紙の本
気になるところもあるが、全体的には明るく楽しめる。
2015/08/20 20:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著名な建築家が建てたとされているいなかの駅舎、しかし病院をつくるためにそれを取り壊す話が持ち上がっているーという、過疎の村での騒動を描く。コミカルタッチで全体に明るい雰囲気なのがよく、それでいて今の社会に実際にありそうな設定もうまくできている。最後は離れ業的解決に持ち込むが、それもありだろう。建築物の種明かしに関わる部分もおもしろい。マイナス点は、とってつけたような官能小説的エロ場面と、空々しい恋愛要素、一人称による地の文の「~ね」という妙にフレンドリーな語り口調。
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ストーリは鳥取のローカル私鉄の駅の取り壊し問題で住民が争う物語。駅が有名な建築家(ライト)が設計したと言われているが、病院建設のために取り壊すことにした村長派と、歴史的建造物だから保存しようとする人々。主人公は村長の孫で、この争いに巻き込まれる。その中、実はライトが設計していないのではないかと主人公は気づく。その気づきの流れは唐突な印象である。気づいた経緯・流れを丁寧に描くともっと面白いと思う。村長が急死して、村長選がはじまる。立候補者は主人公と、保存派活動をしていた女性の息子。この構図も唐突感がある。話を短くまとめようとしたのかもしれない。そして、主人公は病院建設と保存の両立を考えるが、それは村長派にならざるを得ない自分では実現できないと考え、保存派側が優位になるように話を持って行く。一介の大学院生である主人公が、政治的駆け引きを考えられることに驚いた。
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電車の歴史を調べるうちに、どこまで転がる大騒動。
この作家さん、1人称でかかれるのに、醒めた3人称な視点を感じる。
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田舎の駅舎が文化財、保存か建て替えかというテーマ。
フランクロイド ライトまで引っ張り出して。
門井氏の一冊は、穏やかでとてもインテリジェンスが醸し出る。
岐阜の片田舎に巻き起る珍事に心温まりました。
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地方ローカル線の駅の取り壊しをするや否やで物語は進んでいく。
話しは全体的に面白いのだが、その場面展開が結構唐突過ぎて、無理やり感がある所が多い。
もう少しスムーズな場面展開を意識してストーリーを進めて貰うと良かった。
特にキーマンの一人の心変わりの突然感は頂けない。
3
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鳥取県のローカル鉄道のうぐいす駅には、昭和初期に著名な建築家が設計したとされる駅舎があった。
しかし、病院誘致のための駅舎取り壊し解体か、保存かで田舎町は揺れていた。
大学院生の芹山涼太は村長である祖父の命令で、駅舎の歴史を調べていくうちにある事実に気づく・・・。
若い主人公の一人称で話が進んでいくので、軽く明るいタッチでとても読みやすかったです。
主人公の涼太は、駅舎保存派の恩師筋と解体派の祖父の板挟みとなって右往左往し、あげくの果てには村長選に出馬することになってしまいます。
テンポ良く話が動いていくので出来のいいスラップスティックコメディ映画を観ている気分になりました。
歴史的建築物のうんちくや具体的すぎる選挙戦術も面白かったし、田舎独特の人間関係や過疎化事情もリアルで読みごたえがありました。
中盤までは中々楽しめました・・・が、ネタバレになっちゃうのであまり書けないけど、お話をきれいにまとめたいせいなのか終盤の展開が雑でした。
肝心の駅舎の謎についても、根拠に乏しい推測であっさりと解決してしまい不満が残ります。
また、涼太が何を考えているかよくわからないので共感しにくかった。
この理由はラストのどんでん返しのための仕掛けだったと最後にわかるのですが、もう少し工夫して描かないとただの優柔不断なナヨナヨした奴と読者に思わせてしまい、読む推進力が削がれてしまうと思いました。
