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大工の棟梁の言葉は現場感に溢れているし、プロジェクトマネジメント理論との符合も非常に面白い。理論を経験が裏付けている事例の一つとしてとても参考になる。
ただ、幾つかの部分については裏付けとなる棟梁の言葉の記述が薄く、PMBOKの構成を全部カバーしようとして無理に文章を作ったように見える。そのためかえって薄く見えてしまうのがもったいない。
逆にどの棟梁も言及していたポイントやコツを掘り下げていくと、経験から導き出される普遍的な「プロジェクトマネジメントの本当の急所」が見えてきて、それも非常に面白いと思うが、どうだろう。
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☆3(付箋9枚/P207→割合4.35%)
ちょこちょこ、フム、と思うところあり。失敗を入れ込んでいて、それをどう扱っていくか、現場の知恵が滲んでいるように思う。
抜書きでは省いたけれど、棟梁の台詞の頭がほぼ「あんなぁ、〇〇は」と毎回「あんなぁ」がつくのが少しウザかった(笑
・「いくら熟練の大工が相手でも、ちょっとここに扉をつけといてくれよ、なんていう指示ではダメだってことよ。扉といっても、どちら向きに開くようにするのか、取っての形や位置はどうするのか、1枚なのか2枚にするのか、いろいろあるわけだよなぁ。頼みごとの内容が正しく伝わったかどうかは、ちょっとくどいほど確認しなきゃいけないってなもんよ」
家づくりの現場では、スケッチを活用することも多いそうです。想像するとなかなかユニークな場面ですが、大工の棟梁は、正しく伝えるためのスケッチの練習を仕事の合間にしている人が意外に多いのです。
・「たとえばな、作業中に気がついても、作業の手を止めてまではいちいち報告しないようなことってあるよな。それを、休み時間になって思い出して、弁当を食べながらちょっと伝えておくかっ、てことになるわけよ。で、その情報が案外役に立つことって多いんだよなぁ」
たとえば、こんなことがあったそうです。
建設地の隣の家の玄関が見える場所で作業していた職人が、お弁当を食べながらふとこんなことを言いました。
「そう言えば、さっき、隣の家の前にタクシーが止まって、昼間だっていうのにダンナらしき人が帰ってきたね」
「ありゃあ、どうやら病気で早退してきたんじゃないだろうか」
それを耳にした棟梁がその日の午後の作業を確認したところ、現場で木材をカットするという大きな音の出る作業が予定されていることに気づきました。
隣に病人がいるなら、大きな音は迷惑だろうと考えて、木材のカットは別の場所で行ってから現場に持ち込むという判断をして、そう指示を出しました。
事情を知らずにいきなりそんな指示が出たのでは、木材を切る大工が「めんどくさい」などと不満を感じてしまうことになりますが、昼休みの会話は全員の耳に入っていました。そのおかげで、その指示を受けた大工は「なるほど、さすが棟梁だ」とすぐにそのねらいを理解して快く予定を変更してくれたといいます。
「ちっちゃいことなんだけど、知ると知らないとでは大違いってことが結構あるんだよなぁ」
・「ミスは誰でも起こすものだってわかってさえいれば、自分でも気をつけるし、お互い気をつけてみるようにもなるだろ。『しまった!ミスしちまった!』って正直に言える現場の雰囲気もつくっておかないとなぁ」
・「気持ちとからだは休めていいんだよ。でも、頭は休めちゃだめだ。休みだからって頭まで休めてるようでは仕事のできる人間にはなれないねぇ」
・「以前、設計を頼んだ設計士さんが、どうにもこうにもわけのわかんない間取り図をつくってきたことがあったんだよ。大工の目から見れば、そんなの絶対に無理だよという実現不可能な箇所がいくつかあったんだけど、相手��専門家だし頭からどなって突き返すわけにもいかないから、聞いてみたんだよ。
『この柱の位置は、どういう理由で?どうしてこうしたいの?』ってな。
そうしたら、結局、その設計士さんは木造の家づくりの設計は初めてだったらしくて、基本的な柱の長さなんかの感覚がまだよくわからないんだけど、『実はこんなふうなイメージにしたいんだ』って話してくれたんだ。それでなるほどってわかったから、『ああ、そうしたいなら、通常はこんなふうにするもんだよ』って教えてやったら喜んでたよ」
