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どうしてこんな風にしか生きられないのだろう、なんでこんなことになってしまったのだろう、可哀想だ、なんとかならないのか、と、思いながら読むだろう。
ただ、その生を祝福され、認められ、そばにいて笑顔で語り合う。たったそれだけのことをなぜだれも彼女に与えられないのだろうか、普通の幸せってそんなに手に入れにくいないものなのだろうか、と…
全身で彼女に対して同情をしその「死」を悼ん…で…いたのに…なんてこった!!
いや、途中でいくつか疑問が生まれていたのだ。そして多分その疑問にたいする答えも見えていたのだろう。けど、気付かないふりをして最後まで「不幸な女に同情する私」を味わいたかったのだ。最悪の人生と最悪の「死」、孤独死のあと飼い猫にその身体を食い尽くされる、不幸の極地に住むオンナの人生を同情したかった、のに。なんてこった…
そして最後のページで気付く、作者のしかけ。そうかそうか。そうだよな。そんな気がしたんだよ!
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絶叫
前作の「全選考委員をうならせた骨太エンターテインメント」でミステリ賞をとり、デビューした葉真中顕の期待の新作、だそうである。
なんとなく切れが悪いのは私がその前作を読んでいないから。会社にあってなんとなく手に取ったという、理想的でない読者だったから。
前作が介護がテーマだったらしいのだが、本作品は、ホームレスにからむ利権?の話なので、その意味でこの人は、新人ながらきちんと狙って、テーマを絞っている人なのだろう。
また、飼い猫に食われた腐乱死体となって発見された「鈴木陽子」の生涯を、「あなたは〜をした」と順行するいわばA面と、その彼女がなぜこんな死に方をしなければならなかったのか、バツイチの女刑事の目線で遡るB面で交互に進める、展開も丁寧で盛り上げる。
ただ、どこの時点でどう交差するのか、ハラハラ追いかけさせるのはよいのだが、女刑事自身の踏み込みが微妙で、狙いとしてはネグレクトの側面を引き出したかったんだろうけど、そのかみ合い方がいまひとつ不十分だったような気がした。
謎の女を追いかける社会派的な展開としたら宮部みゆきの火車とか思い浮かぶのだけれど、追う側の執念とかが感じられなったからなのかも。さらっと終わり、読み終わって「骨太」とは思えなかったような。
しかも、かなり早い段階でネタがばれてしまう、というか予測できてしまう。丁寧なA面構成があだとなっているというか、だって、これだけ思考の癖を見せつけられたら、その思考がどこに着地するかはわかってしまうものねえ。
あとは、ファミリーとしての結束力の根拠が希薄とか、罪悪感へのあまりの鈍感さとその画一的すぎるところが薄い気がしたなあ、とか。綻びのなさが不自然すぎてちょっと嘘っぽすぎというか。
テーマはいいし、だけに、そこが真実味を帯びたらすごいんじゃないのかな、って思う。派手なシリアルキラーものでもサイコでもない、だけどしんみりとした狂気を、もすこしねちっこく書いてもらえたら、なんて思いましたとさ。
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鈴木陽子の生育歴のパートを読んでいて、萩尾望都さんの「イグアナの娘」を思い出した。本人にはまったく自覚がないまま、子どもをくっきり差別して育てる母親。差別してますよなんて言われようものなら、烈火のごとく怒って反論してくるであろう母親。子どものころの陽子は次第に母親の本質に気づく。しかし、おとなになってからの陽子の生き方を読んでいると、そんな母親にそっくりになっている。自分に都合の悪いことからは徹底的に目をそらす。
保険業界に入って仕事を始めたときも、上司と不倫関係に陥ったあとも、何度だって立ち止まって考えるチャンスはあった。それでも、どうしてもこんなふうになってしまうんだよなあ。このあたりを読んでいるときは、やるせなく、虚しく、哀しい気持ちになった。
金魚の幽霊は、純の姿を借りた、陽子の本質部分だったのかもしれない。彼女が不幸のどん底から浮かび上がってくるきっかけが「自然現象」だったというのは興味深い。人間の生き死にもすべて自然現象、という考え方は私にはしっくりくる。
「見えざる棄民」という言葉が胸に残った。
暴力団の追放や、ホームレスの排除、障害者やニートの存在のことを考える時にいつも思うのだ。
汚いもの、悪いもの、都合の悪いものを排除したいと思うのはわかる。でもゴミのように焼却できるわけじゃないのだから、街から排除したって、そういう人たちはどこかに存在する。追放して、排除して、その先どうしようというのだろう。
