紙の本
ひっそりとした記憶を呼び起こす短編集
2015/11/22 20:48
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
発売日に新刊で買い、読んだはいいもののすっかり内容を忘れていたために再読。自転車のサドルが話す「私のサドル」、いじめっ子といじめられっ子の友情物語「リターン・マッチ」、思春期の少年と中年女性との思い出「マジック・フルート」が面白かった。彼岸と此岸の縁に立って、物語をながめているようなそんな危うさがいい。ガツンとくる衝撃はないけれど、なんとなく見過ごしちゃいけないな、記憶と記憶の間にこんなお話のひとつやふたつ誰しも持っているんじゃないかな、と思わせるようなひっそりとしながらも凛とした佇まいを纏う珠玉短編集。
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短編6作。
こうのかなえさんの装画そのままのイメージ。
静かでしっとり、少し冷たいけど寂しくないみたいな。
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生と死についての短編集。心に残る佳編が多く、この猛暑の中でも、読んでいる間は自分がシンとおさまる感じがした。
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子供時代、少年、少女時代というのは、とかくままならないものである。
目に見えぬ大人達からの網に絡め取られているような青少年の焦燥感を描かせたら、湯本香樹実氏の独壇場であると言えるのではないか。
大人になると忘れてしまいそうな、子供時代のほろ苦さ、愛おしさが秀逸な一冊。
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湯本さんの描く小説の世界が大好きです
『夏の庭』、『ポプラの秋』、『春のオルガン』、『西日の町』
文庫ですが、ずっと大切に持っています
この本は短編集ですが、1話目の「緑の洞窟」で
懐かし湯本さんの世界にどっぷりはまり
「リターン・マッチ」では驚きおののき
6編ともに、違う世界を、違う匂い、色、感覚で
さまよい、闊歩し、漂ってきた感じです
表装のこうのかなえさんの絵もとても素敵
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ひとつひとつの平易な言葉が紡がれて、心の奥に沁み込んできて、力強い印象を残していく。「夏の庭」とは印象の異なる、うまく表現できないが、整然としたストーリーの運びに素直に感動した。
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この著者の代表作はだいたい読んできた。今回のは、10年ぶり以上になるような気がする。小説の面白さ、言葉、リズムが染み通るように身体に。若さと老練さとを感じて。
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緑の洞窟、焼却炉、私のサドル、リターン・マッチ、マジック・フルート、夜の木の下で
回想される少し不思議な短編集
幼い頃の話が多かったけれど青春小説というわけではなくて、ものがたりというようにするする読めた。
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「夜の木の下で」やっぱり帯にあった言葉は本文の中にあっても秀逸。「もし恋というものが、相手の持っている時間と自分の時間を重ね合わせたいと願うものなら、あのとき僕はもう、恋をしていたのだ。」相手と同じ時を過ごしたいっていうのは理屈じゃなくて衝動。はたからみてアンバランスでも。
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短編集6編
それぞれ珠玉のような情景があって、アオキの陰に蹲る双子の弟、焼却炉で燃える炎、しゃべるサドルや屋上の決闘、特に楠の花咲く夜の公園のむせかえるような香りと猫と缶酎ハイを飲む弟の姿は印象的だ。カバーの絵もとても雰囲気にあってる。
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短編集ですが、一貫したテーマは生と死なのかもしれない。どの物語も静かに進んでいく。この作家さんの本は久しぶりでしたが、また読みたくなりました。装丁がとても素敵です。
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雰囲気がとても好き!!特に1,4,6話目!〈緑の洞窟〉二本のアオキの木の下の洞窟。腐葉土の匂い。〈焼却炉〉生理用品が燃えていく。〈私のサドル〉好きだった城ヶ崎くん。彼への思いを、自転車のサドルは理解していた。〈リターン・マッチ〉あいつは、自分をいじめていた奴らを一人ずつ呼び出して決闘を申し込んだ。勝ち目なんかないのに。あいつはほんとうに命をかけていたんだ。〈マジック・フルート〉僕らは『幸いあれ求める人よ』の口笛を吹く。猟師のために、自らの体を少しずつ差し出す蛇。〈夜の木の下で〉捨ててしまったキジ白の猫。
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装画がとてもいい。相手の想いの中へ連れて行ってくれそうな装画だ。いっしょにすごした時間の中へ連れて行ってくれる。
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話したかったことと、話せなかったこと。はじめての秘密。ゆれ惑う仄かなエロス。つないだ手の先の安堵と信頼。生と死のあわい。読み進めるにつれ、あざやかに呼び覚まされる記憶。静かに語られる物語に深く心を揺さぶられる、極上の傑作小説集。
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表題作のほか、「緑の洞窟」 「焼却炉」 「私のサドル」 「リターン・マッチ」 「マジック・フルート」
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記憶の中では、世界はいつまでもそのままであり、それでいて気づかないほどわずかずつ姿を変える。そんな確かであって不確かな世界を漂うような印象の物語たちである。決してしあわせいっぱいではない主人公たちの秘められた思いがゆらゆらと揺蕩っているような一冊である。
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久々の湯本 香樹実さん。
時を置いてゆっくりと語られる記憶だったり、
自転車のサドルが突然話しかけてきたり、
交通事故で意識不明の弟を思う姉の気持ちとその姉を“あいだのとこ”で見つめる弟だったり。
なんて書くとファンタジー? OR オカルト? なんて言われそうだけど、
いえいえ、普通の人たちの話なんですよ、と。
それぞれ、ひっそりした語り口が優しくて気持ちがとても静かになったし、
一度読んで、ちょっと間をおいて再読したら、
なおさら、その面白さが沁みてきて、うん、よかった!
いい出会いができて嬉しいです。(#^.^#)