紙の本
ユビキタス?快読SF
2001/08/27 11:20
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しょいかごねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ディックの作品の中でも非常に楽しんで読める小説だと思う。異形のエスパー集団、訳のわからないパラレルワールド、最後まで解けない謎、どんでん返し、なおかつディック特有のなんかよくわかんない部分など、エンターテインメント性をふんだんに備えた快読SFである。
さて、SF顔負けの変化を続ける現代のコンピュータ社会であるが、最近ユビキタス・ネットワークという用語をたびたび耳にするようになった。このユビキタス(ubiquitous)という単語は、神の偏在、という意味らしい。どうも変な神学用語を使って素人を煙に巻くための策略としか思えないのだが、実は作品中にも述べられているように、このユービックという言葉も、同じ単語(の名詞形、ubiquity)を語源にしている。
本書は別にコンピュータネットワークとは全然関係ないけれど、使っているパソコンやソフトが瞬く間に古くなって使えなくなるこの御時世を、全てが退行してしまう世界で特効薬ユービックを探し求める主人公達の姿に重ねてみるのも面白いかも知れない。
紙の本
ディック入門書として最適かも
2016/07/25 01:52
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「電気羊」より「高い壁」より本作がディック作品の入門書として最適なのではないかと思う。初見当時より今の方が好きになれそう。
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おいおい、ユービックといえばあごだろう。ア・ゴ。
どうみても髭を剃るのは不可能と思われるあばただらけの、しかも左右に割れたあご。
カバーからは絶対に内容を推し量ることは不可能だ。つい買っちゃうだろ。
なんでカバー絵を変えるのかな?
早川のなかでも最悪ともいえるカバーを変えるなよ。中西の苦労も分かってやれよ。こんな内容の小説でカバー絵なんて思い浮かばないよな、普通は。そこを無理やり書いているんだから、永く残してやれ。それが注文した側の義務だろ。
今回読み直したのは、当然、初版のあご表紙だ。新表紙じゃないからね。
あご表紙じゃない画像が表示されるから最低ランクとする。
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子供のころ読んだ電気羊以来のディック作品。
仮想現実という言葉すらなかったころにこのセンス、とても半世紀前の作家とは思えません。
シビレルわあ。
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この本はSF+ミステリーというジャンルとして認識できると思う。
ただ、一般的にミステリーというのは線形に物語が進んでいくと思うが、
この小説は線形とは言い難い物語の展開を見せる。
簡単に言うと途中から小説の中の世界同様、崩壊が始まっているように感じる。
それは悪くはないのだけど、注意深く読まないと流れを読みづらくなると思う。
読者にも「何が問題か」におびえるジョー・チップの心情がよく伝わるのではないか。
本書は書かれた年代が年代なので、現代のSFに比べると若干の古臭さを感じる点はある。
しかし、その点を含めたとしても十分に読み応えのある物語だ。
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書かれた年代にこの近未来感を想像できるセンスに脱帽。「バーチャルリアリティ」という言葉に珍しさを感じない今でも古びていない世界観。そこそこミステリータッチのストーリーも良かった。
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はじめて読んだディック作品がこれでした。映画的で読みやすいし、オチも古典SF風でわかりやすい。なんでヒロインがこんなに恐いの?とびくびくしながら読んだのも今では良い思い出です。
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今回は、時間退行現象。
やはり時間軸がおかしな事になり、
読んでいて気持ち悪く(気持ち良く?) なる。
全体として、珍しくストーリーがつながっており、
大きな破綻も無く読み易い傑作。
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超能力者による産業スパイ活動が日常茶飯事となっている近未来。超能力者集団の怪しい動きを阻止すべく集められた不活性者(超能力者の能力発現を阻止する能力を持つ者、いわば「反超能力者」)達を率いて月面に乗り込んだジョー・チップは、敵の返り討ちに遭って雇い主ランシターを失ってしまう。大きな痛手を受けて地球に帰還した彼らが見たものは、あらゆるものが古び朽ち果ててゆく恐るべき時間退行現象に見舞われた地球の姿だった。退行現象を止められるのはただ一つ、「ユービック」と呼ばれる謎の物質のみ。不活性者たちも一人、また一人と退行現象に巻き込まれて死んでゆく中、何とかこの現象を食い止めようと奔走するジョー。果たして時間退行現象の原因とは、そして「ユービック」とは?
