紙の本
言葉のない世界
2015/11/10 13:28
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投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る
5歳で、言葉をまだ話せない幼稚園の拓人は、声を使わずに虫たちと話すことができる。霊園管理人の児島もまた、声を出さずに死者たちに話しかける。拓人には大人たちの話す言葉の意味は分からない。ただ、児島の「言葉」は聞き取ることができる。拓人が気づかせてくれるのは、言葉以前の、ありのままの世界の豊かさだ。言葉や理性ではなく、気配や音や匂いや色で感じる世界。大切なのは言葉の意味ではない。ココニイルヨ、ココニイテモイイヨ、と言外に伝えあうことなのだ。
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良かった。安定の良さ。決して心地よい話ではないのに安らかな気持ちになる、江國さん独特の世界。
虫などの生き物と会話をすることができる、言葉の成長が遅い都築拓人。
弟の拓人が可愛くて仕方ないおませで時折取りつく島のない姉の育実。
そんな二人の母親であり旦那不在の不快感、不穏感の中を葛藤しながら生活を送る奈緒。
常に恋を求める父親の耕作。
外壁には拓人の呼んだヤモリ。育実を愛するカエル。そしてシジミチョウ。
霊園で働くおじさんや、拓人と育実のピアノの先生、耕作の彼女の真雪、テレビを爆音で観る隣人だとかが絡みながら、都築一家は、とくに拓人は成長していく。
ある意味でとても穏やかな物語。たくとの一人称のひらがなとカタカナのページはなにかと読みづらかったけど、あれにはものすごい大切な意味が、描写があったんだなと最後じんわり。
幼少期の、ほんの一瞬。
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言葉が通じなくて怖すぎる。
あまりにも身勝手な大人に対して、こどもたちの真っ当さ。
反して言葉が通じなくても全然平気。
支離滅裂でも空中分解でも構わないけど、ただ振り回されただけってのは良くないなあ。
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江國香織の長編小説。ある家族とその周りの人々。
江國さんの家族もの、大好きです。視点が色々な人に変わりますが、章が分けてあって漢字が使われない拓人の部分がやはり印象的。恋愛要素はそれほど大きくなく、子供たちの場面が多いです。最後の方がちょっと意味深長でした。
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ひらがな読みずらく飛ばした
身近に感じる心の揺れ
耕作はそーいう男だね何度もやるね
それを乗り越えてこそ夫婦ですよ奈緒
私も子供を連れて菓子折を持って「主人がお世話になってますー」と行ったっけ
乗り越えたー今その主人と喧嘩もなく仲良く平和にすごしてます(^-^)
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かなり癖がある物語だということは本を開いた瞬間にわかる。
名詞を並べたタイトルは江國さんの他の作品にもあるが、それに似た構成で語り手がどんどん変わっていく。
物語の中心は幼稚園生の拓人とその家族である。
拓人は自分や周囲のひとを認識することが不得意で、虫やヤモリなどの生物を愛している。
その小さな生き物たちの言葉を聞き、交流することができる。また、ひとの心の声を聞くことができる子供だと描かれている。
拓人のパートはほとんどが平仮名で書かれていて、読むのに苦労するのだが、これが仕掛けのひとつであることが最後にわかる。
拓人の姉は対照的に知的で責任感が強く、風変わりな弟を愛し、彼のために尽くす。
母親の奈緒は拓人の個性に気後れしながらも子供たちを愛しているが、彼女の頭はほとんど夫のことで占められている。
一回り年上のテレビマンの夫は情熱的だが悪気もなく愛人を作り数週間家に帰ってこない。
だけれど家ではよき父であり夫で、奈緒は憎しみを持ちながらも夫のことを愛している。
家族4人の他に、きょうだいのピアノの先生やその母、きょうだいが遊びに行く霊園の管理人、隣の家の独居老女などが物語を紡いでいく。
いくつものエピソードは盛り込まれているが、全体のストーリーというものを起承転結で語ると、とても地味になってしまうのが江國香織の小説のような気がする。
