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近年、「田園回帰」とよばれる都市から農山村への移住の動きが広がっています。こうした動きは以前からみられるものでしたが、とりわけ最近では、農山村への移住者による「なりわい」が多様化しています。こうした「なりわい」の多様化を、地域の側はどのように捉えていくべきなのでしょうか。
本書では、移住者による「就業」「継業」「起業」の各段階が、地域の様々な組織やコミュニティ、主体によって支えられていることが指摘されています。「継業」とは移住者が地域の既存の「なりわい」を継ぐことであり、後継者不足などの問題に対して農山村地域の側からの対応が可能となります。こうした「継業」を農山村再生の地域戦略として提示した点が、本書最大のオリジナリティといえるでしょう。
少子高齢化や市町村合併による行政サービスの低下など、現代の農山村をとりまく状況は必ずしも良いものとは言えません。そのような中で、移住者による「なりわい」が農山村の再生に少なからず寄与していることは確かでしょう。移住者の側から「なりわい」を作っていくことはもちろんのこと、一方で農山村地域の側にある「なりわい」を提供していくことが、農山村再生の新たな戦略となるのではないでしょうか。
農山村に興味をもつ学生や大学院生はもちろんのこと、行政や地域組織に携わる全ての人に、手にとっていただきたい本です。
(ラーニングアドバイザー/地球 SUZUKI)
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http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1704522