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レジス率いる第四軍は海戦に勝利した。
しかしハイブリタニアの補給部隊はすでに出発した後だった。
補給物資が届いてしまっては帝国は負けてしまう。追っかけてぶっちめるぜ!な7巻。
内容的には、まあ、王道と言うか、鉄板と言うか、わかりやすくて親切。
「大量の樽に満たされた水を用意した」という最初の文章で、なんとなく展開が読めた。
「射程距離の長い新式銃の脅威」「自然科学の知識」「大量の水」と揃えば、まあなんとなくイメージはわくというもの。
さらに、細々と伏線を張りつつ戦略を進めるので、読み手としては驚きはない。
ただ、作者は別に読者を驚かせようって気はないんだろう。
奇を衒わず、一つ一つネタをばらしながら物語を進めるので、まあ意外性はないけど安定はしている。
で終盤まで読んで思ったんだけど、防衛戦でラトレイユ、何にもしてないじゃん。
なんか第四軍から勝利の報がもたらされたときには涙を流して喜んでたけど、こいつ自身はホント何にもしてないよなぁ。
本当なら、ラトレイユとオズワルドの間でお互いの能力を認めあるくらい智勇の衝突が描かれるはずだったんじゃないかな?と思うだけど、ページの都合でばっさりカットされてしまった予感。
おかげで、敵役であるはずのラトレイユがますます小物臭くなってしまった。
基本的に話の流れがわかりやすく、読者の予想を裏切らない、というか、予想通りの展開を描いてきた7巻。
作者はこのあとがきで「最後の展開は予想できなかったのではないか」と言っているけど、予想できなかったというよりも荒れ球を放り込んできたなぁって印象だった。
展開、というか結末としては予想の範囲内だけど、そこに至る過程が急に乱暴?性急に進められた印象。
「色に狂った老皇帝」みたいな要素は、この小説のオマージュ元である銀河英雄伝説の皇帝も抱えていた要素なのでわかりやすい。
ただ、その銀河帝国の皇帝は意外と深みのある人物だったので、ベルガリア皇帝にしてもその寵姫にしてもなんか安っぽく退場したなって印象にしカならなかったのはちょっと残念。
でもまあ、色々と設定がうるさいと読むのが面倒くさいからこれくらいお手軽の方が気楽ではある。
レジスは似非ヤン・ウェンリーでパチモン臭すぎてイマイチ好きになりきれないから、やっぱりここはひとつ、バスティアンにがんばってもらいたいねぇ。