更にこの物語は本筋が何かを捉えるのが難しかった。
しばらくは幼児と呼べるほど幼い少年の成長記かと思ったが、大人たちの恋愛模様が濃くなって、愛人の存在に苦しむ妻の話かと感じるようになる。
でも最後は、子供がほんの短い間だけ持つ魔法のような力の輝きを描いている気がした。
拓人とその家族に一体どんな結末が用意されているのか終盤まで予想がつかない。
ミステリだったら奈緒が夫か愛人を殺しかねないところだけれど、単純に物語は破滅へ向かわない。江國香織はずるい男とそれを赦す女を書くのがとてもうまい。
少年の世界に終わりが来たことを唐突に告げる。
拓人はきっと”ごく平凡な”少年になったであろうことがラストの数行で察せられる。
それが一番切ないかもしれない。
久しぶりに江國香織を読んで、この文体はどうやって生み出されるのだろうと本当に恍惚とした気持ちになる。
特に父親が久しぶりに帰ってきたときの家族の様子。
まるで舞台を見ているようにそれぞれの動きと思考が感じられる。
これほど文章に情報量の多い作家はほとんどいないな、と改めて思った。
物語の出来云々を超えて天才だと思う文章。
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再読。
初めて読んだ時は拓人のひらがなの箇所に閉口したけど、慣れたからか今回は独特な世界観を楽しめた気がした。
それにしてもラスト、全然覚えてなかった。ビックリした。
さ、次は去年の雪を読む。
江國さんにどっぷり浸かる幸せを噛み締める。
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すごくよかった。気に入った。
ヤモリやカエルやチョウと話ができる子どもがでてきて、その会話が出てきたり、その子どもの視点から見た文章が全部ひらがなだったり、虫が発する音だとか気配みたいなものが文字になっていたり、実験的ともいえそうで、わたしがいかにも苦手な感じなのに、全然イヤじゃなかった。そういう、一見ファンタジーっぽいところが、(わたしにとっては)ファンタジーみたいな感じがしなくて、むしろ妙にリアルで説得力があって、ああヤモリとか虫とかそんなふうにしゃべりそう、とか思えて。こんなふうにそのへんのカエルとか虫がしゃべるのがきこえたらいいのに、楽しいのに、寂しくないのに、とかまで思ったり。
まったくうまく言葉にできないのだけれども、この世界のなりたち、とか、生と死、とか、ものすごくスケールの大きな、おおらかな、というか、やすらかな、というかそんなものを感じた。
普通の、大人たちの話ももちろんあるんだけど、それは普通にいつもの江國さんの感じで。
どうも、登場人物はそろったけれどもまだ話が進まない、という感じのまま終わるのだけれど。
いつまでも読んでいたいと思った。
続編とかあったらいいのになあ。
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いろんな人がいる。
それぞれの暮らしの中で、それぞれの思いを抱えて。
拓人とシンイチくんのやりとりが微笑ましい。
育実はしっかりもので、親近感がわいたけど、ラストは衝撃的すぎた。
奈緒の悲しみは、辛すぎた。
真雪は、なんかずるい気がした。
耕作には、父親としては素敵だが、夫としては最低だ。
千波の潔さは気持ちいいが、真似はできないと思う。
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幼稚園に通う拓人は、人と接することが不得意で、言葉を発することも得意ではない。けれど、感受性豊かで、人や動植物たちの発するオーラやムシや動物たちと会話ができるちょっと不思議な男の子。
江國さんの世界観で粛々と淡々と語られる物語は、静かで心地よい。何気ない日常の中から、父親の浮気による家族のゆがみなどが、静粛な空気から、ひしひしと伝わってくる。拓人の語る部分は、ひらがなばかりで読みにくく苦労したけれど、ちゃんと意味もあって読み終わった後はよかった。話の展開は違和感なく読めたのだけれど、結末はちょっと腑に落ちない。
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確かに、ヤモリとカエルとシジミチョウの話なんだけど、なんでこんな話にするんだろ?
最後、「やめてよ!」って感じ!
「どうやって終えよう?」と悩みに悩んで「こうしてみました・・・」って感じなのでしょうか・・・?
