同性愛者ではない。恋愛嗜好は女好きという、これまたヲタ好きしそうな設定。
と学会の人ってこういうことやりそうやなぁ。今度は何に対してどうケンカ売るんだろう、みたいな醒めた気持で読みだしたところが、エエ方向に期待裏切ってハマるわハマる。
主人公と語り手やライバルアイドル達、プロダクションの社長ら個性的な登場人物たちの生き生きとした絡み、身近に感じる近未来光景の描写、ちょっとイカした小道具のチョイスなんかを中心に、決して読みやすい部類には入らないはずの物理用語やら数式の解釈やら、そんなもんまでが文章のリズムを作り、宇宙への憧憬や科学技術の未来性や人類の希望やアイドルの終焉や、そして甘酸っぱくも実らないラブストーリーまで贅沢にちりばめた満願色のセンスオブワンダー!
「宇宙には夢と希望がある」って、こんな前世紀的真正面なSFのお題目を、剛速球でぶつけてこられたら、受けなしゃーない、当たらなしゃーない。
大森望あたりのSFヲタどもが、50ヅラさげて必死にアイドルのおっかけしてるのを、冷やかに見ていた俺だけど、この本読んで「なるほどアイドルと宇宙の組み合わせは合うわ」とよーやく意味が分かった次第。ヲタ好き設定もこういう調理法なら美味しく読める。ほんでこういうマニアックな相性の良さを、広く万人が味わえるように引き出してくるのは調理人(作家)の腕やねんなぁ。
ラストは憎いよ、こんな寂しいハートブレイクを久々味わったよ。読み終わったのは昼休みの会社やったけどちょっと泣いたよ。
小説家としての山本弘にはあまり接してこなかったが、この本読んで開眼!よーし今からおっかけるぞ。とりあえず「地球移動作戦」だ。
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頁が進むにつれ増してゆく高揚感、頭の中を駆け巡るアドレナリンが理解力を遥かに超えてフル回転。超メガトン級の破壊力。
そして叶える夢。
心が空く。
脱力感。
途轍もない。
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この世界の延長線上にありそうな未来を書かせたら、やはり筆者は随一ではなかろうか。10数年後の日本が舞台のSFだが、圧倒的なスケール感…それは銀河系や宇宙と言う広さのスケールではなく、ぴあのが見つめ、彼女が持つ熱意と狂気のスケール感。
UGCとネットの功罪も、筆者の従来作同様によく描かれているが、今作は特に、筆者が言うように「自分なりのボカロ小説」なのかもしれない。「サイハテ」がとても効果的に使われ、本作の着想は20年前らしいが、今だから書けたであろう作品になっている。ハードSFだが平易に書かれ読みやすい秀作。
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近未来、リアルとバーチャルが入り乱れる世界で
天才少女がアイドルを経由して宇宙を目指す物語。
物理の用語や解説が難しすぎてわかりにくいが、
それを差し引いても楽しく読めました。
SFは壮大なホラ話と言う通り、いろいろと「そんなわけないやろ」みたいな所もありますが、この話は好きです。
初音ミクの「サイハテ」初めて聞きました。
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近未来社会。
アキバ系アイドルで、物理学の天才である「ぴあの」は「宇宙へ行くこと」を目的に実験を繰り返している。
「ぴあの」の性格設定や行動などは面白かったが、半分を占める実験や物理学の話は興味がない身には辛かった。
ラストは予想外によかった。
(図書館)
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本当にありそうな話。ハードSFに当たるのかな?
でも、ノリは軽いです。
アイドルっておバカなイメージがやはり強いのだろうか。
知的で、実はマッドサイエンティストという設定は面白いと思う。
宇宙への憧れは募るばかりですね。
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結構ボリュームがあるが面白くて一気に読んでしまいます。
この著者の本は何冊か読んでいますがハズレは殆どありません。
個人的にはビブリオバトルシリーズのようなものよりもこの本のようなSFものの方がハマりますね。
いやー、面白くて読み応えもあり満足の一冊です。