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弾丸列車計画とは、昭和15年事業に着手した東京ー下関間線路増設計画のこと。高速列車の走行を考えていました。戦況の悪化により中断しましたが、東海道新幹線がわずか5年で完成できたのは、この計画が下敷きとしてあったからです。
しかし当時の鉄道の技術水準や計画の詳細は、一部の関係者を除いてほとんど知られていません。
本書では、これまでに蒐集できた文献・資料を用いて、その全体像を明らかにします。(2014年刊)
・第1章 新幹線計画の萌芽
・第2章 輸送の状況
・第3章 新幹線の軌間選定
・第4章 新幹線計画の基本事項
・第5章 新幹線の建設規格、基準
・第6章 新幹線計画の基礎的検討
・第7章 新幹線計画の概要
・第8章 特記事項
・第9章 事業の経過と中断
・第10章 戦後の両本線の状況と東海道新幹線への道
本書は、戦前の弾丸列車計画を取り扱った本である。予定されていたダイヤグラム、車両の設計図、計画図面など貴重な資料が収録されており、貴重である。
弾丸列車計画については、東海道新幹線に関連するエピソードとして触れられることがあり、十河信二や島安次郎、秀雄親子を始めとする技術者達の人間模様を軸に取り上げられることが多い。(ゲージ論争や政党の争い、我田引鉄、建主改従など)
ところが本書では、人物についてはあまり詳しく触れられていない。
残された資料をもとに、弾丸鉄道計画とはどの様なものだったのかを淡々と解説している。まるで鉄道省の会議資料を読んでいるような錯覚を覚える。(もちろん資料をそのまま掲載している訳ではない、図表も多く読み易く解説も加えられている。)
人間模様と異なり、血湧き肉躍るという内容ではないが、東海道線と山陽線の輸送量が逼迫している様子や、ルートの検討状況などを知ることができて面白い。個人的には、大陸へのルートでもあった下関がいかに重要だったのか、感じることが出来たのが良かった。
本書は、弾丸列車計画を知る上で、オススメの本である。