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一気に読みきった。これまで精神医療の中でニッチな存在であった依存症臨床において、第一線で臨床を行いながら、ニッチな立場で現場を見続けてきた人の文章だけに説得力がある。前半は70年代から現代までのアルコール臨床の歴史、それに携わった医師たちの背景も含めての苦闘がドラマのように述べられる。ともに「全共闘世代」であるから理解し合える暖かい目がある反面、対抗的な目や、そうした医師たちのロマン主義に対する皮肉がある一方、現代の実証的な研究が進み、ある意味システマティックな治療になった依存症臨床についてはコメントはない。後半はACと共依存について、曖昧な概念であるだけに色々な意味を包摂しながら一般化はしたが、特に共依存に関しては対等な関係であるから成り立つ言葉ではあるが、夫婦関係や親子関係は対等なのかという視点から逆説を述べられる。加えて背景にあるDVに関して、病気の免責と暴力の責任という、これまで曖昧にされていたことについての言及は鋭い。依存症の臨床の背景に流れる思想を理解するのに良い本だと思う。