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410頁、久々のボリュームある一冊に今回も読み終えない前に図書館に返す羽目になるのか(汗)と懸念したが、残り半分を一日で読破、頑張った(笑)
前置きはさておき、内容はかなり哲学的に思えた。
登場人物は幼い姉弟をメインにその父母、父の不倫相手、隣りに住む一人暮らしの老女、姉弟が通うピアノの先生の家族、先生の婚約者、弟が慕う近くの霊園に勤続している中年男性等。それから忘れてならないのはタイトルにもついている爬虫類やら虫達。彼等の暮らしや気持ちが不思議な力(彼等との意思疎通)を持つ弟の目を通して瑞々しく描かれている。
途中から気づいたのは『在る(居る)』という概念がテーマなのかなということ。
『在る』とは、人であったり、
空間であったり、時間であったり。
囚われているのは存在の有無なのかなとか。。
確証(例えば、結婚の形、夫と妻の形、確かにあった過去の時間、口から出る言葉と心の中での呟き…目の前にいるのに不在を感じる気配…など)に無意識のうちにでも、大人の居る世界はそうゆうものに少なからず頼り、護られることで成り立っている。対比するかのような幼い弟や虫達の世界、それは枠も括りもないし、もっとシンプルに唯の『在る』なのだ。ほんのすこし歳が上の姉は弟の感受性に近いが、大人の事情も察知してしまうから両方の世界で揺れ動く。
ラストは呆気なく、まだ先があるように感じるのだが、それは生きている人達のリアルと一緒で、問題も何も完結しないまま生きていくのが
人間なのだから当然といえば当然(不自然ではない)なんだろう。
ただ、虫達と心を通わせていた幼い姉弟もまた大人になり、色んなことを確かに在った時の流れの中で置いてきてしまったのが瞬時に理解できたくだりは私的にはなくて、違う形の終わり方もよかったような気がしたのだけれども…。
読み終えてすぐに
もう一度、読み返してみたいな♪
と思えた一冊。
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2014/12読了。
久しぶりに読みたくて読むのがもったいなくて、穏やかな気持ちで読めた(しばらく読まなくてはいけないものばかり読んでいたから)
江國香織も間違いなくわたしの一部を作っているな、なんて思いながら読んだ。
キラキラの子どもの世界。もう忘れてしまった世界。
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小学生の姉育実と幼稚園年長の拓人、母の奈緒、父の耕作。
この家族を中心に周囲の大人達も含めて物語は進んでいく。
視点がそれぞれにかわって物語が紡がれる形式で。
家族の他に隣人の老婆倫子やピアノの先生、その母親
父耕作の不倫相手の真雪、兄弟が遊びに行っている霊園の
従業員なども出てくる。
拓人は言葉がうまく出てこないが、生物や植物と
しゃべることができる。そこをうまく表現するため
拓人の部分だけ全部ひらがなで書かれていて
すごーーーくよみにくい。結構飛ばし読みした。
頭の中の思考も全部が拓人だから声に出す言葉も
合間の文章も全部ひらがなで本当に本当によみにくい。
江国さんの小説にありがちな男女なので
みんな自分をかっこよくみせるために取り繕っている。
まず育実や拓人の母親の奈緒、母親なのに
夫に振り回されすぎ。まずは子供ありきなのに
夫の浮気に気を取られ拓人を迎えに行き忘れたり
育実の誕生会の約束を忘れたり、実際の母親なら
例え苦しい事があってもまずは子供の事を考えると思う。
悲劇ぶって子供の世話をおざなりにするのは現実的じゃない。
思考を飛ばすほど現実世界は暇じゃない。
学校だって園だって色々忙しいもの。
四六時中夫の浮気の事を考えていることもできずに
日常に流されて夫の事は後回しになると思う。
と物語に入り込めずに突っ込みながら読んだので
あまり入り込めずに物語を楽しめなかった。
どうしてみんな冷静でいようとするのか。
みっともなくてもぶつかりあわないと理解しあえない。
恋人同士ならともかく夫婦なんだから
ちゃんと話し合って家族にならないと。
それも諦めてしまっているから冷え冷えとした
家族になってしまっているのかな。
最後の部分の後味の悪い事。っていうか
気持ち悪いこと。ないでしょう。
両親の不安定さがそうさせたのか?
結局この物語で言いたかった事はなんなんだろう。
成長とともに消えてしまう子供独特の世界?
もう一度読み返したいほど素敵な文章もなく
買おうか迷ったけど図書館で借りて良かった。
買っていたら後悔していた。
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読み終えてミルクティーが飲みたくなった。ラストにはちょっとびっくりしたけど、最後の最後には(未来があった、という点が)なんだか嬉しかった。子供の目線から見た世界がひらがな表記されているのが最初読みづらかったものの、だんだん慣れてきてさらに彼の成長も感じ取れるあたりはさすがだと思った。