ヤクザや貧困業者がなくならないのは、結局そういう人たちの行き着く先になっているからなんじゃないのか。
生活保護の基準を厳しくすることが、どうしてちゃんとした社会になっていくことにつながるのだろう。みんな働けばいいのだ、というけれども、現実には、一部の頑健な人と同じようには働けない人だってたくさんいるのに。
神代がやっていたことはおぞましいことかもしれないが、それは一般社会がオブラートにくるんで捨てたものの中身をむき出しにしてさらけ出しただけのことなんじゃないのか。
殺されたからかわいそうと言うが、殺される前には見向きもしないのが一般社会なのだ。
終盤での「あなたは」という語りかけのパートでの一文には鳥肌がたった。そうか、そういうことか、と腑に落ちる感覚。彼女の絶叫に打ちのめされた。そうくるのか、と。なんだかひどく納得してしまった。
女性刑事の話ももうちょっと読みたかったな。スピンオフで書いてくれないかしら。
私は作者は男性だと知って読んでいたつもりだったのだが、途中で「あれ?女性だったかな」と思った。それくらい、女性心理や女性の生理がリアルに描かれていたから。でもやっぱり男性なんだよね。なんであんなこと知ってるんだろう。
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鈴木陽子という普通の女性が転落していく。
「ただ愛されたかった」というだけの理由で。
「ー陽子、」という書き出しから始まるパートと、事件の謎を追う刑事のパートが交互に展開し、そこにいくつかの「証言」が挿し込まれる。慣れるまでは少し読みづらさも感じたが、中盤からの展開には引き込まれた。
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いゃあ、なんとも壮絶な1人の女性の人生。最後は何となくホッとした?というか、良かったと思った。陽子は、頭の回る女だったんだと納得。転んでもタダでは起きない強さを持ってたんだ。こんな人生あり得ないと思いながらも、案外誰もが陥る人生の転落劇かもと思うと読んでると薄ら寒い気持ちになって来た。家族神話は本当に崩れたのか?誰も懲りないという漫画を読んでたので、それと被り虚しさが。始めに書いたように最後で救われた?気持ちにはなったが、読み応えのある本だった。葉真中さんのロストケアもだけど、捨てられ人生の軌道から外れた人の話は読んでいて痛い。
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葉真中さんの作品にはいつも驚かされます。今回も問題作ですね。ロストケアもぜひ皆さんにも読んでもらいたいです。
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色々複雑・・・。
陽子には幸せになってほしい・・・ような
なってほしくないような・・・。
ちょっとした歯車が狂うことで人生が思いもかけない
方向に転がって行くのは・・・「嫌われ松子」に
似てるかも。。
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コレはやられました。けっこう深読みしたつもりではあったのですが、さらにその上を行く驚愕のラストに感服。最後から4行目で「そうやったんかぁ」と思わずうならせる伏線はお見事の一言。
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一行目:「その部屋には、死の海が広がっていた。」
これはスゴイよ。重たいよ。
ロスト・ケアの時は、ミステリという枠にこだわるあまり、若干無理があった。が、今回は書きたいものをしっかりと書き、人物置き換えという手法を手に入れたことで、ぐっとミステリ要素を入れることに成功した。
NPO法人の代表が殺された事件。重要参考人の女が逃亡中、とあるマンションで女の遺体が出る。鈴木陽子、とみられるその女の人生は、大きなものに流されながら、社会の隙間に落ちていったのだったー。
母子の関係、夫との関係、いつしか保険金殺人にすら手を染めた、彼女が自分自身で選んだ結末とはー。
「ケモノの城」と似ている。最初は突拍子もない遠い世界の事件に聞こえるが、彼女の人生を辿っていくことで、ヒタヒタとどこにでもいるような、平凡な女が近づいてくる。また、事件を捜査する女刑事綾乃との共通点からも、いつでも社会の隙間は人間を飲み込むのだ、と感じられる。
マンションの遺体は、デリヘル時代の同僚を身代わりにしたもの。自分だけが生きていくために、母をも殺す。怖い。
一気読みがオススメ。
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図書館
一気読み!これ面白い!
