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また、私の中に一つ、殿堂入りのコミックスが誕生しました
この『僕の血でよければ』、ホントに面白く、同時に、恋愛について深く考えさせられる青年漫画です
主役の保健教諭・透が女吸血鬼(しかも、へっぽこ)ってのが大きいですね。しかも、好きになった相手が同族じゃなくて、不幸と不運を負ってしまっているけど、透と出逢えた事で生きる意味を見出す強さを持っていた美少年(その上、女装が異様に似合う)って、月子先生、また攻めてきてます、えぇ
私は月子先生の作品を網羅してる訳じゃないけど、正直、これほど心が揺れる作品にはしばらく出会えそうもないですね
血を舐める描写がどこかエロいんだけど、下品じゃなくて、お互いが自分の本心に気付いてないだけで好き合っているな、そう、しみじみと思える力強さが芯にありました
全2巻で、表紙が一枚絵になるって点も最高と言えるんですが、やはり、最終回の展開が王道で、これ以上ないハッピーエンドで締め括られる点が、殿堂入りを果たした一番の理由だ。吸血鬼が登場する漫画らしくない、そこがイイのですよ
また、収録されている短編もレベルが非常に高かったです
月子先生は、長編、短編、どちらも質を落とさず、自分の言いたい事を漫画のカタチに仕上げられる、凄い漫画家なのだ、と改めて戦慄しました
アブノーマルだからこそ「好き」の純粋さが痛いほどに伝わってきた『笛の音は旧校舎から』、近すぎたからこそ気付かなかった「好き」がどれほど重く、尊いかを感じた『おさな、なじめば。』、擦れ違い、届けられなかったからこそ、その「好き」を次の「好き」へと繋げるべきだ、と思えた『恋文ふぶき』、どれも月子イズムが色濃かったです。お勧めの作品をあえて一つに絞るなら、正道のラブコメが好きな私は『おさな、なじめば。』ですね
この台詞を引用に選んだのは、自分の中にある可能性を、誰でもない自分が信じてこそ、窮地を脱せるんだ、と気付けたからです