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直接登場する殺人は一度きりとストーリーは少々地味。混み入った過去が露わになる過程で次々現われる、ひと癖ある人間たち。
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一人の失踪事件を発端に、次々と明らかにされる驚愕の真相。そして一番の驚愕はなんといっても犯人の正体です。
タイトルの通り「さむけ」のする真相ですが、そのさむけは女の執念になのか、男の永い狂気の生活になのか、幾重にもからまった人々の悲劇になのか。
幾つもの事件が絡まる上に、登場人物たちがあっちでもこっちでもつながっていて混乱しますが、読みやすい文体で一気に読めました。
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チャンドラーの後継となるハードボイルド作家ということで、どうしてもロス・マクドナルドの描く本作の主人公『リュウ・アーチャー』とチャンドラーが生み出した『フィリップ・マーロウ』とを比べてしまう。
本作のアーチャーは、物語を通して実に客観的でノスタルジックであり、それでいて俗っぽさのかけらもない。
マーロウが人情的で皮肉たっぷりに相手に囁いても、どこか憎めなかったのに対して、アーチャーにはそうした人間らしさが感じられないのです。
しかし、そこがまた良い。
本作では、新婚旅行中に失踪した花嫁の行方を追うところから物語は始まります。
わずか1日だけの花婿アレックスは私立探偵アーチャーに、彼女の捜索を依頼します。
彼女を探すうちに起こってしまったある1人の女性の死が、物語を思わぬ方向へと導いていくのです。
本作を端的に言い表すとするなら。
現在目の前で起きていることは、全ての過去の積み重ねであり、未来とは必ずしも全ての人の前に平等に開かれているものではない。
こう言えるのではないでしょうか。
物語をとおして、ある2人の人物が起こしてしまった長い物語の結末。2人を除く全ての登場人物は、彼らの愛憎と嫉妬に巻き込まれた普通の人だったのに…という、やりきれなさが読了後には残りました。
アーチャーが依頼人であるアレックスに『この瞬間、わたしはアレックスを初めて好きになった』と、好感を持つ場面。
本作を通じて、一番好きな場面です。
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リュウ・アーチャー・シリーズ
結婚直後消えたドリー・マギー。夫であるアレックス・キンケイドの頼みで捜査に当たるアーチャー。ドリーの通う大学の補導部長ブラドショーの家で運転手のアルバイトをしているドリー。ドリーと接触していた謎の男チャック・ベグリー。ドリーの父親起こした母親殺人事件。裁判で証言したドリーのトラウマ。殺害された大学教師ヘレン・ハガディ。ドリーの部屋から発見された凶器の拳銃。精神科医ゴッドウィンにかくまわれるドリー。ヘレンの故郷で起きたデロニー殺人事件。デロニーの恋人だったレティシャ。レティシャと恋をして結婚していたブラッドジョー。戦争中にフランスで死んでいたレティシャ。ブラッドジョーと不倫をしていたドリーの母親。3つの殺人事件に関わるブラッドジョーの恋。
2011年10月1日読了
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生涯、読んだミステリーの中でベスト5に入るだろう傑作。複雑な人間関係、男女の情念、地位への執着、過去と現在を行き来するプロットを見事に料理し、納得のゆく結末。すべての登場人物に個性があり、作品に緊張感がある。題名の「さむけ」は、読後数時間たってから感じた。翻訳は若干古臭い気もするが、50年代末を舞台とする作品の雰囲気には合っているかもしれない。ミステリーファンは必読。ただし、作品が複雑なので一気に読んだようが良い。
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ラストで真相が分かった時、思わず声が出るほどに驚いた。(ホントに出た。)犯人の執着心があまりにもこわい。。
この犯人の病的な考え方が、周りに伝染していたかのようにも思える。そう考えるとまた恐ろしい。
町には常に霧が立ちこめているし、ストーリー自体、ちょっと湿っぽい。なので、ごく稀にアーチャーが友人と交わす冗談にほっとした。
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最後の一行が驚きだと言われてたが、最後の一ページだな。大体真相がわかる。
捜査過程が最強すぎる。
十推仙にはぎり届かない。無冠くらい。
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新婚旅行のさなか失踪した花嫁を探すように依頼された探偵――。
と、ハードボイルド小説ならばよくあるような「失踪人捜索」からはじまる物語ですが、あれよあれよといううちに読み進め、そのラストの一ページにはぐうの音も出ませんでした。
ほんとうにタイトル通り「さむけ」を感じずにはいられない作品です。
この本のおもしろさとネタバレが密接につながっているので、曖昧な表現でしか感想を伝えられないのが歯がゆいです!本当に「読んでください」としか言いようがありません。
レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウもいいですけど、私はロス・マクドナルドの描く私立探偵リュウ・アーチャーのほうが好きだったりします。どちらもタフで優しい男ですが、アーチャーの厳しい「真実」を直視して、決して目をそらさないところが最高にいい男だと思います。
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エアミス研の某氏より、新品でいただきました。
(とってもうれしかったです。本当にありがとうございました)
■評価
「人物の関係図を書きながら読むとわかりやすいよ」
といわれたのでその通り書きながらやってみました。
確かに、作中でどんどん人物がつながっていく…!!!
