紙の本
結局、泣いちゃった・・・。
2016/04/16 16:28
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
実は通勤電車の中で別の本(ケイト・モートンの『秘密』)を読んでいて、それが佳境に入って泣きそうになる予感があったので、あわてて本を閉じ、カバンに入れていたもう一冊のこの本に切り替えた。
6編入りの短編集。
が、冒頭の『トオリヌケ キンシ』がまた・・・泣けてしまう話、なのであった。
で、その日はいさぎよく<泣いてしまうこと>を受け入れた。 最寄駅に着いてもホームのベンチに座って読みふけってしまった。
この本、連作短編ではないが、最後の話で他のエピソードの登場人物が出てくる(明確にわかる人と、もしかしてそうかな?のレベルと)おまけつき。
『トオリヌケ キンシ』・『平穏で平凡で、幸運な人生』・『空蝉』はほぼ同じ構成。
幼き(若き)日のエピソードから始まり、その後成長した主人公たちがあの日々の記憶によって救われる。
誰もわかってくれないという苦しみを抱えつつ、自分の思い込みが自分の首を絞めているということにも気付かないほど痛めつけられた過去を持つ人たちに、さりげなく訪れる救い。 そこに、つい泣いてしまいました。
時間軸の移動はそんなにないが、残り3編『フー・アー・ユー?』・『座敷童と兎と亀と』・『この出口の無い、閉ざされた部屋で』も、いろんな事情で「他の人には理解してもらえない」ことを抱えている人々の物語。 そこで自棄になるのも若さ故だし、ついお節介したくなるのは年長者の証かな。
全体的に、加納朋子節が全開!
『この出口の無い、閉ざされた世界で』は冒頭、非常に吉野朔美的でどぎまぎしてしまったけれど、中身はどの作品以上に加納朋子だった。
個人的には『トオリヌケ キンシ』と『空蝉』が特に印象深いかも。 泣いたから、というだけではなくて、後味のよくない内容を取り上げておきながらそれでもやっぱり読後感はよろしいから(その点、若竹七海と真逆なのだが、私はどちらも好きです)。
もともと多作な人ではないが、結婚して子供を産んでから作品の発表ペースは落ち、病気してから更に落ち、回復に伴いちょっとずつ発表ペースが上がってきたのは大変よろこばしいことです。
ただ・・・病気が理由ならば仕方ないと受け入れられるのが、結婚・出産は作者本人が自分で決めて選んだことだからとわかってはいるのだが、夫君も作家であるのでなんか微妙にムカつく部分があるのはファンの感情としてお許しいただきたい。 だから貫井徳郎の作品は読む気になれない・・・(この人の刊行ペースは全然落ちないどころか上がってるもんね!)。 勿論、生活を支えるという意味では片方の仕事量が減るのならばもう片方は増やしていかないといけない、というのはわかっていますよ。
でも、作家はサラリーマンとは違うから!
かわりのきかない仕事ですから。(2015年1月読了)
紙の本
ファン向けの心安らぐ短篇集です。
2017/12/25 22:34
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
加納朋子さんは追いかける対象の作家さんです。
優しい雰囲気の作風と、どきりとする場面、日常の謎の要素に
魅力を感じています。
六篇の短篇集です。設定や展開に都合がよすぎるところが
ありますので、ファン向けではないかと思います。
ファンの方ならば、少々の強引な部分もうまくスルーして、
作品のよい面を拾われると思いますので。
表表紙の見返し、つまりカバーの折り返してある部分に
セリフが書いてあります。
> とにかくね、一度でいい、愛の告白ってものをしてみたかったの。
うほっ。どの作品に入っているのでしょう。
期待が高まります。
一作目は表題作の「トオリヌケキンシ」。
田村は、その札を見るたびに心の中がざわついていました。
学校でおもしろくないことがあった日、突如、通り抜けて
やろうという気持ちになったのでした。
二作目以降の題名を書き留めておきます。
「平穏で平凡で、幸運な人生。」「空蝉」「フー、アー、ユー」
「座敷わらしと兎と亀と」「この出口の無い、閉ざされた部屋で」
日常に落ちてきた非日常。
せつなくなったり、哀しくなったりします。
でも、最後には笑って顔をあげる、そんな作品ばかりでした。
うん、ごちそうさまでした。
紙の本
トオリヌケキンシ
2015/12/19 12:17
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投稿者:とも - この投稿者のレビュー一覧を見る
軽い短編の話で、軽快に進むのですが、ところどころ内容が重い、暗い。少々感動的な話もありますが。私的には、もうちょっと元気の出るような話がいいなあ。
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加納さん、復帰後2冊目ということは、本格復帰を
期待してもいいのかな。
とても嬉しい。
この短編集も、いかにも加納さんらしい優しい
お話が詰まった素敵なものだった。
特に2つめの作品が好き。
最後のは、彼女の経験が生きてるのかな。
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加納朋子さんの傷つかないミステリーが大好きで、それは現在も存命。さらに加えると今作品、特に最後の話は無菌室に入った加納さんだからこそ生み落とすことができた物語のようにも思える。
初っ端からゾクゾクした。好きだ好きだと思いながら読んで通勤時だというのに人目も憚らず涙腺崩壊。
合間の作品はちょっと薬と笑えたり、微笑ましい短編が挟まれ、最後の明晰夢に準えた物語でのしめ。頑張らなくてもいいから今と、明日を生きようって、そんな風に思えます。
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他の人からは気付かれ難い”困難”を抱えた人達の短編集6編。
この本を読めて良かった。どうしてこんなに優しいんだろう。そしてなんだか泣きそうになった。
「トオリヌケキンシ」が好き。あったかくて心に染み込んでいく優しい話が詰まっている。
