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高い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2015/11/19 06:40
最高傑作
投稿者:ほし☆ - この投稿者のレビュー一覧を見る
絲山秋子の最高傑作。謎は謎のまま終わるのだが、それが消化不良にはならず、心地よい余韻を残している。作家本人は、あとがきで「自分は短編書き」と書いているが、私はこれからも長編を読みたい。
低い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2016/02/12 08:54
誰もが離陸を待っている
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「絲山秋子の書く女スパイ物が読みたい」と雑誌で伊坂幸太郎さんが言われたとか。
構想10年という長い時間をかけて、短編、中編がメインだった絲山作品で初の長編です。
絲山秋子さんは、なんといってもご自身が日本中を赴任する仕事をずっとされていて、仕事を描かせると右に出る者はいない、という点は相変わらずでした。
ただし、今回の主人公は国交省の役人です。土木建築を専攻して、国交省に入省した弘(ひろむ)
霞が関の事務よりも、ダムなどの現場仕事を希望してその希望が通って矢木沢ダムで働くことに。
その辺が、村上春樹風と言われるのと大きく違っていると思います。
舞台となるのも、今現在、絲山さんがお住まいの群馬県の矢木沢ダムから始まって、フランスのパリ、九州、熊本県。そしてキーとなる五島列島。
九州は絲山さんが実際、赴任していた土地で『逃亡くそたわけ』と同じようにまるで九州の地図を見ているかのように描き出します。それは、滞在したことのあるフランスのパリも同様。
「ぼく」こと弘は、乃緒(のお)という女性と付き合っていましたが、乃緒の心変わりで別れて以来、当然ながらつきあいはありません。
弘はユネスコの仕事で、フランスのパリに転勤になりますが、そこで乃緒の息子だという「ブツゾウ」という少年とその養い親、イルベールと親しくなります。
乃緒は息子を置いて失踪して以来、行方が分からない。元恋人の弘が居場所を知っているのではないか、とイルベールは問うのですが、弘は何も知らない。
そこから、乃緒をめぐる不思議な物語と、フランスですごす弘がリシューという女性と出合う物語が平行します。
乃緒に関しては最初から最後まですっきりとはわかりませんが、弘は公務員という仕事をこなしながらも、妹の茜の助けなどもかりながら、謎を解こうとします。
人は、皆、チケットを持って搭乗を待っていて、離陸するということは、死を意味し、人である以上死は100%逃れられない・・・弘はつくづくそのことを実感する。
しかし、離陸はまた別の地へ向かう着陸が必ずあるのです。
物語は活劇的にわかりやすくないし、謎は謎のままの部分もあります。
絲山秋子さんは、どちらかというと純文学方面の力が強いので(芥川賞作家)なにもかも解決、すっきりは望めません。
ただ、大切な人に囲まれ、そして時に失う・・・幸福と不幸がキーワードになっていますが、何を持って幸福と呼ぶのか、何も言わず去って、離陸してしまった方がよい場合もあるのではないか、と反面、何も知らされず離陸されてしまった身内や家族の苦い思いといった余韻を残します。