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紙の本
要所要所にその時々の主要な出来事をさらりと付記することで時代風景が目に浮かんでくるし、著名人が実名で出てくることもあり、鉄鋼業を軸とした戦後史を概観しているようでもある。
2016/12/09 09:49
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
川崎製鉄社長・西山弥太郎の自伝小説かと思ったら、あながち間違いではなかった。読み始めから、事実に基づいた逸話の断片が多用されておりストーリー性に欠ける様な気がしたが、これらは巻末に掲載された参考文献や綿密な取材に基づいて西山という人物を余すところなく描きたいという作者の熱意である。資料に記録が残り易い大企業の社長とはいえ、よくぞこれだけの情報を収集しまとめ上げたものだと感心。いやむしろ、戦前からの官営巨大鉄鋼3社(八幡製鉄・富士製鉄・日本鋼管)に較べたら、取るに足らない中小零細メーカーに過ぎなかったことを考えると、この人物の指導力・人を引きつける魅力に帰するところが大きいように感じる。
さて、物語としては、高炉を持たないためスクラップ依存で鉄鋼生産を行っていた川崎製鉄が、自前の高炉を持ち自社一貫生産体制を確立するため、上巻後半で千葉に高炉建設を始めるあたりから俄然面白くなって来る。しかも、その規模が数十年先を見通した、当時としては想像を絶するような規模なのだからワクワクしない訳がない。資本金5億円に過ぎない一私企業が、総額163億円(計画が煮詰まるにつれ徐々に増えて最終的には272億円)もの巨大プロジェクトを、戦後復興期の1950(昭和25)年に開始していたとはまず驚かされる。しかも、戦前からの官営巨大鉄鋼3社(八幡製鉄・富士製鉄・日本鋼管)の独壇場であった業界に「高炉」を建設して殴り込もうというのである。世界に通用するというより世界一を目指すという、正に百年の計と言う言葉がぴったりである反面、一見無謀とも言える壮大な企画である。そこで問題になるのが資金繰りであるが、試行錯誤した結果、世界銀行からの融資を働きかけるところは本作の山場である。世界銀行からの融資に成功し、千葉製鉄所も順調に稼働した後の展開は、ある意味では一企業の成功物語的でワクワク・ドキドキ感には欠けるが、その時々の苦境に対して毅然と立ち向かう西山弥太郎という人物の魅力に引かれる。
そういう意味では、上巻で紙数的には多く無いが、戦後の労働運動勃興期における企業全てを敵と見做して無謀な労働争議を展開した日共系労組との戦いの場面も非常に面白い。労組によるストライキに対して、労組の切り崩しと逆ストライキ(ロックアウト?)で対抗するというのは、一見すると資本家による労働者弾圧の常とう手段のようにも見れるが、基本的に労働者の立場から物を観、日頃から密接な労使関係を築いてきた西山弥太郎(川崎製鉄社長)という魅力ある人物の前には、むしろ労組側の無謀さが際立ってくるから不思議である。
要所要所にその時々の主要な出来事をさらりと付記することで時代風景が目に浮かんでくるし、著名人が実名で出てくることもあり、鉄鋼業を軸とした戦後史を概観しているようでもある。なお、永野重雄(富士製鉄社長→日本鉄鋼連盟会長・新日鉄会長)が、川鉄の千葉・高炉建設を妨害する立場でちらりと登場するのが気になった。
紙の本
強さ
2015/10/17 02:49
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投稿者:かとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
実話を元にしていながらも、主人公の力強さや意思の強さというものに感動しました
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