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外からは分かりにくい障害や特性、あるいは記憶を持った子どもたちの、世界の見え方や生きづらさについて、繰り返し考えさせられる6つの物語。
LGBTの人を書いた記事や小説を読んだ時にも常々思うことだけど、私の周りにそのような特性を持った人はいただろうか、と考えても思い当たらないのは、いなかったのではなく私が知らなかったのだろうな、と。子どもの頃ならともかく、10代くらいだったら相手を思いやることでもしかしたら気づけていたかもしれない。知ろうとしなかった、想像しようとしてこなかったな、と、この本を読んであらためて気付かされた。
フィクションで語るにはセンシティブな事柄だと思う。もちろん書くにあたり取材されているだろうけれど、当事者の経験談や記事のほうが、ストレートに現実を伝えるのかもしれない。でも、起承転結を練られた物語だからこそ、どんな点が最も分かってもらいたいのか、知っておくべきなのか、明確に入ってくるような気がする。
「『無理なものは無理なの。』」
「きんと張り詰めた薄い氷を、うっかり踏み抜いてしまわぬように。」
「黙って騙されておけ、か・・・。」
「『おー、すげ・・・ありがとう』」
「あのキュートな福耳を桃色に染めて、・・・」
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どの作品も本当に素晴らしいです。
空蟬は、読むのが辛すぎて…断念しそうやったけど、この人は救いようのない話は書かない!と信じて読みました。
どんだけ信用してるんだか…笑
最後の作品は涙無しには読めません。
今ある命に感謝。
加納朋子さんが作品を書き続けてくれていることにも感謝。
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【収録作品】トオリヌケ キンシ/平穏で平凡で、幸運な人生/空蝉/フー・アー・ユー?/座敷童と兎と亀と/この出口の無い、閉ざされた部屋で
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市図書館にて。
発売後すぐに買って読まなかったことを後悔。そう、これが読みたかった。
すんなりと、そしてニヤニヤと読みながらも、力強く残る温かな読後感が嬉しい。繰り返し読んでいたい。買いに行こう。
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再び加納朋子さんの作品を読める日が来て、本当によかった。「ささらさや」が映画化されるということもあって、それを再読しようとしていた矢先に、本屋で本書を見つけて即買。短篇集だったのだが、どの作品も、外からはわかりにくい病気がモチーフに使われている。
だからといって、変な悲壮感やら悲劇ぶったところは全然ない。全然ないのだが、その分とてもリアルにその病気やら障害やらの苦悩が伝わってくる。
そして、にも関わらず、作品に漂う雰囲気は、やっぱり加納朋子さんらしく、ほんわかふんわりしているのだ。
しかし、最後の一編にはやられた。
それまでと同じような系統の話かと思いきや、それまでの作品に登場した人物が次々に登場する。兎野くんまでいる。そして明かされる真実。
この圧倒的なリアリティは、どうしたって加納さんの事情を思い浮かべずにはいられない。
でも、そういうことをちょっと横に置いてでも、ラストはつんと鼻の奥が痛くなる。胸も痛くなる。
やっぱり加納朋子さんは大好きな作家の一人だなと再確認した一冊。
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【出口はある。かならずどこかに。】他人にはなかなかわからぬ困難を抱えた人々にも、ささやかな奇跡が起きる時がある。短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語。
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待望の加納朋子の新作。(連作ではない)短編集だけど、共感覚とか、相貌失認など人の五感の異常をモチーフにしたものが多い。
作者のマイブームかな?
表題作では、もう号泣もののよいストーリー、「座敷童と兎と亀と」では、ささらさや、に出てきたらような優しいご近所のお節介さんが登場し、「空蝉」では、再生の物語。
どれもこれもよい。読めることが至福の喜び!
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人生の途中、はからずも厄介ごとを抱えることになった人々。でも、「たとえ行き止まりの袋小路に見えたとしても。根気よく探せば、どこかへ抜け道があったりする。」(「トオリヌケ キンシ」より)他人にはなかなかわかってもらえない困難に直面した人々にも、思いもよらぬ奇跡が起きる時がある――。短編の名手・加納朋子が贈る六つの物語。
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表題作のほか、「平穏で平凡で、幸運な人生」 「空蝉」 「フー・アー・ユー?」 「座敷童と兎と亀と」 「この出口の無い、閉ざされた部屋で」
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場面緘黙症、共感覚、脳腫瘍、相貌失認、脳梗塞、癌。どれもがただならない深刻さである。それが一話ごとの要素となっているのだから、さぞや暗く重い物語なのだろうと思われるが、さにあらず、どれもがなんだか爽やかでほのぼのさせられる物語なのである。何とも不思議な感覚である。それはやはり、たぶん著者ご自身が辛く苦しい体験をくぐり抜けてこられたからということが大きいのだろうと思う。誰だって明るく楽しく日々を生きていいのだ、きっと自分を必要としてくれる人がいるのだ、としみじみと思えてくる。物語同士が何気なくさらりと繋がっているのも嬉しくなる。読み終えても余韻に浸っていたい一冊である。
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あぁ〜加納さんが、まだまだ本を書いてくれて嬉しい。人と出来事が心に残る短編集でした。特殊だけど、どこにでもある、すぐそこにある物語です。当たり前に今ここにいることを感謝できます。