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加賀百万石の前田家当主、綱紀を書くため、売れない戯作者雪の丞が大抜擢された。
仕事をする雪の丞の仕事っぷりと、大名行列を支える重鎮や飛脚たち、そして綱紀や将軍吉宗の人柄を垣間見ることができる、一冊で2倍おいしい話。
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百万石の加賀藩の参勤交代は、四千人の規模に達する。その大名行列で起こる宿場の運営状況等々の凄まじさは十分伝わってきたが、飛脚たちが任務を遂行する奮闘ぶりは、盛り上がりに欠ける印象が拭えなかった。加賀藩前田家の当主も老中水野忠之も八代将軍吉宗公を「義経」とするならば、どちらも「弁慶」であるという立場に違いはない。前田藩御用商の浅田屋を「べんけい飛脚」と位置付けることで、それに気づかせようとする展開は面白かった。
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「かんじき飛脚」の続編だと言うことを知らずに読んだのですが、そんなハンデをものともしない、相変わらずレベルの高いお江戸人情物語。唯一の欠点は、「かんじき飛脚」を読む楽しみがなくなったって事かな?。もちろん俺のせいなのですが。
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江戸時代、前田藩の窮地を救うために藩御用の飛脚たちが中山道を走りぬきます。飛脚だけではありません。
前田藩の殿様綱紀は、江戸でも国許でも、また参勤交代の時も、屋敷を抜け出して町民の姿に身をやつし、市中を歩き、民の姿を自ら見て歩きます。若い将軍吉宗のために誠心誠意尽くします。吉宗もまた綱紀を心から尊敬し、みずからの後見人であるとまで考えます。
綱紀は、将軍吉宗を源義経にそして自分自身を武蔵坊弁慶になぞらえます。
中山道をひたすら走り抜いて、命がけで大切な書状を届けてくれた飛脚たちに感謝を惜しみません。ひとりひとりが自分自身の源義経のために武蔵坊弁慶となって自らの命をかけて支え合います。この小説の中で描かれているのは、自分に与えられた仕事を忠実にしかも誇りを持ってやり遂げる男たち女たちの姿です。このような人々によって、この国は昔から支えられているのです。
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前作「かんじき飛脚」の続編と言うか、外伝と言うか、今風に言うとスピンオフなんだろうけど。
本作は前作で大活躍した、加賀藩御用達の三度飛脚がちょっと奥に引っ込み(それでも重要な活躍場面はあるんだけど)、若き戯作者の書く入れ子構造の劇内劇がもっぱらの焦点。
入れ子にしたこと自体、構成を楽しむ妙味はあるんだけど、物語の焦点がややぼやけてしまったのは残念。伏線とその回収が分かりやすく書かれているのに、肝心の「じゃ当面さしあたっての問題はどうなったの?」のがクライマックスでボヤける。
こっから、ぶっちゃけ大ネタバレかくけど…
松平定信の気持ちは収まったのか?大店商人伊兵衛の回顧だけでは済まないとこじゃないのかなぁ…そこ暗示するにしても、もっとすっきり書いて欲しかった。性善説な小説を書いてる一力作品なら、ここをボヤかすと読者としては煮え切らないぞ。