あと、突然生々しい性描写が挿入されてて、びっくりしました。
これ、必要ないと思うわ~。
しかも、いかにも男子大学生の視点から成る稚拙な性描写だったので萎えました。
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「家康江戸を建てる」(まだ読んでいない)でこの作者を知り、読んでみようと思った小説。
芹山涼太という主人公の一人称で物語が進んでいく。
田舎の駅が取り壊されるという話が出てどんどん進んでいき、最後にはハッピーエンド?で終わる。
最後に物語の疑問点を回収していってよかった。
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鉄道が好きなので、ちょっと気になって読んでみました。
結構どんでん返しが多くて退屈せずに読めますね。
文体もとても軽いのですぐ読了できます。
最初は駅の保存か取り壊しかの論争に巻き込まれる学生の物語かと思いきや、駅の作者に実は謎が含まれていることが分かり、中盤になるとある出来事が引き金となり、鶯村の選挙に出馬する…そして最後には駅の作者の謎が解ける…
結構色々な所に伏線が張られていますが、複雑ではないので軽い気持ちで読めます。
飽きることはない反面、中盤から終わりにかけては急ぎ足すぎてちょっとリアリティに欠けるような気が…もうちょっと丁寧に描写してほしかったなぁと感じました。
面白いんですけど、展開がかなり早い。
しっかりと編集された番組を観てる感覚。面白いんだけど、カット部分もちゃんとみたいなぁと感じます。
それと主人公の一人称が身も心も男でありながら「私」なのも若干違和感を感じました。社会人ならともかく学生だし、家族に対しても一人称「私」だし…
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鳥取県の三セク、若桜鉄道うぐいす駅の駅舎取り壊し計画をめぐり、村長と住民グループとが激しく衝突する。
主人公涼太は、ここに巻き込まれてしまう。
村長の孫にして、住民グループリーダーの重次郎からは学問上の孫弟子にあたるからだ。
うぐいす駅の駅舎は本当にF・L・ライトの設計なのか。
そうでないなら、真の設計者は誰なのか。
私大の史学科の院生である主人公が謎解きをする。
これがこの本の一番のサスペンスかと思うと、実はそうでもない。
現役のまま頓死した村長、芹山剛造の後任の村長選が告示される。
鶯村でのデモ中に発作を起こして死んだ守る会の久世みち子。
その息子、静男が村長選に出馬する。
涼太は恋人の悠花を静男に奪われた恨みから、村長選出馬に踏み切る。
自分にとって面白かったのは、選挙戦が始まってからかもしれない。
代々村長を務める芹山家に、代々軍師(選対本部長)を務める冥加家のタッグ。
圧倒的に有利なはずの涼太と静男の勝負は、意外な方向に。
涼太の軽い性格や語り口のおかげで、分厚いわりにリラックスして読める。
改行が多く、ページ数の割には、テンポ良く進んでいく感じだ。
ライトの生涯や、日本での近代建築の保存活動など、建築に興味がある人にも楽しめる作品かな。
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鳥取県に実在する第3セクター鉄道、若桜鉄道を舞台としたローカル線(または沿線地域)再生の物語…を想像して読んでみましたが、全然違っていました。これ、実在の鉄道を舞台にする必要はあったかなあ。若桜鉄道を積極的にPRしている訳でもないし、実際の沿線風景に触れる訳でもない。若桜とライトって現実にも関わりありましたっけ?
そういう馴れ初めというか、執筆の経緯は読者に知らせて頂きたかったです。解説はおろか、あとがきも無いってちょっとどうなんでしょう(単行本にはあるのでしょうか)。
で、肝心の内容ですが、大くくりすれば主人公の成長物語なのでしょう。しかし、焦点がローカル線にあるのか、近代建築にあるのか、地方選挙にあるのか、恋愛模様にあるのか(悠花ちゃん最低)、そこがイマイチはっきりせず散逸な印象が拭えませんでした。描きぶりは面白くてぐいぐい読み進んだのですが、結局何の話だったのか、と時間をおいて振り返るとどうにも思い出せないのです。
まあ人生の軸なんて1本に定められないですからね。翻弄された挙句人として一皮むけた、というのはある意味リアリティがあるのかもしれません。