紙の本
寄付文化ってホントにいいものか?って思わせる。
2015/10/31 22:12
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、駅前を歩いていたら「東日本大震災の募金をお願いします!」って感じで近くの中学の人たち、50人くらいが募金活動をしていました。
「〇〇小学校にお金を」みたいなプラカード持ってました。私が小学校の頃は赤い羽根募金を子どもだからよくわからずとにかく「お願いします!」って感じで道行く大人に声をかけていました。ライシュさんは富裕層の寄付を彼らの主体性に委ねていいのか?と問います。
「富裕層が事前寄付控除を受けている寄付金の大部分は、貧困層のために役立っていない。寄付金はオペラ、美術館、交響楽団、劇場など、富裕層が余暇の大半を過ごす豪華な文化施設や、彼らがかつて学び、自分の子どもたちを通わせようとしている大学へと向かっている(そうした大学で卒業生の親族や子息に対する入学優遇措置が取られる場合が多いことが、さらなる誘因となっているだろう)。」
「彼らがしていることは、多くの人がイメージする「慈善寄付」とは異なる。その多くは、富裕層がすでに満喫し、自分の子どもたちにも与えたいと思っているライフスタイルへの投資だ。また、名声に対する投資でもある。」
「たとえば救世軍などへの寄付が慈善寄付控除に値する理由はよくわかる。だが、グッゲンハイム美術館やハーバード大学への寄付が同じ扱いを受けるのはなぜだろうか。」
ということで、ライシュさんは「超富裕層が納税した方が社会全体に富を還元できるんじゃね?」とします。
もし私が遠い東北の「〇〇小学校」への寄付ってのを考えた時に、具体的な問題として金的なソリューションが速やかに「必要」と判断するためには、じゃ、その周囲の小学校とのバランスは?他にもっと困っているトコはないの?とか考えちゃいます。
それに、自分の卒業した小学校と比較した時に、どうしても自分の出自の小学校の方が愛着があります。お金持ちの人が豪華な文化施設に寄付するってのは、その文化施設での感動があったからそこに寄付したいという動機のドライブがかかっていると思うんです。
寄付って、難しいですね。あ、本の内容は逆進主義者の社会ダーウィニズム批判本です。
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この本はお勧めです。二極化がますます広がっていますが、その本質を理解するためにも是非皆さんにも読んでほしいと思います。
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いまやアメリカ政府は一握りの超富裕層のために機能しており、本来は万人のために機能するはずの経済活動や民主主義が失われつつあると警鐘を鳴らす。アメリカ人の0.5%にあたる超富裕層が国富の28%を有する一方、所得の中央値は30年で下落している。経済を回して国を支えるためには大多数の国民がモノを購入できるだけの経済力を持つ必要があるのに、進取主義者を標榜する一部の人間は社会ダーウィン主義を語って規制による公共の利益を否定している。否認や逃避、冷笑を乗り越えて、「すこしでもやってみよう」と積極的に市民権を行使する行動を起こそうと説く。
中間層が没落すると国が亡びるというのを聞いたことがあるけど、いまアメリカは岐路に立っているのかもしれないと思った。現在の覇権国家であるアメリカは強すぎて鼻につくこともあるけど、自らの失敗を認めて逆方向に舵を取ることも一番うまく行える国でもあると期待したい。
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分かり易いくまとまっている。ただ、物量のみのPR活動で共和党議員が当選する、というのはやはり言い過ぎかと。
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庶民も豊かな生活を享受し将来にも自国にも信頼を寄せていた「古き良きアメリカ」は、「逆進主義的右派」にとっては全然理想じゃなかったんだ! 彼らの理想の社会は、富が特権階級に集中してきた大恐慌以前のアメリカだったとは。
その特権階級に属している人々がそう思うのはまあリクツが通っているが、数的には共和党支持者でも大多数は特権階級じゃないわけで、それなのに、ホントは自分が損しちゃうそういう言説に踊らされるというのが解せないのであった。
日本も非常に似たような現象が起きているが(ただし保守政権でも必ずしも小さい政府指向ではなく、社会福祉はカットしても公共事業は拡大させようという指向が強いとか、いろいろ違いもある)、多くの保守政権支持者でも、例えば国民皆保険制度を脅かすような制度改変については否定的だったりなど、必ずしも騙されちゃってるわけじゃないところがより一層ややこしいような。
それにしても、米の「逆進的」共和党員とかは生物学的なダーウィニズムを信じていない割合が高そうなのに、社会ダーウィン主義は信奉しちゃっているようであるというのが、皮肉というかおぞましいというか。
民主党ブレーンが2012年大統領選挙に向けて書いたものなので、書きぶりはちょっと抵抗を感じさせる。
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この30年間、経済成長による利益のほぼ全てがトップ層に渡り、政治的権力、従って助成措置や税の優遇を手にした。税収は減り、政府予算は圧縮されて公共が荒廃し、中間層は購買力を失い、貧困層との競争に駆り立てられている。
