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冬場の東京→香港は意外に長い。2冊は確実に読める、出来れば3冊手元に置いておきたいところ。1冊目は初物シリーズ、梨木香歩。全く知識無かったけれど、珍しくブクログを流してて目にとまった作品。ははあ、これはある種のファンタジーと言えば良いかな。面白いのは、展開は早いし、物語はどんどん進んでいくのに、文章からたちのぼる印象が「静謐」そのものであること。そして最終章、主人公が手がける物語、ここは正直捉えるのに難儀したけど、ファンタジーのファンタジーたる所以かなあ。アフリカ・ウガンダと東京郊外、生と死。死者が抱いて眠るための物語、そして全体を通して緑。不思議な世界だけど、嫌いじゃ無い。一度いってみたいよね、アフリカ。
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自身で気づいているかどうかにかかわらず、アフリカは、すべての人が密かに郷愁をおぼえる土地なのではないでしょうか?
主人公は文章を書くことを職業にする女性なのですが、何かに導かれるようにしてアフリカに向かいます。彼女にとって、アフリカは初めての土地ではありませんでした。因果に導かれるような主人公の体験が、この地球をめぐる命の物語として紡がれていきます。
ここに描かれている死生観、世界観をもとに、物語の解釈を全面的に読者に委ねるような作品で、読後も尾を引くお話でした。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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不思議な感覚に陥った。
なんだろうこれは、と思っているうちにピスタチオの物語に辿り着いて、ますます悩んでしまった。
誰かの為のストーリーであることは間違いない。
死者には物語が必要。
咄嗟に、三原さんは死んだの?と思ったりもしたが、きっとそういう直裁的な意味のことではないのだろうな…
普通の人なら無視できる、もしくは気づかないような些細な引っかかりを追っているうちに、ピスタチオの根本まで辿り着いた棚。研ぎ澄まされた感性を持っているんだと思う。出会うべくして出会った人たちも全て、物語に繋がっている。
片山海里も同じ感性の人だったのだろうか。
片山海里の本を読んでみたいと思った。
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文中にあった言葉「読み込めない本を前にしているような感覚に陥っている。」
のままに読み込めない感覚で読んでいたが読まなくてはというおもいで読みきった……。
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武蔵野の1人の女性と、遠いアフリカとの運命の巡り合わせの物語。
大学の時にかじった文化人類学を思い出した。
何かの思いが、人を結びつけ、出来事を巻き起こす。
そんなことは、あるのかも。
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梨木香歩さんは自らも自然探索をなさる作家ですから、今回の作品もアフリカを題材にしたエッセイと勘違いしていました。読んでみたら不思議な雰囲気の物語でした。
棚というのは主人公の翠のペンネームです。彼女の飼っていた犬のマースの患い、瘤と「ダバ」との関係が因縁めいてきます。アフリカでフィールドワークをしていた男友だち、片山の書いた本には精霊憑依のことがありました。
「ダバ」とは体の中に入った黒い塊。彼はこの呪術のことを調べていて亡くなっていました。そして彼と一緒にいた人が立て続けに亡くなっていた事実を知るのでした。
それでも翠は図ったような旅雑誌の企画に導かれ、アフリカに向けて旅立ちます。
物語の下地にはHIV感染者の受ける社会的な制裁があります。さらにフィールドワークで知ったアフリカの子どものゲリラ戦士養成の真実。不条理な人生を強いられた人々からの啓示によって探していたものは見つかります。何故その病気になったのか、患者たちは助からないとなると死者の納得する物語が欲しくなる。死者の納得する物語が必要だとの片山の言葉が心に残ります。アフリカの大地に根付く食糧源としてのピスタチオ・ナッツ、見たことのないピスタチオの木が目の前に広がっているような気がしました。
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梨木香歩さんの文章やっぱり好きだな。
非日常的な話も日常的にはいってくる。
アフリカ行ったことないけど、イメージできました。
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わたしとあなたの関係はいつも終わりなく空をかけていつかまた出会うのよ
地に足をつけて歩くこと、制御しようと思わないこと
流されること、導かれること
にているようで違う
私だけの物語をつむぎ、納得して死にたい
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【読了メモ】 (150718 19:07) 梨木香歩 『ピスタチオ』/ちくま文庫/2014 Nov 10th/大雨と台風につられて読みたくなった/鳥の声は死者の声、とは万葉集の解説で読んだのだったか。そういえば梨木さんは『丹生津比売』も書いていた。あれは万葉の頃の、水の話だった気がする。
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再読。アフリカを舞台に独特の素材を骨太に組み上げていくような物語。よくわからないまま、引きずりこまれていくような深く入り組んだ物語。「死者には、それを抱いて眠るための物語が本当に必要なんだ」という一言が心に残った。
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棚が紡いだピスタチオの物語。
とても沁み入った。
「ピスタチオ。お前がこの世でなしたことは、人がこの世で出来ることの中で、一番ましなことだったよ。」
涙。
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満足させてもらえる一冊だった。おそらくバランスが良いのだと思う。
日本のパートとアフリカのパート。そして最後の物語。
同じ人物が時系列通りに場所を移した。理由があってそうなった。だからもちろん日本の場面とアフリカの場面とで切り分けることは出来ないけれど、あまりに舞台だてが違うために、相互に独立している別の物語という印象がある。
最後の物語は枚数にすると短いはずだが、あの世界観の小説をたっぷり一冊、ずっと読んでいたような充足した読後感に満たされる。実際に一冊分全部がピスタチオの物語だったら、冗長になってしまうだろう。あの物語だけを短編としてぽん、と差し出されても、「なんだか雰囲気のある不思議なお話」で終わってしまうだろう。
日本とアフリカのそれぞれの描写があったからこその「ピスタチオ」であって、やっぱり全部で一冊の小説であったのだな、という、あまりにも当たり前の結論に至る。日本がアフリカに収束し、アフリカがあの物語に吸い込まれていく。場面が変わるごとに密度が濃くなっていくのだ。
それにしても、ピスタチオの葉の、その鮮やかな色彩の描写と劇的な展開は見事だ。
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40手前の独身女性フリーライターが、運命に導かれたようにアフリカの地へ向かう。そこで探る友人の死の真相とは。生まれた物語は、生み出した人の軌跡から何を養分とするのか。ひとつの物語が生まれるまでの、長く壮大なお話。一冊だけの文庫本を読んだとは思えないような心地良い重みの読後感。
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梨木果歩さん好きだったら、期待を外さない作品です。アフリカのウィッチドクターの話とかも心惹かれるテーマだし。ただ、前半のペットの具合が悪い描写がリアルでお話なのに心配してしまった。
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色んな人が感想に書いているけど「難解」。
と言うか、読者を意識して、判り易く何かを訴えようとするのではなく、梨木さんの独特の感性・世界観を生で出してきた感じ。
異なる感性/世界観の人には、なんとなくは伝わるけど、理解出来るとは思えない。そして私も理解しきれない読者の一人。
行間に様々なものが詰め込まれている。それは判る。でもそれを拾えない。拾ったとしても、それが著者の想いと一致するのかどうかも判らない。
でもそれで良いのでしょうね。
とにかく何かの「力」は感じる。それが心のどこかに沈み込んでいて、ふとした瞬間に表に出て来そう。そんな感じのする物語でした。