うひゃー、やられた。面白いですわ。
冒頭の超能力者集団と不活性者集団の対決に至るストーリー展開で、これは手に汗握る超能力アクションが繰り広げられるのか!?と思いきや、この設定は途中からどうでもよくなりますヽ( ´ー`)ノいやホントにヽ( ´ー`)ノ。この「不活性者」というアイディアだけで充分SFが一本書けると思うんですけどね、ディックにはそんなことどうでもいいんですねぇ(笑)
それよりもキーポイントになるのが、同じく冒頭に登場する「半生者」というもの。事故や病気で死にかけている人間を冷凍棺桶にブチ込んで死期を引き延ばし、遺族や関係者が必要な時にだけ、脳を活性化させてマイクを通して会話できるようにする。生者の都合で脳を活性化させられるたびに死へと近づいて行く、死んだわけではないけど生きているとも言えない存在です。この何とも気色悪い(ディックらしいとも言える)存在が最初にちらっと登場するのですが、これが後々大きな意味を持ってきます。
ストーリーはディック作品にしてはかなりスムーズに読める方で、SFサスペンスとして、ちゃんと破綻なくまとまってます。とはいえ、物語全体に漂う不穏なムード、そこかしこに登場する薄気味悪いガジェットなどは実にディック的。時間退行現象が始まってからの重苦しい閉塞感に満ちた描写は、読んでるこちらも息が詰まってくるぐらい重い重い。救いがないのに前向きなラストも印象的。
またこのラストがねぇ。それまでの謎が解けて一応スッキリしたなー、と気を緩めたところにえっ!?Σ(-Δ-;ですよ。ディック節炸裂ですねぇ。
前回紹介した「虚空の眼」よりもディック臭が強い作品だと思います。でもかなり読みやすいので、初心者にもお勧め!(-_☆
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ディック入門として最適とされる見事な傑作。時間退行現象という現実崩壊っぷりが楽しく、読んでいる自分まで「今、自分は本当に現実を見ているのか」という錯覚を体感できる。ところで『インセプション』を観たときに思ったんだが、クリストファー・ノーランはこの作品のファンではないだろうか。★5
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カバー裏のあらすじがネタバレです・・・
内容はすごく読みやすくて面白かった。夢と現実がごっちゃになりそうな感覚がたまらない
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SFの長編小説をがっつり読んだのはたぶん初めてだったけれど、おもしろくてするする読めた。今までちょっと避けがちだったのがもったいないと思ったくらい。
ディックはブレードランナーの原作者として有名だけど(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)、このユービックの方がディック初心者向きらしい。
SFってパキっと明るいものだとちょっと思ってたけど(思い込みだらけ。。。)、ディック特有なのかは分からないけれど退廃的な印象も強かった。特に中盤あたりのゆるーい絶望感。それがSFと絡み合うと絶妙なんだということを初めて知った。
物語としては、SFだしきちんと読み進めないと途中で分からなくなる系統だと思うけど、それでも一気に読めてしまうのは、ミステリ系を読んでるときの感覚に似てる。
止まらない時間退行、仲間の死…それを食い止められるのは“ユービック”だけ。しかし“ユービック”の正体とは一体?
SFって文章で読んだ世界が映画みたいに映像として浮かんでくるものなんだ…と目から鱗でした。
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借本。
著者の本はこれが初めて。
濃縮されたSFって感じで、読後はグッタリでした。
面白いけど、いい意味でSFすぎて疲れました。
次は、「アンドロイドは~」を読むとします。
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学生時代に読んで、それから何度か読み返した作品。P・K・ディックのなかで一番好きかも。今なら映画化も出来るんじゃないかと思ったりするんだけどな〜。その他の作品では「逆さまわりの世界」と「火星のタイムスリップ」がお気に入りです。
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電車の中でちまちま読んで、先日読み終わりました〜。
いや〜〜、カバー裏のネタバレっぷりねw
私はもともとやる夫スレ(たまにものすごい作品がある、クオリティから話のテンポからミスリードまで)で読んでたのでだいたい分かってましたが、これ初見だったら何がなんだかわからんやろうな〜(笑)
でもすっごい好き。なんかしらんけどすっごい好きな作品。
SFの面白さを再認識したのは小林泰三の『海を見る人』や『玩具修理者』の「酔歩する男」。
中学生のときブラッドベリの空飛ぶフライパン?かなんかを読んで『SFって面白いな〜』以来SFから遠ざかってたので、数年間くらいはSFを読んでなかったな。
まず『ユービック』ってタイトルがいいよね。ディック作品のタイトルがどれもキャッチーなのは翻訳者によるものかどうなのか。
ともかくとして、『ユービック』はすっごい好きです。
その近未来的表現であるとか、独自の専門用語であるとか。
よく考えつくよな〜、としみじみ思う。
あと、たまにすごく好みの表現があって、
特に――ホリスの眼の表現(133p3行目『その両眼は、傷物の(漢字変換されませんでした)の宝石を思わせた。輝いてはいるが、カットのしかたがおかしいのだ。まちまちの方角に光が反射されるのである。』――が好き。
あと、ジョーがだんだん力尽きていく表現とか好きです。
パットの性格やジョーはなぜそんなにも貧乏だったのか分からんけど、気持ちのいい酩酊感でした。
お気に入りです(*^_^*)