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久しぶりにねぎしに行ったとき、空間設計から接客までのユーザー体験が良質だった。そのうえ、店員が生き生きとしていて、親切だし、よい組織文化があると感じた、そこから経営方針が気になって読みました。本書は「牛たん 麦めし とろろ ねぎし」で有名な「ねぎし」の経営を紐解いている。著者は代表取締役社長の根岸榮治。所々に、社員のコラムやコメントがあり、リアリティも十分。
飲食業界の利益追求は、従業員の犠牲の上に成り立つ。それでは本当の価値も生まれない。理念や目的もない、利益だけを求めると不正が始まる。ねぎしも起業当初は、従業員が売上を盗んだり、店長やスタッフごとライバル店に引き抜かれたりと、様々な課題があった。
そこで経営方針を見直し、人財教育と理念共有、品質向上の具体的な施策をつくることにした。実際にをつくったのは現場の店長。ねぎしでは、あくまでも主体は各店舗にあり、そこで働く店長なスタッフ。彼らがいかに成長できるか、それを支えるのがサポートオフィスの役割としている。
時代の流行を追う、狩猟型経営は長続きしない。すぐに模倣されるから。だからこそ農耕型経営をしている。永続的に、安定的にブラッシュアップする仕組みをつくる。ねぎしの経営の目的は、働く仲間の幸せ。仲間が成長すること。そのためには、仕事が「我が事」になることが不可欠。
例えば、社内コンテスト(商品、接客、清掃)で上位入賞する店は、スタッフが一致団結して喜々として取り組んでいる。逆に下位になる店は「やらされている」感がある。仕方なくやっていると理念の徹底は難しい。これらの施策は本部から強制して出来ることではない。現場の自主性があるからこそ生まれるもの。
ねぎしのとって利益はゴールではなく、理念を達成するためのガソリン。ねぎしの理念は「働く仲間の幸せ」「日本のとろろ文化に貢献する」「おいしい味づくりで楽しい街づくり」。特に「働く仲間の幸せ」は印象的。みんなで頑張ってみんなで幸せになる。そして、その幸せは自分でつくることが大切。会社がプレゼントしてくれるわけではない。機会や場所は提供するが、自分の人生は自分で価値あるものにする。
顧客満足度を大切にする組織文化をつくるための理念やプラクティスが載っているので、興味のある人はぜひ。