・「お施主さんが、玄関のたたきに使う材料を決めかねて相談してきたとするだろう。普通は、相談するまでもなく自分の好みで決められるはずなんだよ。だって自分の家なんだから。それでも決められないと言って相談してくるということは、どちらもいいと思っていて、自分では選べないっていうことなんだよな。
だから、そういうときは、『こっちにしなよ』ってすぐに決めてあげる。そこで一緒に悩んじゃいけないんだよ。決めてほしいと頼まれたら、すぐに決めてあげるのが大事。もちろん、後悔させないようにちゃんとフォローはするけどね」
・「柱の上下を逆さまにしちまった!なんていう、信じられないような失敗もたまにはあるんだよ。でも、すぐに気がついて教えてくれればちょっとした手間で直せるから、全体の計画に迷惑はかからなくて済むけど、変に隠されたりごまかされたりしたら、後になればなるほど大変な手間になってしまう。『失敗しちまった!助けてくれ』って言える雰囲気をつくっておくことはそういう意味でも大事なことだよな」
・「家ってのは、シンプルなものほど強くて美しいんだ」
・「床の間は、その家の中心なんだよなぁ。中心のある家って、いいと思わねえか。
一見、無駄に思えたとしても、それが実は大きな影響力を持っているっていうことがあるんだよな。特に、昔から伝えられてきたことは、合理的じゃないからという理由でおろそかにしちゃいけないと思うんだけどねぇ」
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読みやすさ :★★★★☆(読みやすい)
分かりやすさ :★★★★☆(分かりやすい)
内容の充実度 :★★★★☆(満足)
全体のまとまり:★★★★☆(よくまとまっている)
費用対効果 :★★★★☆(買って読む価値がある)
読後感 :★★★★☆(モチベーションがあがる)
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どんなメンバーが来ても、頭っから信用する
仕事は毎回ゼロからのスタート
品質第一、納期も第一
迷ったら基本に戻る
敵は絶対に作らない
リスクはあって当たり前
予算は絶対君主
結果だけでなく過程も残す
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20160905 そういえばそうだ。という関係性が読み易さに繋がっている。期限に向けて行動する事は何らかのプロジェクトなのだと今更ながら思った。いろいろ参考になる。
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僕の感覚だと大工はプロジェクトマネージャーではなくて、プレイヤーだ。というのも、多くの大工は元請けではなく下請けとして仕事をしているし、設計者は別にいるし、家造りは大工仕事で始まらないし、大工仕事で終わるわけでもない。大工出身の工務店社長、という立場ならわかるが、大工が現場全体をマネジメントする、というのがちょっと腑に落ちなくて…かつては、大工がメインで家を作っている時代があったのは確かではある、が。
本書に登場する大工のセリフは、そういう時代を主に経験してきた棟梁の言葉、であると思う。つまりそういうマネージャーもまた消えつつあるのだ(というか、大工人口自体が大きく減っている)。
あれ、本の感想になってないな。
大工の言葉を借りて、プロジェクト管理の肝を語る、という内容だ。前述の内容からどうしても素直に読めない。本来、親しみやすくするために起用したであろう大工が、むしろ逆に作用してしまう。
じゃあ、僕も逆に考えてみよう。たとえば、もしソフトウェアのプロジェクトマネージャーが大工の棟梁になったら。
…
…
こっちのほうが面白くなりそうだなあ。「もし大」として流行るかもしれない。けど一般的には、住宅の現場マネジメントをしているのが現場監督だ。現場監督、になると、この本は成立しなくなってしまう。
ところで僕はプロジェクトのマネジメントがまるっきりダメだ。大工というアプローチから出会った本だけど、耳が痛い事だらけ。これで少しは勉強すべきなのかなあ、と思った(でもきっとしない。無限ループ)。