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アメリカの映画批評入門クラスの教科書として使われているということで、たしかに基礎的な知識が網羅的にカバーされておりわかりやすい。第1部ではカメラワークやカラー、画面構成など技法面の解析について、第2部では構造主義、ポスト構造主義、ジェンダー論、ポストコロニアル論などのさまざまな現代思想の潮流も踏まえて、意味の解析について解説されています。豊富なスチール写真を使って解析の例が示されているのもたいへん魅力的。
ところがAmazonのカスタマーレビューを見ていたら、この意味論解析の部分について、「80年代でもあるまいに、大昔の左翼アジ演説みたいな教条主義」とこきおろしている人がいるんですよね。ジェンダー論とかポスト構造主義って、大学で批評を体系的に学ぶのなら当然最低限押さえておくべき基本だと考えられてるからこそテキストになっていると思うんだけど、映画批評の本を読むような人が、それを古臭い左翼の教条主義だと認識しているとは?
まさにこういう態度にこそ日本の映画批評の問題が如実に表れてると思いますね。21世紀にもなってメジャーな映画批評誌にフェミニスト視点やポストコロニアル視点からの批評がほぼ皆無という状況がどれだけまずいのか自覚がない。映画批評というのは、まさにサイード的な意味での知識人の仕事であるべきなのに。
こういう日本の状況の中で、このテキストが翻訳され使用されるようになったのは画期的なことなのかも。これで批評を学ぶことのできる学生はうらやましい。
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映画とは技巧と意味との結婚である。
シャイニング
市民としての抑制が外れると、獣に帰る者もいるというのが、キューブリックの主張なのである。
タランティーノの「宗教的改心」
キューブリックによる童話のほのめかし
男性が支配的であるというのも、ヒッチコックが自明視していた事柄である。
ロードオブザリング 色 で王家の血筋という連続性が示唆されている。
『アバター』は鉱山社会と土着の種族との対立を描いたものだが、同時に、
表だって描かれてはいないが、環境保護についての米国保守派とリベラル派との対立にも見える。
アメリ 赤をメインにしているが、青を点在させている
『フィクサー』主人公の写され方
なぜ『シャイニング』では青と赤がこれほど使われるのか?
『フィラデルフィア』において、不当に解雇されたAIDS患者の救済を決意した黒人弁護士のショットはなぜ頭上から撮られているのか?
『第三の男』 わずかに斜めに歪んだクローズアップによって、この人物に不吉な印象を与えている。
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パラパラとめくって閲読。
こういった教科書の読み物は堅めで読みにくいことが多いので斜め読みにして読み下しましたが、思いのほかわかりやすく具体的な映画を出して当てはめて解説してくれます。
カメラワークの意味なんかは、受け身の側から感じてはいたけど言語化するとこういうことなんですね。アップにしたり、画面を引いたり。
第2部は映画に盛り込まれた思想を解説しており、ゴッドファーザーのところが面白く読めました。
アメリカでは標準的なテキストとして使われているらしく、なのでわりと穏当な解説と運びで、日本の大学の映画学科的なところでも参考図書に指定されているようです。
自戒も含めて。
文学などでもそうですが、ただのエピソードをなぞっただけのレビューが多く見られます。
印象批評はもちろん駄文にすぎませんが、批評するなら解釈と評価の言が欲しくなりますよね。あるいはストーリーをもとに解説したり論じたりする程度に。
そういった物足りなさを感じている人に向いてるかなと思いました。
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個人的には難しかったぁ。が感想
序盤はなるほど!と思うような解説が続き面白かったが徐々にただ文字を追ってるだけなのが自分でもわかり、戻って読んでようやくなんとなくわかる。を繰り返すことに。
見てない映画が題材に多く取り上げられてたことも含めて勉強不足を感じた
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実際の映画作品を用いて「技法」と「批評」の両面から分析するテキストで構成されており、 映画をトータルかつ客観的な視点から学習するための本。
第一部では、物理的な対象(カメラ、音、美術など)の「何を見ればいいのか」が語られ、第二部では、意味上の対象(歴史、政治、思想など)を「どう見ればいいのか」が述べられている。
構図、カメラワーク、編集、アートディレクション、語り、メタファー、など、映画に関する知識がわかりやすく説明されているので、とても楽しく読んだ。『時計仕掛けのオレンジ』や『パルプ・フィクション』なんかも出てきて嬉しかった。
これから映画を観るのがさらに楽しくなるほうな本でした。
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だらだら読んで時間かかったけど、とてつもなく良い。映画を観るための武器が備わる。分析の手法を身に付けることで理解、解釈がぼんやりとしたものから確信へと変わる。素晴らしい。
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この本きっかけに『我等が生涯最良の年』を鑑賞。
ストーリーだけでなく舞台設計や撮り方にも関心を向けられるようになり、これまで見出せなかった深い味わいを汲み取れたように思います。
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第一部を読みたくて買った。
第一部は知ってる映画も多く、内容も面白かった。
是非繰り返し読みたいし、他の同様の本も読んでみたい、
第二部は古く知らない映画が多く、想像で読むしかない物が多く難しかった。また、テーマと内容が一致しているか疑問に感じる章もあった。
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映画分析を始めるにあたってこれ以上ないというくらい、いたれりつくせりの教科書。具体的なシーン分析も豊富で、学びの一歩にまず間違いない本だ。
映画をいかに見ていなかったかが分かる。人と人の配置は、光の当たり方は、ものの配置は、制作者はだれに感情移入するように仕向けているか…。映画には実に多くの表現が詰まっている(にもかかわらず私は気づいていない!)。本書を読んだ後は、もう映画を観て素朴に「感動した!」とは言えなくなるだろう。