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おすすめ資料 第288回 (2015.6.19)
表紙は The Catcher in the Rye のカバーアートを元にしたデザインです。
著者はアメリカ文学研究者ですが、この本では興味の対象をペーパーバックからハーレクインロマンス、さらにオプラ・ウィンフリーのブッククラブへと拡げて語り、いわゆる「大衆的」なものの背景を読み解いています。
勢い余ってハーレクインの翻訳にも挑戦しているのですが、結果は......。
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アメリカで出版されているペーパーバック本の研究者が、サリンジャーの表紙デザインへのこだわりや、ハーレクイン・ロマンスの成立と受容の歴史、市民のあいだで広がった〈読書クラブ〉ブームなどを語る。
表紙とタイトルから、てっきりサリンジャーその他のジュヴナイルやYA系ノベルの読者研究メインの本かと思ったら、中身の6割はハーレクインの話だった。だが、これがめちゃくちゃ面白い。
著者によると、女性向けロマンス小説の源流は18世紀にイギリスで刊行された書簡体小説『パミラ』だという。この作品自体は西洋における散文小説の第一号ということで高山宏せんせいの本にも頻出するので名前だけ知っていたが、召使いの少女が屋敷の主人を道徳で説き伏せて惚れさせるという黄金パターンの源流でもあったのは知らなかった。
ハーレクインがビジネスとして成立した経緯や、アラブ系陵辱モノが1920年代には既に生みだされ流行していたこと、包容力のある年上優男と孤独なワイルド系のブームが交互にやってくるヒーロー像の変遷、ハーレクイン小説とフェミニズムの対立と共闘の歴史など、世に「女性向けジャンル」と呼ばれるもの全体に適応できそうなトピックに興味が尽きない。消費される〈ポップカルチャーとしての読書〉にスポットを当てた論考が新鮮で、とても刺激を受けた。
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本が売れるのは良書だからでなく、マーケティングこそが肝であるということをハーレクインロマンスシリーズこそが実証してみせている。