国民から富を吸い上げる巨大な仕組み。異を唱えるべき根拠は、人類が持つ公正感覚、数の力、社会の不健全化で成長が失われること。
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『どの時代にも、この国がよって立つ進歩的な理想の火が逆進勢力に対抗して再燃し、その結果が根本的な改革につながったのである。
今再び、このような動きが起きようとしている。しかし、それは自然の成り行きで実現するものではない。
いつの時代においても、理想から逸脱した経済と民主主義のあり方に道徳的な怒りを感じ、その怒りを乗り越えて真の改革のために尽力した膨大な数の人々の関与と献身があったからこそ、この国は前進することができたのだ。
今、あなたの怒りと献身が、もう一度求められているのである。』
著者の思いが「申し入れ書」と「企業の忠誠についての誓い」に込められていて、良い。アメリカの病が良く分かる。
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クリントン政権で労働長官を務めた経済学者による経済格差に関する本。一部の巨大資産家により、政界がコントロールされ、富める者がますます富む仕組みができあがっていることを指摘し、改善策を述べている。ピケティと同様に拡がる経済格差を問題にしている。著者は、市場原理主義や完全自由主義を社会ダーウィン主義と呼び批判しているが、これは資本主義である限り避けられないと思うし、資本主義以外にそれを越える優れた理論はないと思われる。ダーウィンの考え方は、あらゆる生き物に適用される理論とも考えられ、必ずしも著者の主張が正しいとは思えなかった。
「富裕層が慈善寄付控除を受けている寄付金の大部分は、貧困層のために役立っていない。寄付金はオペラ、美術館、交響楽団、劇場など、富裕層が余暇の大半を過ごす豪華な文化施設や、彼らがかつて学び、自分の子供たちを通わせようとしている大学へと向かっている」p55
「国民の大半が手にするものの割合が小さくなっていることが問題(富裕層の資産割合が増え、中流層以下の収入が減っている)」p74
「超富裕層の支出ばかりに頼っていたのでは経済が立ち行かない。米国の上位5%の富裕層は、収入のおよそ半分しか支出していない」p75
「米国企業の仕事は利益を出して株価を上げることであり、アメリカ人のために良質な雇用を創出することではない(著者は給与水準を上げない企業を批判している)」p87
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富の偏在が民主主義の機能停止を招かないうちに、格差是正の適切な経済政策や税政策を、ということだろう。
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二点。
1. 企業が利益の追求を良しとされ、自国経済に責任を持たないならば、政治に影響を与えるのはNGとすべき。
政治献金が認められ、ロビー活動ができるならば、自国の経済に責任を持つべき。ある意味トランプ大統領が自国内の工場を海外に移転する企業に口を差し挟むのは、当然なのだ。
僕の意見は、企業の自由は継続して認める代わりに、政治には口を差し挟まない(企業献金、ロビー活動は禁止する)方が良いと思うけれど。
2. おぼろげな記憶たよるのだが、誰か日本人の映画監督がアメリカでメガホンをとったとき「決められた時間を超えて役者に演技をさせると、逮捕される。」と言っていたのを思い出した。
共産主義を毛嫌いするアメリカは、同時に労働組合が正当に権利を主張し、労働者がしっかり保護されている国だ、と認識したのを思い出した。
アメリカで資本主義が支持され、長く続けられるのは、この「労働者が正当な権利を主張する。」と言う点にある、と知った。
ところが、現代のアメリカでは事情が全く異なるらしい。
疲弊した労働者の蓄積は、アメリカの資本主義の永続性を損なうと思った。
日本でも、最近外国人を薄給で雇えるようにする方向にあるようなのだが、政府の役割としては、そうではなくて、最低賃金を上げて、企業が等しく競争できる環境を整えることにあるのではないか、と思った。
我々企業に雇われたり、フリーランスで薄給で働いている人たちは「俺だって、もうちょっと努力すりゃ、ビルゲイツほどではないにしたって、もっと稼ぐこともできたんだ。だけれど努力しなかったからこんなもんなのさ。」と諦めがちになって、企業のトップや多くのフリーランスを雇う側の味方になっているけれど、それじゃダメなのだ。そうやって、甘やかすことが、経営の怠慢を生み、経営努力が「きちんと従業員に給与を払って、良い仕事をさせる。」ではなく「政治に働きかけて有利な条件で企業活動する。」に向かうのだ。
トランプ大統領が「ビジネスマン」なんて、笑止千万だ。本来なら補助金がもらえるようなビジネスではない不動産投資に対して、「弱者むけ住宅」と見せかけて税金を自分の会社に振り込ませるような手口を「ビジネスに長けた人」とは言わない。
世界的にずるをして高給を得ている人を容認する社会が、格差を生み、民主主義を後退させ、戦争への道を歩ませているのではないか。
考えることが多い本である。
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少し古くなっていますが、今でも、いや、今だからこそ、なお意味のある一冊ではないでしょうか。
米国における超富裕層による富の独占によって、一般市民が購買力を失っている、緩和策による景気拡大が見られないのはこの構造的な問題によると思われ、現在では、もっと事態が悪い方に進行している気がします。日本では、これに少子化などが重なりますし・・。