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紙の本
不気味な料理人の奇妙な物語
2004/01/01 23:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇妙な物語である。無粋を承知であえてジャンル分けするとすれば、ダーク・ファンタジーといったところか(ホラーというほどではない)。
時代も国も特定されていない、ある田舎町が舞台。コンラッドという謎めいた料理人がふらりとやって来て、町の名家に雇われる。コンラッドはその不思議な−というか不気味な個性と魅力で、徐々に周りの人々を虜にしていく。
コンラッドがのし上がっていく前半はなかなか小気味良いし、彼のたくらみが次第に形を成してくる中盤は、ゾクゾクするほどおもしろかった。だがその後、特にひねりも波乱もなしに終わってしまうのが、尻すぼみで惜しい。また、これはあくまでも個人的な好みだが、結構カッコ良かったコンラッドが、最後にはものすごくカッコ悪くなってしまうのも気に入らない!
紙の本
心惹かれる魔法の料理。その秘密とは?
2001/06/17 21:53
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投稿者:川原 いづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平和な田舎町コブに現れた料理人、コンラッド。名家ヒル家にコックとして雇われた彼は、舌もとろけるような料理を次々に作る。彼が作った料理を食べると、肥満で悩んでいた者は痩せ、痩せている事に悩んでいた者は太り始めて…その不思議な料理はすっかり評判に。
料理人コンラッドの姿から思い浮かべたのは、「仕事がミスなくバリバリにできるんだけど、性格が悪いからあまり一緒にいたいと思わない上司」。冷酷かつ高慢な言葉を放ちつつも、作る料理はパーフェクト。雇い主もすっかり彼の料理の虜に。その描写を読むと、実際にその料理を食べてみたくなる事請け合いです。中でも印象に残っているのは、「猫食」。猫のために作られたスープの中に小さな鼠の形の練りものを浮かべた料理。そのレシピが書いてある「猫食の本」が料理人コンラッドの部屋にあるんです。もちろん、それ以外の料理本もその部屋に。いったいどんな不思議レシピの本が? 想像するとドキドキしちゃうなぁ。
すっかりコンラッドの料理に魅了された雇い主、ヒル家の人々が辿る顛末は…? 結末が、これまた不思議な味わいの小説です。
<初読:99/10/23>
紙の本
辛いのがお好き
2001/03/27 23:17
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつどこから来たのか。平和な町に突如現れた謎の料理人。悪魔の腕を持つ名料理人の下もとろける絶品料理。ところがこの料理には秘密があって…。奇想天外な名コックが巻き起こす大騒動に、辛口のブラックユーモアスパイスをぜひに。イギリスでは映画にもなったらしいのですが、日本では公開されなかったようですね。
紙の本
奇妙な味
2002/12/24 00:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんというか、「奇妙な味」としかいいようのない、ちょいと類例の思いつかない作品である。
料理の腕は抜群だけど、だからこそ、か、より高級な料理を完成させることしか関心がないようなのっぽの料理人が、ある田舎町を舞台に、自分が存分に腕を振るえる環境を整えるためにありとあらゆる手段を使って他人を蹴落とし、のし上がっていく。という、一種のピカレスク物なんだけど、主人公の料理人の書き方、とくに美食に駆ける情熱が半端なものではなく、ほとんど超自然的な閾にまで達していて、かなり悪辣な手段も使って他人をおとしいれたりするのだが、そういったことにあまり陰惨な印象をうけるということもなく、淡々とした文章と相まって目的のために手段を選ばない、呼んでいて一種の「透徹な透明感」とでもいいたくなるような感銘さえ受けるのである。
ちなみに、料理に関する蘊蓄は実は少な目。その手の情報を欲するグルメさんにはオススメできんかも。
紙の本
みんな悪魔の手の下に。
2002/04/20 23:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
料理と怪奇はなかなか相性がよいらしい。例えば『妖神グルメ』(菊池秀行/ソノラマ文庫)、『怖い食卓』(アンソロジー/北宋社)、それから題名を失念したが『美味しんぼ』の原作者による作品(角川ホラー文庫)もあったりする。藤枝静男の『空気頭』もお仲間に入れていいかもしれない。そして不思議なことに、料理と怪奇の合体した小説は、なぜかみんな少し滑稽なのだ(これは、きちんと考察すべき事実だろう)。
そんな料理怪奇小説群の頂点に立つ、この『料理人』という作品は、経歴不詳の作者によるブラックで皮肉な怪奇長編である。コブという静かな町に訪れたその料理人は、町の人みんなを彼の料理の支配下においてしまう。彼は、デブデブの娘をガリガリに痩せさせ衰弱死させてしまい、痩せていた娘をとてつもない肥満女に変え、その肥満女と結婚し町の支配者となって君臨する。
彼は間違いなく悪魔だし、彼の料理の手際はまさしく悪魔のわざだ。映画『バベットの晩餐会』の晩餐会は一回こっきりの崇高な芸術作品だったが、彼の晩餐会は町の富を食いつぶしていつまでもいつまでも続く。食べ続け、飲み続け、吐き戻し…食欲は、やはり悪魔の支配下にある欲望のひとつなのだ。
紙の本
狙いがわかるとぞっとする不思議ストーリー
2002/05/30 11:22
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投稿者:Lady - この投稿者のレビュー一覧を見る
名作、という評判だけは聞いた事があったのですが、やっと手にとりました。
読みはじめると、はて。平和な町の田舎紳士の屋敷に、ひょろりとした料理人が現われる。彼の作る絶品料理に、誰も彼もが夢中になる。
というだけの話?
これのどこがミステリーだ、と首をひねりながら読んでいたのですが、次第に漂いはじめる不吉な予感。最後まで、ページをめくる手がとまりませんでした。
なるほど。名作ミステリーです。
紙の本
魂を絡めとる至高の毒。
2002/07/03 13:37
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投稿者:本箱屋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
多くの著名人の手による完璧な推薦状を携えて、
コブの町にやってきた料理人、コンラッド。
ヒル家に雇われた彼は、退屈な食卓を劇的に変容させていく。
時折、激しく人を罵りさげすむ料理人の姿に、
奇妙な不安を抱きながらも、作中の人物と同様
彼と彼の作る料理の虜になってゆく。
やがて訪れる終焉…いや宴は続くのだ。コンラッドにひれ伏し
その魂をささげたものにとっての、永遠の宴が、あの城で。
排除されずに、とり込まれた幸運をかみしめながら。
甘美な毒にその身を沈めて。