投稿元:
レビューを見る
地元新聞社の発行本で、タイトルにも地元の名前がでっかく出ているものだから、静岡県外では売れる本ではないのだろうけど、せっかくの「在来作物」という言葉の本なのだから、思いのたけをぶつけてみようと思う。
「在来作物」なんていわれても、なんのことかわからないかもしれない。本書の「在来作物」のハードルは、僕が思っているそれよりも低くて、江戸以前からその地域で栽培されている、明治・大正・昭和初期の品種、戦後導入で世代を超えて継承されているもの、栽培が途絶えてしまったが復元が試みられているもの、など。
あえて書くけれど、野菜の多くは日本に元々あったものではない。そういう点で、江戸時代以前や、昭和初期ぐらいまでに入ってきたら在来作物、としている。これはギリギリか、ちょっとアウトかなあとも思うのだけど、それでもこの本を許容したいのは、流通している野菜の多くが、江戸や明治どころか、種苗メーカーが開発した一代雑種で、種を採ることも出来ないし、故にその作物の生殺与奪が種苗メーカーに握られているという事実があるから。
静岡には、そうではない在来品種が結構残っているという。その事例集である。だけど、その在来品種では、大抵儲からない。だから、いわゆる流通にのらずに細々と生産されている例も多い。そうそう、有名なお茶「やぶきた」は在来品種なのだ。最近では、お茶も、改良(?)されたものが多いけど。かくいう僕も、やぶきた以外の作物にはほとんど縁がない。
「在来」とは「在り来りなもの」。それが珍しいとはどういうことだ!