投稿元:
レビューを見る
ドラマが良かったので読みたかった本。
大金を手にして梨花は何を得たのだろう。きれいな洋服や高い化粧品、若い男、日常から逃れるために横領してまで得た結果は、空しいだけで先の見えない人生なのでは。
みんなお金に振り回されてる。梨花の同級生、元彼、友達。自分がそうならないことを祈るばかり。
今まで読んだ角田光代作品の中では上位。
投稿元:
レビューを見る
41歳の主婦がなぜ1億円を横領したのか。
期待をもって読んだけれど、読み進めていくと、思いの外簡単に、主人公は横領に手を染めていった。
はじめは数万円、のつもりが回数を重ねるにつれ、気持ちがどんどん大きくなっていく。
毎日に現実味がないが、その間にも借金はどんどん膨れ上がっていく。
恐ろしいことをしているという感覚がないところまで、主人公は突き進んでしまうのだけれど、どのようにしてこの犯罪に終止符をうっていいのか分からない主人公は、誰かに止めてもらうことを願う。
果たして人間ってこんな簡単に罪を犯してしまうのだろうか。それくらい、いとも簡単に金を借り続ける主人公に、誰でもなり得るのではないかと錯覚する。
ー私は私のなかの一部なのではなく、何も知らない子どもの頃から、信じられない不正を平然とくりかえしていたときまで、善も悪も矛盾も理不尽もすべてひっくるめて私という全体なのだと、梨花は理解する。そして何もかも放り出して逃げ出し、今また、さらに遠くへ逃げようとしている、逃げおおせることができると信じている私もまた、私自身なのだと。
投稿元:
レビューを見る
ちょっとした満足感。
ちょっとしたいけないこと。
ちょっとしたことだから、ちょっとだから…。
という構図はわかるんだけど、
今ひとつシンクロできない。
いや、これがリアルなんだろうけどね。
投稿元:
レビューを見る
ホラーではないのに、怖かった。
ほんの少しの夫婦のすれ違いから始まり小さな不満が蓄積していき、夫の単身赴任と年下恋人の出現に歯止めがきかなくなっていく堕ちていく様子は、痛々しい。
満たされない何かを埋めるのが、物であるというのは、哀しいと主人公や、主人公を語る元カレや友達視点の話からも感じた。
投稿元:
レビューを見る
怖い怖い。
お金は怖いよ……。
ちょっとじぶんで大きなお金を動かせる、自由になるとわかったら、こういう風になっちゃうのも、わからないでもない……。
しかしこの話で一番いい思いしてるのは、光太だな。
ホントはどんなことを思ってたんだろ、彼は。
梨花の旦那の正文は、ちょっと気持ち悪い。
あんな風に真綿で首を絞めるようにジワジワと言われたら、私には耐えられない。
梨花の他に出てくる和貴とか木綿子とかも、みんなお金にまつわることで悩んだりしてる。
それがあり得ないことではないような気がして、すごく怖かった。
映画化の配役、梨花が宮沢りえさんっていうの、すごく合ってると思った。
投稿元:
レビューを見る
変わりばえのない毎日で、自分が自分の一部であるような感覚を抱いていた梨花。
自分自身の人生の設計図を立てられず、何も実現もできない。
夫婦の間にある違和感もそのままにして慣れてしまう。
単調な日々の中での、満たされない気持ちや認められたい気持ち。
それらを埋め、万能感を感じられるのが、デパートでの買い物や光太との不倫だったんだろう。
その流れの中で、いとも簡単に、横領を繰り返していくー。
あまりにも簡単だから、身近に感じて、些細なことでもきっかけがあれば、明日は我が身みたいな恐ろしさがあった。
単調な日々を送る中での閉塞感って、私にも身に覚えがある。
だけどそれに甘んじて過ごしてきたのは自分自身。
いいこともわるいことも全て自分でやってきたことであって、簡単にリセットできるものではないんだよね。
梨花に関しても、結局は自分の中の問題で、坦々と鬱々としてた気持ちのやり場が、たまたま光太に向けられただけに感じる。
光太から求めたわけではないけどいつのまにかそれが当たり前になった。
だけどそれは健全な関係ではないのは明白で。(お金で囲うってこういうことかと。囲うって表現が的を射ているよねと感心)
アムステルダムのお土産がマスタードとチーズだったっていう描写がなんともいえない梨花と光太の浅はかさを表してていいね。
さて、表題の「紙の月」、気になって調べてみたら「まやかし」や「紙で作ったものだけど本当に信じればそれが本物になる」という意味があるらしい。
この物語においては後者の意味が強いのかな。
読後感は、うわぁ、なんか…スッキリしない…。です。
私の理解力の問題が大いにあると思う。
映画の方も見てみたい。
投稿元:
レビューを見る
重い。
じわじわと破滅に向かう梨花に引きずられる。
---
ただ好きで、ただ会いたいだけだった。
わかば銀行から契約社員・梅澤梨花(41歳)が1億円を横領した。正義感の強い彼女がなぜ?そして--理香が最後に見つけたものは?! あまりにもスリリングで、狂おしいまでに切実な、角田光代の傑作長編小説。
投稿元:
レビューを見る
読み終わったとき、ゾワゾワと久しぶりに怖い本だったなぁと、思った。人ってこうやって、落ちていくんだぁ…
投稿元:
レビューを見る
本作を読み終えて、最初に思い着いた言葉は
「頭でっかち」だった。
最近は、「頭でっかち」のことを「万能感」というのかな。
「頭でっかち」な私たちが行き詰って、何かを動かそうとすると、お金に飛びついてしまうと言う話。