ミステリーとしての妙。
人物描写で引き込む技術。
ストーリーとして無理のない緻密な構成。
時代背景とマッチさせた主人公の生き様。
上手だなー、面白いなー。
新鋭の作家とは言えない。もうすでに職人である。
次作が見逃せない。ファンになりました!
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ロストケアで、高齢化の進む日本という国の問題点を捉えたミステリーを書かれた著者の作品。
壮絶な人生、こんなことって…
良いことなんかあるわけないと思って諦めてしまうだろう。
でも、そんな中でも希望?を見出だし、前に進む主人公。
そこまでの事は自分には起こらないだろうと思いつつも、巻き込まれることはあり得るとヒヤリというか、ゾクッとさせらるました。
タイトルがものすごくマッチしてると読後にものすごく感じました。
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マンションの一室で見つかった、女性の孤独死体。なぜ彼女はこんな死に方をしなければならなかったのか、そして彼女の人生には何があったのか。それを探るうちに浮かび上がってくるとある事件との繋がり。「鈴木陽子」という一人の女性の人生を軸に現代の生きにくさを描いた、圧倒的な息苦しさに満ちた一作。
現代の日本は、たしかに豊かな国なのだと思います。それでもその中で落ちこぼれてしまう人は一定数いて、その人たちは特別に愚かだというわけでもなく。誰でもちょっとしたきっかけで落ちてしまうことがあり得るのだなあ、と。案外と身近で他人事ではない恐怖と哀しさを感じてしまいました。
繰り返し語られる「自然現象」の原理。そう思うことができれば、生きるのは楽になるのでしょうか。それとも苦しくなるのでしょうか……。
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孤独死したと思われる鈴木陽子の人生を追うミステリー。前半は気分が悪くなるくらいの壮絶な人生で、読み進むのが苦痛だったが、なんとなくラストが予感できるようになると、ある意味で陽子の強さに希望すら感じた。
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内容(「BOOK」データベースより)
鈴木陽子というひとりの女の壮絶な物語。涙、感動、驚き、どんな言葉も足りない。貧困、ジエンダー、無縁社会、ブラック企業…、見えざる棄民を抉る社会派小説として、保険金殺人のからくり、孤独死の謎…、ラストまで息もつけぬ圧巻のミステリーとして、平凡なひとりの女が、社会の暗部に足を踏み入れ生き抜く、凄まじい人生ドラマとして、すべての読者を満足させる、究極のエンターテインメント!
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TBSラジオのsession22で紹介されているのを聴き、手にとりました。これを読むために早く退社するほど、結末が気になってしょうがなかった!!
始まりは、マンションの一室で女性の変死体が発見されるところから。近年増加している孤独死かと思われたが、その真実は…。女性の貧困、日本のセーフティネットのザルさ、といった社会問題が織り込まれている物語にはリアリティがあり、より恐怖を覚える。ノンフィクションといわれても信じるかもしれない…。併せて「最貧困女子」を読んだのもよかった。最後はハッピーエンドなのか、そうでないのか、意見が分かれそう。わたしはハッピーエンド派…