本書は、主人公リュウが、最初にあらわれる「ミセス・キンケイド失踪事件」」を追いかけることがメインになっていながら、登場人物たちの過去を掘り起こしていくうちに第二、第三の事件が現れ、それらが絡まり合い、最終的にすべての真相があきらかにされるという構造になっている。
何層にも重なっていながら、混線も取りこぼしもなく、最後の一文に向かって綺麗にまとまりながら収束していくさまは非常にスマートでうつくしい。
京極夏彦の「絡新婦の理」に、構造は多少似ているかもしれない。
音楽でいうと、まるでフーガかソナタのようだ。
お勧めされた際に、「ロスマクのハードボイルド=探偵が調べるうちに、簡単に見えた事件から、一家の奥底に秘められた秘密やどろどろした内情が明らかになっていく」というお話をうかがっていたので、そんな点にも注目しながら読んだ。
まさしくそのような感じ。
どろどろといっても、本書では乱歩のようなどぎついえろはなく、「因果」「忌まわしい過去」とでもいうようなもの。…事件そのもののエグみの薄さは、横溝文学にも似たものがあるように感じた。
事件の渦はあちこちに余波を与え、さまざまな意外な事実が章ごとにどんどん明らかになっていく。あちらにこちらにと振り回される探偵リュウとともに、読者の興味も失速せずに物語をすみずみまで駆けまわされることになる。中だるみさせずに最後まで惹きつけてくれる筋書きはなかなかのもの。
一番の驚きところは、「最後の一文」でしょうか。
これだけ振り回されたあげくにこの結末。
しかもそれを、最後の数行で説明しきってしまう。
まったく見事です。
非常に美しい収束だと思いました。
こういうところも、「絡新婦~」に類似していると感じました。
■感想
相関図を描いていたはいいものの…
全体的にカタカナの名前が覚えられず、何度も人物紹介を見返してしまいました。(高校生のころは世界史も苦にならなかったのに!)
普段、海外ミステリを読みつけない弊害が出たようです。
また、翻訳ミステリならではの興味点として、
面白い訳がある部分は、「原文ではどうなっているのかな~」と
気になりました。
ラテン語での言い回しも散見されましたね。
付箋をはっておいたので、あとであらためて引いてみようと思います。
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5
終盤のじわじわと真相を明らかにしていく見せ方が、まさかまさかという心理を刺激し続ける。ある種の不気味さと張りつめた気配をまき散らしながら、結末に着地した瞬間。驚きと安堵とカタルシスが渾然一体となった、複雑ながらも心地良い読後感に包まれる。
読了後、本を閉じ、タイトルを見て、ただ頷くのみ。
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4.15読了。複雑なプロットで、最後までカラクリはわからなかった。まあ面白いけど、めくるページが止まらないて感じじゃない。
なぜか読んでると眠くなって、何度も寝てしまった。
自分的にはチャンドラーのクールネスはハメットの豪放な主人公のほうがしっくりくるかな。
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ハードボイルド小説として有名なこの本。
人間関係がとても複雑で、登場人物もそれなりに多く読むのに結構時間がかかった。
それでも魅力的な主人公、段々と明かされていく秘密、印象的な最後の一文。
これが、冒険小説を読む醍醐味なんだなと認識。
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「おっさんになるまでハードボイルドなんて読むものか」と思っていたのですが,おっさんになったので最近は少しずつ読むことにしています.読んで驚いたのですが,この本は本格ミステリィです.容疑者は二転三転し,最後にはとても重たい真相が待っています.ぜひとも最後まで読んでほしい作品です.
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探偵リュウ・アーチャーの元に新たに舞い込んだ依頼は新妻の失踪事件というものだった。ほどなく居所は分かるが、彼女が殺人事件に巻き込まれてしまい…
探偵の失踪人探しという出だしに、事件に対し過剰な感傷を挟まない文章、時々挟まれる小気味いいアーチャーと登場人物たちの会話など、「チャンドラーの後を継ぐ」と呼ばれている作家の作品だけあって確かにハードボイルドらしい雰囲気が楽しめる小説だと思います。
過去の事件を追っていくことに話の軸が移っていき、それに伴い証言を集めることが中心になっていくので、少しその過程が退屈だったことや、
行方不明となった新妻の話がちょっと中途半端に感じてしまったのが残念でしたが、
ラストに明らかになるある人物の狂気にはタイトル通り確かに”さむけ”がしました。
最後の最後までなかなか事件の全容が明らかにならず、「もうページ数もないのに決着を着けられるのか」と勝手に心配しながら読んでいたのですが、その不安は杞憂でした(笑)
少ないページ数ながらしっかりと人の狂気とそれを向けられた人物や事件の皮肉さを、最後の数ページでしっかりと書き上げているのが非常に印象的でした。
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文春100にもランクインしていたので、買ってはおいた。
ハードボイルド、という事でなかなか気が進まなかったけれどこの頃の寒さの中新たにほかの本をてにすることもないかなぁと深くも考えずに。
これは最後まで読んでみなければ分からなかった「さむけ」ですね、。まさしく!