お金は何かを表現するための仲介役でしかないのに。
ラストを読んでも、あまり救われる思いがしない。
結局、主人公は、自分のものの見方を変えて、そこで光を見出すのだけれど、それは結局、私たちには自分自身しか変えられるものがない、っていうことを言っているように思える。そしてわたしは、そういう「頭の中」にしか解決をみいだせないことに、最近どうしようもない窮屈さを感じる。
ただ、この読後感は、この作品に対するというよりも、今の世の中に対するものかもしれない。それが、社会を的確に表現する、作者の筆致の素晴らしさと誠実さゆえに迫ってくるのだと思う。
元交際相手?の男性の家族には、自分自身を変える以外の、それを超えるような可能性が示されているように思う。実はこれがこの作品の本当の光なのではないか。次作は、きっとこの家庭が主人公なのでは?と予想してみる。
楽しみにしています。
投稿元:
レビューを見る
世の中の正義と、自分の中の正義が違っていること、そして、自分の中の正義が全て正義になること。うまく表現できないけれど、そういうのは心理状態としてわかる。
八日目の蝉は、読んだのがだいぶ前なのであまり覚えていないけれど、ひたすら逃げる物語だったと思う。それに比べるとが紙の月は過去の描写が多い。逃走中の話もあるけれど短い印象。つかまえて、とめて、という心理ももちろん分かるが、なんとなく、もっともっとゆらいでもがいて苦しむ主人公を見たかったな。
14/11/02
投稿元:
レビューを見る
リアリティーのある話、すごく共感するわけでもないのに、不意をつかれてストーリーに絡まれていく感覚。向かう先は闇とわかっていてもついつい読み進めてしまう本だった。
投稿元:
レビューを見る
前、ドラマになってて、興味が沸いたので買って読みました。銀行のお金を横領して逃げる人妻を軸に、
主人公の友人、元彼の視点も交えて展開される。
若い男に貢いで、銀行のお金を横領して逃げただけのお話だったら陳腐なものになるところだが、この小説はお金について深いテーマを投げかけてくれていると感じます。お金ってたくさんあったらかえって見えない。もちろんなければないで困るけれど、100万のお金が1万円を100枚集めたものじゃなくて、一つのかたまりとしかとらえられなくなる、という一文に思わずぐさりと来ました。
投稿元:
レビューを見る
勤め先の銀行から10年ほどにわたって1億円もの金を横領した女性契約社員。少女の頃から至ってきまじめと見られていた彼女が、なぜ? 小説は、梨花とほんの浅く関わっただけの同世代の男女と絡めながら、自身でもコントロール不可能な犯罪へ疾走する梨花の軌跡を描く。
梨花を知る人々が、自身の生活の中でお金にひっかかるたびに彼女のことを考え、それでも梨花の真実にたどり着くことができないように、梨花の視点から描かれた出来事をたどっても、それで際限のない浪費に引きこまれて行く気持ちが納得できるというわけではない。どうしても共感できるタイプではないし、梨花自身、自分というものが最後までわからないのだから。
ただ、はっとさせられたのは、お金のある世界はふわふわとした善意にくるまれていて、その外の世界ではあちこちにばらまかれている小さな悪意から守ってくれる、というところ。ほんとうにそうだ。お金は、私を傷つけたり疲れさせる無数の小さな刺から守ってくれるものだから、なくては生きていけない。だけど、その優しい真綿があたりまえになり、依存しないと世界に対峙できないようになったら。
1億円というとあまりに途方もない金額で、そんな巨大な欲望のままに犯罪をおかす女など、自分と接点がないように思えるけれど、梨花の周囲の男女のエピソードを配することで、お金の使い方、というよりも、お金が可能にすると見えるものとの付き合い方は、実はすべての人にとって解決のつかない大問題であり続けているのだということに気がつかされる。
ただ、お金の力に引きずりまわされそうになっているのは、やはり女たち、それも主婦であって、ここには必ず、金の主人になろうとしてなれない女たちのジェンダー問題が関わっているはずなのだ。この小説が舞台にしているバブル期からの10年間は、これからは女も平等に経済力を持ち自分の人生の主人公になると約束しながらその夢を裏切った時代だった。その時代背景がうまく絡まって生かせてないのが、ちょっと残念だ。
投稿元:
レビューを見る
「自分もふとしたキッカケで、この話に出てくる人たちみたいにお金に狂わされるんじゃないか」。そんな感想を思わず持ってしまう、角田さんらしい怖い話でした。
勤め先の銀行から一億を横領し、タイへ逃亡した41歳の梨花。夫と二人で暮らしながら、契約職員として真面目に働いていた彼女に一体何が?
こないだお金に関する本を読んでいたら、消費者金融のキャッシング利用者って20歳以上の約7人に1人の割合だそうです。
この小説は主人公の梨花と、彼女の友達、昔の彼氏、高校の同級生のエピソードが混ざり合いながら進んでいくのですが、主人公の梨花だけじゃなくて皆お金に狂わされています。
しかも皆、最初のキッカケは小さなことで。
お金は使うもので、お金に使われるようになったら人間終わりですね。
宮部みゆきの「火車」とともに読んで、反面教師にしたい一冊です。
投稿元:
レビューを見る
顧客を騙して銀行のお金を横領する話。はじめはちょっと借りるだけだったのが、雪だるま式に膨れ上がっていくさまは怖い。自分も手を染めてしまいそうと思わせてしまうのもまた怖い。