紙の本
人工知能入門の教科書
2016/06/21 03:05
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投稿者:いわし - この投稿者のレビュー一覧を見る
人工知能入門の教科書として購入。
イラストが多く、堅苦しさを排除しようという姿勢が見える。
利用した大学講師の話によると、図や表の誤りが残っているらしいため、修正した改訂版が望まれる。
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教科書にも色々あるが,ホイールダック2号というゆるキャラに知能を持たせていくというサブテーマで,学生に食いつかせる方針は悪くないと思います。ただ,この本は,各要素技術をあっさりと書いているだけなので,独習にはあまり向いていないように思います。
・編集距離のところはやや分かりにくかったです。
・P(A, B) と P(A∩B) の両方の表記を用いているのは何か意図があるんでしょうか?
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人工知能とは一つの確立した理論体系というよりも,象徴的に掲げられた「人間の知能をつくりたい」という欲求によって形成されてきている発展途上の学問体系だといえるだろう。その意味では,アニメやSF作品の中の人工知能のイメージを,人工知能を学ぶモチベーションの基礎におくことは必ずしも間違いではない。(p.2)
人間の知能とは,私達の活動すべてにかかわるものであり,人工知能という学問はその一つひとつを実現する知能を構成することに対応する。そう考えると,人工知能が広範囲な学問であることを自然に理解できる。ゆえに,すべてを理解しようとすると膨大な知識が求められる。これは知能を学ぶという恐れ多いことに挑戦する以上,不可避なことであり,人工知能という学問の宿命といってもよい。(p.3)
人工知能は決して,「変わらない中心」があるような学問ではなく,さまざまな構成要素が重層的かつ並走的に進歩して絡み合ってきた学問である。そのことを認識しながら,多様な視点を柔軟に取り入れながら学ぶことが人工知能という学問の学びには大切である。(p.6)
応用を重視した研究においては便利で知的な道具,ロボットをつくることが目的である。そのため,この研究においてつくられた人工知能に対して「人間はそのような計算を行っているとは思えない」といったような批判をすることはお門違いである。また,人間理解を重視して人間のモデルとしてつくられた自律的な知能を目指した人工知能に対して「その技術の用途がわからない。製品化できないのではないか」などと批判することもお門違いである。
ニ,三歳児は驚くべき語彙獲得能力や運動能力,学習能力を持つが,彼等の知能が私達の生活や仕事の「役に立つか」というと,そうではない。しかし,自律的な存在としての知的さとしては,現在の技術を結集させても実現できないものを持っている。自律的な存在としての知的さと,道具としての理容価値のある知的さは,また異なる観点であることは意識しておく必要があるだろう。(p.218)