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土木学会100周年(2014)を機に、高橋裕先生が著した一冊。
古市公威のことは知っているようで十分知らなかったが、山県有朋との関係(仏国出張に随伴し、その後土木局長として重用されたとか)は初めて知った。
古市にしろ廣井勇にしろ、寸暇を惜しんで勉学し、人間性を磨き、だからこそ後世に伝わるほど活躍したのだろう。
明治期の土木技術者たち(本書にでてくるような著名な方々)はみな、高尚で純潔な倫理観と志をもって仕事していたことを、改めて思い知る。
とりわけ、社会や世の中を愛し、住民を想い、技術で自然の脅威に対峙せんという心意気を。
また本書の後半半分は、著者高橋なりの総括を兼ねて、今後のインフラ整備へのメッセージが記されている。
多くの新書や川についての著作においてもしばしば語られてきたが、今時点での思考のエッセンスをまとめたものとして貴重。
(河川の現場にいる今だからこそ自分の心に響くものも多い)
特に、流砂系管理(佐久間ダムの堆砂)をシンボルとして、インフラ整備の「副作用」(マイナス)をなくすことの意義を語っているのには、身震いさせられる。
他にも、河川の現場やその変状をよく観察すること、破堤や歴史的治水遺産等をまっさきに学ぶこと・「引き継ぐ」こと等、どきっとさせられる。
「引き継ぎ」には活かそう!