- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
終りなき戦い みんなのレビュー
- ジョー・ホールドマン (著), 風見 潤 (訳)
- 税込価格:990円(9pt)
- 出版社:早川書房
- 発行年月:1985.10
- 発送可能日:購入できません
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
戦争の本質ってこんなモンです。
2005/06/18 20:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者が軍隊での訓練中に耳にした言葉が発端でした。
「今夜は音を立てずに人を殺す八つの方法を教授する」
そしてベトナムへ行き退役し、この作品を書き上げます。
この作品には縮潰星(コラプサー)という特異点を利用して
空間的にジャンプする超光速航法が出てきます。
ジャンプするために亜光速が必要になりジャンプした先の
縮潰星が準光速の場合もあり相対性理論のウラシマ効果によって
出発地点との客観時間がズレていきます。
1996年に入隊した主人公のマンデラくんは、
2回のジャンプで10年ほどズレます。
終戦を迎えた時には1143年のズレ!
現在から1000年前を考えてください。
日本では平安時代ですよ。平将門ですよ!
政治も文化も全く異なっていますよね。
この作品の世界では終戦までに男女平等が確立し、
体外受精や生育技術、クローン技術までが完成したために
フリーセックスから完全同性愛社会へ移行します。
異性同士の恋愛は精神的障害(変態か気○ガイ扱い)と
見なされ自然出産や老人などは社会的な害悪とされていきます。
強制的に隔離され一生を過ごさねばならないのです。
ハインライン先生の「宇宙の戦士」と比較されることが多いのですが、
読んでみると本質は違う感じを受けます。
過酷な訓練、悲惨な戦闘シーン、戦闘服と呼ばれるパワードスーツ。
でも、兵士という軍隊の歯車になりきれず、個人の感情を持ったまま
時代に社会に取り残されるマンデラくん、、、。
守るべき社会との接点も見出せず、年老いた肉親も助けられず
愛する女性とも任務の都合で引き離され、
(ウラシマ効果のため別行動をすれば数十年単位で時間がズレます)
行き場所がないため仕方なく軍隊で戦い続けます。
泥沼のような戦争が続くのです。
作者がベトナム戦争の経験者であるからか、
戦争の悲惨さ、虚しさ、バカバカしさが全面に出ています。
未来の見えない戦いに駆り出される情けなさ、、、。
何のための、誰のための戦争なのか?
実情が理解できてくるにつれて読むのが辛くなる作品です。
実際、第2次大戦時、私の祖父は病弱で泳げないにもかかわらず
海軍に徴兵され帰ってきませんでした。
どんな戦争も犠牲者が出ることは避けられないのです。
しかし、終戦を迎え本当にささやかですがマンデラくんに
ハッピーエンドが用意されているのが救いですね。
(良く考えると違う気もしてきますが、、、)
紙の本
永久戦争
2001/12/01 05:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
異星人トーランとの1143年にも及ぶ無意味な泥沼の戦争を描き、ヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞した戦争SFの傑作。
さまざまなSF兵器を駆使した手に汗握るカッコイイ戦闘を繰り広げつつも、戦争の無意味さ、虚しさ(というより、戦争のマヌケさ、アホらしさと言った方がしっくり来る)を冷徹な視点で描き出している。
出撃するたび、兵士たちはウラシマ効果で時代に取り残されてゆく。
自分がそこに属し守っていたはずの人類の文明は、次第に彼らにとって異質なものとなってゆき、やがて、唯一軍隊のみが親しみを感じられる存在となってゆくのだ。まさに手段と目的の倒錯。なんという狂気だろう。
歩兵を扱い、パワードスーツを主要なガジェットとして扱った作品として、ハインラインの『宇宙の戦士』と並び称される作品であるが、真に優秀な人間たちによる真に優秀な軍隊を描き、そして敵さえも敵として真に理想的な理想の戦争を追求した『宇宙の戦士』と比べて、本作品ははるかに泥くさく、はるかにリアルである。
そしてこの作品は、SFならではのラヴストーリーを描いた作品としてもよく言及される。感動的なラストにはジンと来るであろう。
SF者は必読です。
紙の本
ベトナム戦争経験者である作者が描く未来の宇宙戦争
2005/07/26 07:33
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類は新しい宇宙航行法コプラサー・ジャンプを手にし、地球外へ開拓団を送り出す時代を迎えた。しかし、この航行法で宇宙を行く一隻の地球船が異星人トーランに攻撃されてしまう。地球とトーランとの間に、いつ終わるとも知れぬ全面宇宙戦争の幕が切って下ろされる。
主人公のウィリアム・マンデラ二等兵は戦地へ赴くためにコプラサー・ジャンプを繰り返すうち、体感時間は数ヶ月であるにもかかわらず、実際の地球では数百年が過ぎ去るといういわゆる「ウラシマ効果」に巻き込まれていきます。地球に帰るたびに家族は急速に老い、やがて友人のすべてを時間のかなたに失ってしまいます。
そして軍隊生活では人工的に植え付けられた憎悪に突き動かされ、殺し続けることの中に「心温まる光景」を見ることになります。
それにしても敵星人であるトーランはその描写が極度に希薄です。マンデラのみならず読者も、地球は一体全体いかなる敵を相手にこの果てることなき戦争を続けているのかがまるでわからなくなります。戦争というものが、<大味>と形容したくなるような大義を胸に殺し続けることであることを伝えるのがこの物語の肝なのでしょう。
そしてこの戦争が、地球経済が必要としていた「願ってもない戦争」であることが最後に明らかにされます。ジョージ・オーウェルの「1984年」が繰り返し唱えた「戦争は平和だ」の教えがここにも見られます。
フリーセックスの1970年代に生まれたマンデラが1200年という時間を生きるうちに、地球は同性愛者だけの世界、そして生殖活動が一切行なわれない世界へと変貌を遂げていきます。しかしこの物語は最後に、セックスがやはり人間にとって生きるための芯であることを、ちょっと小粋な形で示して見せてくれます。
紙の本
縮潰星ジャンプのはてに。
2000/09/16 17:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊藤克 - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭で、ベトナム戦争を意識して書かれた作品であることを作者自ら書いている。
忘れられつつあるベトナム戦争であるが、不安定になりつつある世界の勢力圏を思うと、我々の周りがあまりにも平和すぎる様に感じる。
確かに、戦争のむなしさ、悲しさをこの本は物語っている。
しかし、高速を越えた航法(縮潰星ジャンプ)の影響で戦場(惑星)から戻るたびに、数十年、数百年たっているという(SF小説の定番ではあるが)ナンセンスとも言える物語運びは理屈抜きにおもしろい。
そんな時間のゆがみを越えて恋を貫こうとする恋人のとった手段…
一種の謎解きである。